第8回 通い影の女悪魔
「おはよう、貴方。寝顔もとっても可愛らしかったわ」
目が覚めるとマイノグーラがいた。
私も何が何だかわからない。目を開けた時には私の上に覆い被さるマイノグーラがいた。
「貴方って睡眠を取るのね。今は人間体を取っているからかしら?まるで彼の魔王見たいね、でも貴方は彼と違って可愛らしいわ」
何事もないかのように、まるでそこに居るのが当然かのように話を続けるマイノグーラ。
まて、辞めろ。頭がおかしくなりそうだ。
「…な、なんでこんな所にいるのー?」
「昨日言ったでしょう?明日また会おうって」
嘘だろ。まさか日付けが変わった瞬間から居たのか?倫理観が、常識が終わってる。神だから仕方ないけど、私も最初はそんな感じだったけど。でもコイツ私よりは人と関わってきたはずだが?
「それより貴方のために朝ごはんを作ったの、食べる?」
こいつの言う朝ごはんってちゃんと人間が食べられる奴なんだろうか。
人の腕とか入ってそうなんだが。
「ふふ、安心してくれていいわ。正真正銘普通の人間の料理だから。それに私は別に人間の肉を食べる、と言う訳じゃないのよ?」
私の懐疑の感情が伝わったのか見透かしたようなことをいうマイノグーラ。
確かに、言われてみればその通りである。警戒しすぎたか。
「献立は
へぇ、ゴリラの刺身にベニテングダケか。飲み物まで用意してあるとは手際が良い。
…は?
待て待て待て。明らかに可笑しいだろう!?
「それは人間の食べ物じゃないっ!!」
「え、うそっ。だって宇宙産の物は使ってないのよ?本当に食べれないのかしら?」
宇宙産じゃなければ良いと思ってる!?人間を悪食の怪物か何かとでも思っているのか。
「ゴリラは食用じゃないしベニテングダケと水銀に至っては致死毒だよ。硫酸だって人が飲むと爛れて酷いことになるねー」
そう言うとマイノグーラは酷く残念そうな顔をした。ボソっとヒトのお造りは辞めたのに、と聞こえたが聞かなかったことにする。
「はぁ、
何だかすごく卑屈になってしまったマイノグーラ。こんな性格だっただろうか?
「いや、誰だって最初は大変だよー。そうだ、今日のところは一旦闇に帰って勉強してから明日朝また作ってよー」
「…分かったわ。私、明日こそちゃんとした物作るから!今日のところは帰りますね!」
そう言うとあっという間に闇に呑まれ消えてしまった。嵐のような奴だったな。
やれやれ、もう二度とくるな。
「やっと帰ったの?シュムさ、変な人連れてくるのやめて欲しいな。私怖くて仕方なかったんだけど」
マイノグーラが帰って少しすると私の部屋に霧人が入ってきた。こいつ私が困っているのを知って見捨てたな。
「ごめんー。けど霧人も助けに入ってくれてもよかったんじゃないのー?」
逆に言い返すと霧人は少しバツが悪そうな顔をした。そうだ、私はそこまで悪くない。被害者だぞ。
「…まぁいいや。シュムご飯食べる?作ってあるけど」
マイノグーラと同じようなことを言う霧人。いつも作ってくれてるから安心だけど、大丈夫だよな?
「…それゴリラの刺身だったりしないー?」
「は?何言ってんの?ついにボケた?」
滅茶苦茶酷いことを言われたけど朝ごはんの安心が勝った。良かった、普通ので。
ちなみに朝ごはんは焼き鮭と味噌汁だった。美味しかった。いつも通りだけどいつもより感謝できた気がする。
ありがとう霧人。そしてやっぱマイノグーラクソだわ、二度とくんな。
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