第7回 何十億年も会っていない元妻が急に来たんだけだ如何すればいい?
「本当に久しぶりだわ『千の子を孕みし森の黒山羊』」
気がついたら私の真後ろにエキゾチックな服装に身を包んだ女が立って居た。
まさか、こんな所に現れるなんて。
「やだなー、私は今人間に合わせて名前まで変えてわざわざ地球に住んでるんだからさ、そんな名前で呼ばないでくれるー?」
少し警戒しながら答える。すでに私は臨戦態勢だ。
私の髪の一本一本、体の影の全て、何もかもを歪な触手に変えて相手を取り囲みその先から生える牙で牽制する。時も少し止めてあるがあまり意味はないだろう。
現に、私の周りを醜悪な犬が囲んでいる。その名は確か地獄の猟犬、ヘルハウンド。
パパに対して牙を向きやがって後で絶対食い殺してやるからな。
「あら、久しぶりに会った妻に対してあんまりじゃないのかしら?私の契約者をだいぶ虐めてくれたみたいじゃないの」
まさかそんなことで此処まで来たのか?こいつにとって人間はそんな価値がある物だっただろうか。ましてや私に歯向かうほどの価値があるとは思えないが。
「嫌ね、別にそんな訳じゃないわ。でも他の殿方みたいに食べ物とは思って居ないのは確かよ。人間は今も昔も私にとって嗜好品、お菓子みたいなものなの」
「はっ、貴女は全然変わらないね。そういう所が嫌だったんですけどー?」
「あら、私は今でも貴方のことが嫌いじゃないわよ。それに貴方のヒトとしての化身もだいぶ可愛らしくて好きよ、私は貴方の男性相しか見たことがなかったのだけど」
誰が見せるものか。昔からコイツは嫌いだった。私は人間に対して比較的に友好だし私を信仰する種族は沢山いる。対してコイツは精神性は人間寄りな癖して人間を、いや自分以外の全てを玩具か何かとしか思って居ないのだ。
「ふん、一体全体何をしに来たのか。ねぇ『マイノグーラ』!!」
もう話に付き合う必要はない。私の周りを囲んでいた犬を触手で食い殺し、マイノグーラの首や手足に噛みつく。が、闇に阻まれた。
「痛いわね…本当に貴方って厄介。闇で体を抉り、蛇の眼光で体を石にしても何事もなかったかのようにそこに居る。流石は生の支配者にして地の頂点ね」
触手に絡みとられ今も肉を喰まれながらも平然とするマイノグーラ。こいつの闇こそ厄介が過ぎると言った物だ。
「貴女だって私の触手に食われてもだいぶ平気そうなんですけどー?」
「痩せ我慢よ。淑女として下品な声を上げる訳には行かないもの。だから出来れば早くこの触手を解いてくれないかしら?私本当に敵対しに来た訳じゃないのよ」
「ほら、この通り」と言いながら私への攻撃の一切を止めるマイノグーラ。触手に対しての闇の抵抗もほとんど無くなっている。
いやいや、そんなまさか。でもマイノグーラってこんなに落ち着いた性格だっただろうか?
もっとこう「人食べたい、人うますぎ、めっちゃ味わいたい」こんな感じのやつだったと記憶しているのだが。
「じゃあ本当に何しに来たの?私も別に貴女を殺したい訳じゃないけど邪魔はされたくないからさー」
そう聞くと顔をポッとそめモジモジし出すマイノグーラ。
この反応はまさか。そんな、いや確かに精神性が人間寄りの奴だったけどまさか。
「そんな、殿方が女性に言わせるんですの?察してくださいな貴方」
熱の篭った目で私をじっと見てくるマイノグーラ。嘘だ、これはもしかして。
「わ、私が好きだから態々会いに来たってことー?」
顔を赤く染めながらゆっくり頷くマイノグーラ。
上位存在の癖に恋愛感情なんてものがあるとは。
「じゃ、じゃあ今日のところは帰ってくれない?明日どこかでお茶でもしようよー」
正直な所私は困惑していた。
いろんな存在と男として女として神として子をなしたがこんな事は初めてだ。どういう反応をするのが正解なのか全く分からないのだ。
「えぇ、ではまた明日会いましょう」
「う、うん。分かった。じゃあまた明日ねー」
終始、困惑気味の私とは真逆の様子のマイノグーラ。まったくこんな一面があったとは。
でも取り敢えず帰るそうなので安心してると何か思い出したように振り向いてきた。
「あ、そうそう。貴方の在り方は重々理解して居るのですけれど浮気はほどほどに、ね」
ゾワっとした。
あれは「ほどほどに」とかそういうのじゃない。濃密な殺気を感じるほどの怒りが含まれている。
今度はちゃんと帰って行った。本当に何だったんだ。
「…なんか疲れたし今日はもう帰ろー」
もう下の方を見に行く気力も無くなったので私は帰路に着いた。
家に着いたらすぐ寝た。全部面倒臭さかったから。
お休み世界。頑張れ明日の私。
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