第3回 "ゴッズ"インダンジョン
昨日ダンジョン配信者になることを決めた私は早速冒険者免許なるものを取りに来ていた。これが無いとダンジョンには入れないらしい、けどすごく簡単に取れるそうだ。
あのあと調べたのだがダンジョンとは地球の理から逸脱した怪物が無限に湧く異空間なのだとか。
ある日突然地球に現れたらしく世界中にその入り口があるらしい。全部が別のダンジョンに繋がっているらしいが真偽不明である。
そしてだ。なんと人間ら下等生物はダンジョンに入り中の怪物、通称『魔物』を殺すと不思議な力を得たり身体能力が上がるそうだ。
私は思った。
『これ、
と。
しかし私に1ミリも関係ないしどうでもいいので直ぐに考えるのをやめた。だってこんな物を勝手に他存在の星に作る奴はおそらく碌な奴じゃないから。
取り敢えずそんなことは全部無視してダンジョンに入るために必要な冒険者免許をとりに来たのだが。
「これただの魔物狩りツアーだねー」
この免許を取るための試験と言うのが冒険者の護衛3人がついた状態で20人くらいの冒険者志望が1人づつ最も弱い魔物であるスライム(と人間が名付けた粘液生物)にトドメを刺して終わりである。
実に簡単でつまらない。
実は冒険者免許を取る様子を動画にしようと思っていたのだがこれじゃ取れ高もないし、ボツだ。
「ははは、お嬢ちゃん。ダンジョンを舐めちゃいけないよ。ここは低階層だけどあのスライムだって人を窒息死させるくらいは出来るんだ」
「…そうですねー」
独り言のつもりだったのに護衛の冒険者に話しかけられた。
確かに私が下等生物の小娘なら危険だがあの程度の生物に私が殺されることはない。そもそも生物じゃ私を殺せない。私は生の頂点に立つ君臨者だぞ。
因みに私は今ツノも尻尾も魔法的アレで隠しているのでこのおっさんがやばい格好の少女に話しかけれる剛のものという訳ではない。
「あ、冒険者さんちょっと聞いてもいい?ダンジョン配信って結構する人多いのー?」
これは重要なことである。だって競合が多いと視聴者獲得が結構難しいから。
だが私の問いに対して護衛の冒険者は苦い顔をした。
「…一定数いるね。けど配信しながらなんて無茶があるんだよ。ダンジョンで一番死亡率が高いのは配信者だ、なんて統計もあるくらいね」
成る程、そう言うことか。しかしその点私は絶対に死なないので問題ない。
しかもダンジョン配信者はよく死ぬ、と。
実に良いじゃないか。競合が減りやすく私の力ならすぐにトップになれる。
大量のチャンネル登録者獲得の未来を妄想しながら笑っているとおっさん言ってきた。
「でもダンジョン配信用の浮遊方追跡カメラは最低でも三百万はするから初心者が始めるのは難しいと思うよ、お嬢ちゃん」
「…は?」
おっさんが何を言っているのか分からなかった。300万?嘘だ、そんか高価なカメラ買える訳が。
「いや、ほら片手でカメラ持ちながらとか服や防具にカメラをつけても見ずらいしすぐ壊されちゃうからね。回避できる浮遊型のカメラが必須ってことよ」
私は死んだ。
いやいやいや、このおっさんが真実だけを話しているとも限らない。知らないだけでもっと安いのがあるのかもしれないだろう。
「ちょっと待って!何かさ、ほら!中古で良いから50万くらいでかえないのー!?」
どうにか安く買えないものかと聞いてみるもおっさんは難しい顔をした。
「…いや、さっきも言った通りダンジョン配信者は死亡率が極めて高い。だから引退する時ってのは死んだ時だ、カメラもその時壊れちまう。中古なんてもんは売ってないよ」
終わった。本当に終わった。
私の預金は13万5000円、広告収入もまだ当分は入らない。
300万のカメラなんて買える訳がない。
私の顔バレ挽回の絶好のチャンスたるダンジョン配信はほぼ不可能に近かった。
この後、適当に試験を終わらせた私はトボトボとアパートの部屋へと帰った。
ダンジョン配信、チャンネル登録者爆増、全部叶わぬ夢だったか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます