第8話

前話にて、ネタが無くなるまでしようと思っていた後書きを載せていなかったので、書き加えました。赤川泰輔のプロフィールです。よかったら見てみてください。


────────────────────

「すぐにHR終わらせるから質問は後な。えー他に何かあったか……ないな。転校生への質問はほどほどになー」


 そう言って先生はすぐに教室を出ていく。先生はなんであんなにやる気ないのに教師になったんだろうか?

 HR用の時間もかなり余っているようで、新たなクラスメイト達が転校生の俺にワクワク顔で近寄ってきている。

 これから俺がする行動は女子として見られなければならない。学校に入る前にクロディーヌから受けた淑女指導を思い出す。


────────────────────


 かなりのショートカットで、時間に余裕ができた俺は、学校付近の人目につかない路地でボサボサになった髪を櫛で整えていた。

 妹が前日にカバンに櫛を入れておけとうるさかったから入れていたが、あれがなかったら今頃大変なことになっていただろう。

 手櫛で適当に髪を整えることができた男時代が懐かしい。


「それで、クロディーヌは俺が授業受けてる間どうするんだ?」

『そうね……姿を消してあなたのそばで待機しているわ。《魔力的同調シンクロ》の調整もあるしね』

「それもそうか」

『それと、約束の淑女指導よ。心して聞きなさい』


 魔法使いになるという契約をするときにした約束を、早速実行してくれて嬉しくなる。

 俺の今後の学校生活に関わってくることなので真剣に聞く姿勢をとる。


『まず、言葉遣い。ランは素の言葉遣いが男性みたいだから、絶対に敬語を崩さないこと』

「わかっ……わかりました」

『よろしい。次に、スカートであることを常に意識すること。足を開いて座るなんて言語道断よ』

「なるほど」

『最後に、あまり強く感情を見せずに、常に微笑んでいること。他にも姿勢とか歩き方とかあるけれど、取り敢えず今日はこの三つを意識して過ごしなさい』

「わかりました」


 簡単な注意だけしてもらうつもりだったのだが、思っていたよりもしっかりした助言をもらえたことに驚いた。

 ここまでしてもらったのにバレてしまったら面目が立たない。一層気を引き締めて臨もう。


「よし、がんばります!」

『ええ、応援してるわ』


────────────────────


 そのあとは、職員室に行ったり挨拶したりしたが、未だボロは出していないはず。

 クロディーヌの淑女指導もしっかり記憶できているし、この調子で完璧な女子高生になってやる。

 クラスメイトに席を囲まれたが、どんな質問もどんとこいだ。


「木米さん髪キレー」

「化粧水って何使ってるの?」

「えっもしかしてノーメイクじゃない!?」


 ──やっぱり無理だ。

 そんなの今まで意識してなかったし、女子になったばっかなのに女子のノリを当然のように求められるなんて。


「木米さん彼氏いる?」

「越してきたのどこのあたり?」

「よかったら連絡先交換しない?」


 男子達からもナンパみたいな声のかけられ方をしてゾワッとする。

 肉体は女性になっても精神はそのままだから、男子のあわよくばお近づきになれたらという感じの態度もキツい。


 クロディーヌから言われた微笑みを維持するのが辛くなってきた。まだ俺は微笑めているだろうか?

 転校生を完全に舐めていた、泣きそうだ。

 多人数から一方的に質問され続けるという状況に参ってしまって──誰か助けて──そう思った瞬間、救世主が現れた。


「こらー!そんな一気に質問しちゃダメでしょ!」

「「「鈴木さん……」」」

「答える時間もないのに次から次へと質問されて、木米さん困ってたよ?」

「「「ごめんね(なさい)」」」

「次の授業は修練場で魔術実技なんだから準備してきて。ほら、いったいった」


 救世主──茶髪の少女によって質問攻めをしてきた生徒達が謝罪して自身の席へ戻っていく。


「ごめんね、木米さん。みんな悪気があってしたわけじゃないから許してあげてね」

「ありがとうございます。えっと……」

「あっ、自己紹介してなかったね。私、鈴木スズキ 桃子モモコ。よろしくね」


 彼女はそう言って笑った。



────────────────────


人物紹介

名前:鈴木スズキ 桃子モモコ

性別:女性

容姿:茶髪碧眼・おさげ

身長:156cm

好きなもの:料理・可愛いもの

嫌いなもの:虫

所属:魑魅高校1-A・──

能力:──

備考:真面目で、親しみやすい学級委員長。教師からの信頼も厚い。

高校生になってから、幼馴染の泰輔と一緒に登校しなくなったので、あまりクラスメイトから揶揄われなくなった。

日曜の朝に放送されている魔法少女アニメは欠かさず見ている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る