第7話

〈side:泰輔〉


「はぁ……」


 俺の名前は赤川アカガワ 泰輔タイスケ。生まれも育ちも、ここ《玉石町》だ。

 3週間前にこの魑魅高校に入学した、ピカピカの一年生ってやつだ。


「どうした泰輔?ため息なんかついて」


 今話しかけてきたのは、高校で友人になった青山アオヤマ 刀侍トウジ。イケメンでため息ついてたら今みたいに気にかけてくれるいいやつなんだが、隠していても気配で巨乳かどうかがわかるという特技を公言しているヤバいやつだ。


「今日すごい綺麗な人とぶつかったんだけど、なんだかその人が頭から離れなくてな……」

「お前、鈴木さんっていう可愛い幼馴染を持ちながら、よくよそ見ができるよな」

「モモとはそういう関係じゃないっていつも言ってるだろ?」


 刀侍はクラスメイトの鈴木スズキ 桃子モモコが、俺の幼馴染で家も近いということを話してから定期的にからかってくる。

 確かにモモは可愛いが、俺にとっては妹みたいなものでそういう対象じゃない。


「そんなことより!珍しい黒髪だったし、その……胸も大きかったし。なにより、同じ制服でリボンも赤だったんだよ」


「ん?この高校に黒髪巨乳美人なんていたか?しかも同級生」(ボソッ


 この高校では学年でネクタイ・リボンの色が変わる。現在は3年が緑、2年が青、1年が赤なのだ。進級すれば次の1年が緑となる。

 他クラスの娘と仲良くなるのって難しいんだよなぁ。学年が同じだけマシか。


「あーあ、名前聞いとけばよかったなぁ」

「……名前聞かなくて正解だったかもしれないぞ、泰輔」

「何でだ?」

「仲良くなるきっかけ作りだよ。『朝ぶつかってごめんね、名前なんていうの?』ってな」

「それだ!」


 やっぱ持つべきものは刀侍だな。あとでどのクラスの娘か探してみよう。


キーンコーンカーンコーン


「おっと、予鈴か。作戦会議はHRのあとだな」

「サンキューな、刀侍」

「任せとけ!」


 そう言って刀侍は自身の席に戻ってゆく。

 ……あいつ俺があの人に一目惚れしたとか思ってないよな?美人と仲良くなりたいのは誰でも一緒だろ。だからこれはそういうのではないはず……。


 いかんいかん。うちの担任は重要事項をサラッと言う人だから集中しないと。聞いてなかったやつが今まで何人痛い目を見たことか……そいつらが悪いんだけどな。


ガラガラッ


「お前らー席付けー。おし、今日も手短に……あー、今日は少し長めになる」


 そう言って、教卓に立ったのは理系科目の担当教師でもある俺たちの担任、早坂先生だ。

 いつも気怠げな先生が今日は幾分かマシだ。嵐でも来るんだろうか?


「えー、何とお前たちのクラスに新たな仲間が加わることになった。入ってこい」


 先生の合図で誰かが教室に入ってくる。

 その娘を見た瞬間呼吸を忘れた。

 風で揺れる濡羽色の髪。すらっとした手足。


「一身上の都合によりこの町へ引っ越してきました。木米キマイ ランといいます。慣れない環境なので、困っていたら手助けしてもらえると幸いです。これから一年間よろしくお願いします」


 驚きのあまり思考ができず、ただ朝とは印象の違う彼女を見つめることしかできない。


「えー、木米は窓際の空いてる席に座ってくれ」

「わかりました」


 窓際の空席ってことは最後列の俺の隣か!?やばい、心の準備が!

 先生の指示に従ってこちらに歩いてくる彼女は、目指している席の近くに俺がいることに気づいたのか少し驚いた顔に変わる。


「朝はぶつかってしまってごめんなさい。これからよろしくお願いしますね赤川さん」


 自身の席に着いた彼女は少し体をこちらに近づけて、小声でそうささやいてくる。

 さっきから心臓がうるさい。


「こ、こちらこそよろしく」


 そう、返事を返すので精一杯だった。



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人物紹介

名前:赤川アカガワ 泰輔タイスケ

性別:男性

容姿:赤髪赤目・短髪

身長:170cm

好きなもの:運動

嫌いなもの:勉強

所属:魑魅高校1-A

能力:なし

備考:近いという理由で高校を選んだせいで猛勉強する羽目になった。

クラスメイトの鈴木桃子とは幼馴染。互いにモモ、タッくんと呼び合う仲。家族絡みの付き合い。

私生活を正すため、中学まで起こしに来てくれていた桃子が来なくなった。現状ギリギリ遅刻回数ゼロ。

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