第4話

 クロディーヌは、うつむきながら魔法使いの使命について話し出す。


『精霊伝説を知っているかしら?』

「ああ。巫女と精霊の奴だろ?」

『そう、それに出てくる悪しき存在と呼ばれているものは、本当は妖魔っていう名前なの。絵本のとおり、妖魔の王は当時の巫女に打ち倒された。それで、人間界への侵略もなくなっていたの。だけど今になって、また妖魔が人間界に現れて悪さをしているのよ』


 クロディーヌの落ち込んだ雰囲気に引っ張られ、高ぶっていた気持ちも落ち着いてきた。


「妖魔はどんなことをしているんだ?」

『あいつらは、恐怖や嫉妬などの負の感情の強い個体と魔力的同調をして、肉体を奪うの。奪った肉体で人を襲ったり、町を壊したりして、さらなる負の感情を生み出すの。それを魔法使いになって、受肉した妖魔を倒してほしいというお願いなのだけど……』


 断られることが怖いのか、クロディーヌの言葉はどんどん尻すぼみになっていく。

 予想していたとおり、この時点で俺に断るという選択肢はなくなった。元々侵略を企てていたような奴らが人を傷つけないはずがない、それを阻止できる、数少ない適合者が俺なら断るわけにはいかない。


「わかった。やるよ」

『……そうよね。簡単に了承できないわよね。勝手に巫女にしようとしてごめんな……えっ?』


 その答えが予想外だったのか、クロディーヌは謝罪を仕掛けてからやっと気づく。


『どうして⁉︎貴女さっきまで怒ってたのに……』

「それはクロディーヌが勝手に話を進めたからだ。それに、誰かがやらなきゃならないんだろ?それなら俺がやる」


 俺は、もう一度しゃがんで今度は俺から手を差し出す。


「それと淑女指導してくれるんだろ?」

『え?……ええ』

「よし。今度こそ契約成立だ。よろしくな、クロディーヌ」

『ええ。よろしく、ラン』


 差し出した俺の手のひらに、クロディーヌの前足が当てられる。それを軽く握る。

 クロディーヌにさっきまでの落ち込んだ雰囲気もうない。


 こうして、俺は魔法使いになった。



────────────────────


人物紹介

名前:クロディーヌ・%¥*#・#&@

性別:女性

容姿:黒毛・猫似・翠眼

好きなもの:特別

嫌いなもの:不真面目

所属:精霊界

能力:魔力的同調シンクロ

備考:ファーストネームは人間界用。ミドルネームは精霊界の個体名。ラストネームは一部の名家が持つファミリーネーム。

魔力的同調シンクロとファミリーネームを持っていることにプライドを持っており、自分が特別であるとわかっているからこそ、妖魔討伐に人一倍真剣に取り組もうとしている。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る