第5話
『いろいろと
「何でそれが最初なんだ?その
口頭で契約を結んだ後、クロディーヌは俺を見上げながら確認をとる。
しかし、俺が妖魔と戦うために
『ワタクシが他のニンゲに見えないことを忘れてないかしら?ランが虚空に向かって話しかける変人になっても良いのなら、調整を優先するのだけど?』
「……念話って重要だな」
目が合って会話ができているから、クロディーヌが他の人には見えないことを完全に失念していた。しかも、公園に入るときに聞いた、誰か(多分同じ精霊)に負けているのが許せないということより、俺のことを優先してくれていることに心が温かくなる。
『そういえばそれって
「……?……っ!?まずい遅刻する!」
今気づいたといったふうにクロディーヌが聞いてくるが、クロディーヌの言っていることが一瞬理解できなかった。自分の格好をじっくり確認してから、やっと自分が登校中だったということに思い当たる。
駆け出そうとして、気掛かりなことがあったので踏みとどまる。
「全力で走るけど、クロディーヌはついて来れるか?」
『ええ、飛べるもの。(淑女的には全力疾走は咎めなければなのだけど)……急ぎましょう』
クロディーヌが人間の歩幅についてこられるのか振り向きながら聞くと、俺の目線まで浮かび上がり頼もしげな返事を返してくれる。
「よし、行くぞ!」
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「ハァッ……。ハァッ……」
『大丈夫?あっ、次を右よ』
クロディーヌは俺の体調を気遣いながら、ナビをしてくれている。
元々、体力がある方ではなかったが性転換してから初めての激しい運動ということもあり、余計に体力を消耗している。
そんなに大きくないはずなのに重いし、重心がずれて走りづらいし、胸が邪魔すぎる。よくこんなものをつけて母も妹も生活できるものだ。
「大っ……丈っ……夫っ!……ハァッハァッ」
『無理して返事をしなくても良いわよ。さっき話していた念話回線を開通させたから、これからはワタクシに伝えたいことを思い浮かべるだけで伝わるから』
なんとか言い切れたが結局心配させることになってしまった。
しかし、クロディーヌの仕事が早い。普通がどのくらいかは知らないが、自分で優秀と言うだけはある。
(ありがとう、クロディーヌ)
『適応早いわね。使えるようになるまでに時間がかかるはずなのだけど……』
クロディーヌが念話の話をする前あたりに何かと繋がった感覚があったので、例の念話回線だと当たりをつけて感謝の念を送ってみる。
すると、クロディーヌが驚いた様子で褒めてくる。うれしいが、しんどすぎてそれどころじゃない。声に出して会話をしなくて済むようにはなったが頭が回らないからそんなに違いは無い。
『そこ曲がり角があるから気をつけて。っあぶない!』
「っ!?」
ドンッ
進行方向の曲がり角から人影が飛び出してきて─まずい─そう思った瞬間にはすでに強い衝撃を受けて尻餅をついていた。
「痛っ!」
「いったぁ!」
ぶつかった相手も痛みで声を上げている。急いで立ち上がり、相手に駆け寄って手を差し伸べる。
「大丈夫ですか?!怪我してませんか?!」
焦りが声を大きくする。
怪我をしていたら大変だ。病院行かないと。いやいやその前に連絡先を教えないといけないのではなかったか?
慌てすぎて思考がグチャグチャだ。そんな俺を見て、相手──同い年くらいの赤髪の青年は驚いた顔をしている。
「いえっ!大丈夫です!全然っ、そのっ、怪我なんてしてませんから!ははっ」
青年は若干顔を赤らめて頭をかきながら答えてくる。差し出した手を握って来たので、そのまま引っ張って立ち上がらせる。幸い怪我はないようで、ひとまず安心した。
「あのっ!えーっと、俺!
そう言って、返事も待たずに赤髪の青年は走り去ってしまった。しばらく呆然としていると自分も急がなければいけないことを思い出しまた駆け出そうとすると──『まって』──クロディーヌから制止の声がかかった。
「待てって、もう時間が無いんだよ。少しでも急がないと……」
『わかってるわ。だから、大幅に時間を短縮する方法を使おうと思って』
クロディーヌと出会っていなければ遅刻しそうになることもなかったはずなのだが、今はクロディーヌが神の使いのように見える。
『精霊の力を見せてあげる』
そう言って、クロディーヌは不敵に笑った(様に見える)。
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設定紹介
魔力関連
魔術…魔力陣を使った魔力の運用方法。陣の中に効果や範囲、属性を書き込む。実質プログラミング。
魔術師…魔術犯罪に対処する役職。その場で適当な魔術を組めたりする超エリート。警察。
魔導師…魔力陣をものに彫り込んで魔道具を作ったり、新しい魔術を考案したりする。研究者。
魔法…魔術とは別に存在する、歴史的に見てもごく少数の人間が持つ固有の魔力の運用方法。普通の人間は使えない。
魔法師…魔法を使う。人間ではない。
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