第3話
──適合者。俺にそう告げた精霊は、同じ場所を行ったり来たりするのをやめて、真っ直ぐこちらを見つめてくる。
『自己紹介がまだだったわね。ワタクシの名はクロディーヌ・%¥*#・#&@。貴女は?』
「──えっ?なんて?」
『だから、貴女の名前よ!』
「いや、そこじゃなくて、クロディーヌの後がうまく聞き取れなくて……」
クロディーヌ以降の名前は、全く知らない複数の言語を、高速で同時に発せられたような、奇妙な発音をしていて、全く認識することができなかった。しかも、聞き返し方が悪かったのか少し怒らせてしまった。
『いいわ、もう一度言ってあげる。ワタクシの名はクロディーヌ・%¥*#・#&@。今度はちゃんと聞き取れたかしら?』
「あ、はい」
すぐに機嫌が直って、安堵したのも束の間、奇妙な言語の自己紹介がもう一度なされた。
結局一音もまともに発することができる気がしないが、クロディーヌさえわかっていれば会話を成立させられると思い、そのまま自分の自己紹介に入る。
「俺の名前は木米 蘭。クロディーヌさん、よろしくな」
自己紹介をされたことに気が抜けたのか、いつのまにか敬語は解けていた。
俺の自己紹介が終わるとクロディーヌが右前足を差し出してきたので、しゃがんでクロディーヌと握手する。
『一ついいかしら?』
「なんだ?」
『その下品な口調と動作はなんなのよ!淑女としてあるまじきものだわ!』
「っ!?いてっ」
『その態勢で足を開かない!』
突然の大声に驚いたことや、しゃがんでいたこともあり俺は尻餅をついてしまう。それを見たクロディーヌは、さらに怒りのレベルを上げる。
「仕方ないだろ!スカートなんて全然履いたことないんだから!」
『言い訳しない!元々、同調の準備が整うまで、一緒にいる必要があったのだけど、ワタクシが淑女としての振る舞いをみにつけさせてあげるわ!』
「まず魔法使いをするなんて言ってないだろ!勝手に決めるなよ!」
男だったことがばれたくない俺としては、大変ありがたい申し出なのだが、何をするのかわからない魔法使いになることが決定事項のように話されて、ついカッとなってしまう。
「まず、魔法使い探しをしていた理由を教えろよ!」
『……そうね。先に教えるべきよね。だから、あの子は、あんなことになってしまったのよね……』
言ってから、しまったと思った。自分の性格上、知らなければ普通の生活を送ることもできただろう。
しかし、知りながら聞かなかったことにはできない。前の学校でもそうだったのだから。
クロディーヌは少し落ち込んだようになって話し始めた。
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設定紹介
童話・精霊伝説
ある神社の巫女が精霊と力を合わせて、人間界を侵略しようとしていた悪しき存在と戦うお話。後の世代に巫女のような精神を養ってもらうため、絵本の形で普及させた結果、架空の話と勘違いされた。
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