少女と彼

彼が地面に衝突した瞬間、落下地点を中心に

半径20m弱のクレ-タ-が発生し、彼はゆっくりとクレ-タ-の中心から身体を起こした。


「やっぱり死ねないか……。」


今まで試した事の無い自殺方法だったから。

彼は少しだけ希望を抱いてた、

それだけにいつもより溜息が重かった。


周囲を見渡し、森の中である事が確認できた

「とりあえず歩くか…。」


「やっほ〜、お兄さんこんにちわ〜!!。」

先程まで「荷物」を運んでいた少女が彼の

顔を下からのぞき込むように満面の笑みで

右手を掲げながら挨拶をするが…。


「………。」

彼は目の前に少女がいると言うのに気づかず通り過ぎた。


「アレ?アレレ?。」

少女は自分がお兄さんと呼んだ相手の反応に困惑してしまう。


「お〜い、お兄さ〜ん!」

歩いて行く彼に遅れないように自分も歩きながら、彼の視界に入るように手を振るが、

無視して歩き続ける。



「う〜ん。」

少女は右手の親指と人差し指を顎に添えて 考え込む。


「あっ!。」

数秒後、突然何か閃いたように身体を動かす。


(とりあえず、森から出るとするか。)

ウタウスは能力者しかいない世界だと言っていた、最低でも人は何処かにいると思い、

足を動かす。


「こんにちわ〜〜!。お兄さん。!」

「……!」


彼は、まず突然現れた少女に驚き後退るが


次に少女が何処から現れたのかを考える、

そしてウタウスの言葉を思い出した。

ウタウス「能力を持った人間しかいないわ」


「能力か…。」


「そうだよ〜、良く分かったね!!」

「私、能力を切り忘れていてね、聞こえる訳ないのに大声でお兄さんに挨拶してたんだよ、いや〜恥ずかしいな〜。」


誰も聞いてないのに彼女が勝手に喋り始めるのを無視して質問する。


「君の名前は?。」


「私の名前?ちょっと待っててね。」

彼女は頭に被っている黒の帽子を取り、帽子の中を見つめていた。


彼は彼女のその行動に、疑問を感じた。

(名前を覚えていないのか?)


「え〜〜っと、私の名前はコリーだよ。!」


「そうか…、コリーか。」

「色々と質問させてもらっても良いか?。」


「良いけど、貴方の名前聞かせて!。」

「ついでに、質問し終わったら私の質問にも答えて!。」


「分かった…。」


「僕の名前はロム.コンプレッツモン.バチェだ。」


「えっ…長、」


「まあ…、好きな様に呼んでくれて構わない。」


「OK!、じゃあお兄さんって呼ぶね!。」


「それ名乗った必要あるのか…?。

じゃあ…、とりあえず君は何故ここに

きた?。」


「ゴミ捨てだよ、ここらへんに良く捨てているんだ〜!後、凄い衝撃音がしたから私

凄い興奮して、急いで走ったらお兄さんが

いたんだよ。」


「そうか…、それで何故ここに捨てるんだ?、家やゴミ捨て場に捨てれば良いだろうに。」


「私、ホームレス?って言う奴らしいから家はないしゴミ捨て場も遠いからここに捨てているんだ〜。」


「身内は?」


「いたんだろうけど覚えて無いよ!。」


「覚えてない?。」

通常では暗くなる話だろうに、目の前の少女は満面の笑みで返答してくるせいで調子が

狂ってしまう。


「うん、一年位前に何故か全部

忘れちゃった。」


「名前も覚えていないのか?」


「うん、帽子に書かれているこれが私の名前だと思うけど…。」


「何故そう思うんだ?。」


「私が記憶が無くなった日からずっと持っていたからかな。」

少女はそれを、何か物憂げな眼差しで見ていた。


「大切な物なんだな……。」

その姿に何か思う所があるのか、彼は少し優しそうな眼差しを向けていた。


「うん、大切な帽子だよ。」

少女は帽子を自分の頭に被せてこちらを

見る。

「さて、もう質問は終わり?、無いなら私から質問するよ?」


「いや、一つだけまだある。」


「え〜〜、もう、長いな〜」

少女はこの会話に少しずつ退屈してきた。


「大丈夫だ本当に一つだけだ。」


「分かったよ、これで最後だよ。」


「僕を殺せる存在を知らないか?」

ロムが発した、その衝撃的な一言に


「えっ?。」

少女はただただ絶句する事しか

出来なかった。
























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