14

深夜になった。二人は裸で抱き合っていた。なんだかそれはいつもの廃舎みたいで、二人は悲しくなった。枕が静かに湿っていった。


「ねぇ、ナギ」

「やっぱり、帰ろう」


「絶対に帰るもんか。帰らないって決めたんだ」

ナギは頑なにそう言った。


ニノは、胸から湧き上がる悲しいクラゲが喉に詰まったみたいに息が苦しくなった。けれどもニノは言葉を続けた。


「帰るしかないよ」

「ナギは頭いいから、わかるでしょ?」


ニノはナギの頭を撫でた。それは幼い頃いつも、ナギが悲しんでいるときにニノがしてあげたことだった。様々な思い出が、走馬灯みたいに駆けては消えていった。ニノは言葉を続けた。


「ナギはさぁ、やっぱ札幌の高校行くべきだよ」

「こうきしけん?ってのがあるんでしょ?」

「それでいい大学入ってさ、東京の会社入んなよ」

「今はわたしの居られる場所、村しかないもん」


「帰ろう」


ナギはボロボロと宝石みたいな涙をこぼした。ニノが幼い頃から何度も見てきたナギの泣き方だった。ニノは泣かなかった。ニノは始めから分かっていたという表情で、ナギの頭を一晩中撫で続けた。

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