12
四日目になった。二人はいつものように西川口駅から電車に乗り、赤羽駅、新宿駅で乗り換え、下北沢に向かった。
下北沢の駅前では、獣権保護団体を名乗る集団がシュプレヒコールをしていた。その集団のほとんどは人間だった。彼らは、獣人という呼称の撤廃を求めているようだった。
「獣人って言葉って、サベツなのか?」
「……よく知らない」
ナギは言葉を濁した。ナギは、漁師がいつもニノを「獣人」と呼んでいたことを思い出して、落ち込んでしまった。
「なんか元気なくない?どうしたの?」
ニノは心配そうにナギを見つめた。
「下北沢には古着屋がたくさんあるらしいよ」
ナギは話題をそらした。
ニノは、目に入った古着屋に片端から入っては服を試着した。ナギは、ニノが何かを着るたびに、可愛い、可愛すぎる、と繰り返した。そのように午前が過ぎた。
お腹が空いた二人は、適当なカレー屋に入って、キーマカレーを食べた。ニノは爪が伸びて、スプーンが握りにくそうだった。
「そろそろ爪切ったら?」
「あたし不器用じゃん?それで爪切んの苦手なんだよ」
「じゃあホテルに帰ったら切ってあげるよ」
それから二人はライブハウスに行った。なんでも、バンドの生演奏が聞けるらしかった。もちろん二人はそのバンドなんて知らなかったが、バンドなら何でもよかった。
ギターが爆音で鳴り響いた瞬間、ニノは耳を塞いだ。
「何だこれ!うるさすぎる!」
ニノは涙目になって言った。ナギはその時まで、ケモノの耳が人間より敏感なことを忘れていた。二人は慌ててライブハウスから飛び出した。
「ごめんね。耳、痛かったよね……?」
ナギは申し訳なさそうに謝った。
「いいよ」
「あんなに音が大きいなんて、あたしも知らなかったし……」
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