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二人はホテルを出ると、今度は西川口駅の北側に向かった。そこには『ザムザムの泉』という有名なラーメン店があるらしかった。
店内に入ると、片言の日本語を話す料理人がいて、手で麺を打っていた。ニノとナギはメニューを見た。そこにはビラビラした分厚い麺から細麺まで、様々な種類の麺が書かれていて、さながら麺の博覧会のようだった。二人はよく分からなかったので、メニューの上二つを適当に注文した。
「これがラーメンか〜。美味しい!」
「これほんとにラーメンなのか?蘭州牛肉麺って書かれてるぞ」
「よくそんな難しい漢字読めるな」
二人はまた上野に向かい、今度は動物園に入った。
「ヒトはサルから、ケモノはキツネから進化したらしいよ」
「へぇ〜。シンカ?ってポケモンみたいな?何か前に教えてもらったような……」
「進化っていうのはね」
「あっ、パンダいるよ!パンダ!」
ニノは一生懸命パンダの写真を撮り始めた。そのときだった。
「なんか気持ち悪い」
「うぅ」
ニノはオゲェッ!とえずくと、さっき食べた牛肉麵と毛玉を吐き出した。
胃液の酸っぱい臭いが辺りに広がり、近くの人は嫌そうに距離を取った。
「うぅ、ごめんなしゃい……」
ニノは涙目でその場にへたり込んで、「ごめんなさい」を繰り返した。ナギはニノの背中をさすった。
やがて、動物園の飼育員がやってきて、吐瀉物を片付け始めた。
「気にすることはないよ〜」とその飼育員は言った。
ニノは、漁師の前で毛玉を吐いたときの記憶がフラッシュバックしてしまったようで、うずくまってブルブルと身体を震わせていた。
「大丈夫?事務室でお茶でもしていく?」
「いいんですか?」
ナギは尋ねた。
「落ち着くまでゆっくりしていくといいよ」
飼育員はニノとナギを事務室まで案内して、ミルクティーを入れてくれた。
「私はケモノが好きなんだ」
「あなたもそうなんでしょ?」
飼育員はナギに尋ねた。
「はい……」
ナギはちょっと恥ずかしそうに答えた。
「でも、そういうのは異種性愛って言って」
「世間では煙たがられてるみたいだね」
「このミルクティー、すっごく美味しい!」
ニノは、さっきまでのことはすっかり忘れてしまったようで、ミルクティーをがぶ飲みしていた。
「あの、ニノにおかわりを入れてもらってもいいですか?」
ナギは尋ねた。
「もちろん」
飼育員は答えた。
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