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「これが排ガスの臭いか〜」

感心したようにニノは言った。


「そんなに臭うか?よく分からないな」

「ナギは昔っから鼻が効かないな」

「そんなことより、どこに行く?」


二人はまずカメラを買いに、家電量販店に向かった。家電量販店は躁の人の脳内みたいにピカピカしていて、とてもうるさかった。


それから二人は上野の国立科学博物館に向かった。これはナギの趣味だった。

ナギは、『ヒトとケモノの収斂進化』という展示を、食い入るように見つめていた。


「そんなに面白いか、それ?」

「ああ、実に興味深いな」


次に二人が向かったのはアメ横だった。これはニノの趣味だった。よく分からない中華系、東南アジア系の露店が大量に立ち並び、店先では肉やら魚やらフルーツやら野菜やらが叩き売りにされていた。冬なのにコバエがぶんぶん飛び回っていた。ニノはコバエをしっぽではたき落とした。


「なんか汚いな……」

「でも、色んな物があって面白いよ!」

「僕、人が多すぎて酔ってきちゃった……」

「あたし、あれ食べたい!」


ニノが選んだのは、台湾系の喫茶店だった。当時はタピオカが大流行していたので、その店も例に漏れずタピオカドリンクを販売していた。二人は暖かい店内でタピオカミルクティーをすすりながら、今夜どこに泊まるかを話し合った。


「あたし、ラブホってやつ行ってみたい!」

「あそこは18禁だろ?僕らは入れないよ」

「黙ってれば入れるだろ」

「じゃあ行ってみるか」


二人は上野駅からJRに乗り、赤羽駅で乗り換えた。乗り換えの際に盛大に迷子になったせいで、目的地の西川口に着いたときには夜中になっていた。


駅から出て西に向かうと、道徳的に良くなさそうな店がたくさんあるエリアに着いた。『休憩3800円』と書かれた看板がいかがわしい光を放っていた。

「あたし、あそこがいい!」とニノが指をさした。そこには、偽物のディズニーランドの城みたいな建物が立っていた。

「じゃあそこにするか」とナギは言った。

二人は緊張しながら、なんだかよく分からないビラビラみたいなものをくぐって、中に入った。フロントは無人で、パネルで泊まる部屋を選択する仕組みになっていた。


「どの部屋にする?」

「せっかくだから、らぐじゅありー?な部屋がいいな」

「誰か来ないうちに早く選んでくれ」

「じゃあこれにする〜」


ニノは、なんだかよく分からないけど白くて可愛い感じの部屋のパネルを押した。該当の階に行くと部屋番号が点滅していたので、場所はすぐに分かった。中に入ると、白いレースの天蓋付きベッドがあり、その隣には、ベッドに全く似つかわしくない謎のスロットマシンが置かれていた。


「設計者はいったいどんなコンセプトでこの部屋を作ったんだ?」

「こんせぷと?なにそれ?」

「まぁいいや。とりあえず今夜はここでゆっくりしよう」


「ゆっくりする暇なんてあるのかな〜?」

ニノはそう言うと、いきなりナギをベッドに押し倒した。彼女のザラザラした温かい舌が、ナギの口に入ってきた。ケモノ特有の生っぽい匂いで、口の中がいっぱいになった。


「すき」

「だいすき」


そう言うとニノは、ナギを抱きしめ、服を脱がせ始めた。ナギはされるままに大人しくしていた。ニノは、ナギの裸体をしっぽで包んで、何度もキスをした。ニノのピアノ線みたいに細いひげが薄明かりのなかで光っているのが、ナギには見えた。やがてニノも裸になり、二人は交わった。そのまま二人は抱き合って眠った。

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