友達

 ボク――諸星もろぼしセイチは、高校一年生だ。

 私立に通っていて、教室の中では端っこの席。


 今日も相変わらず、みんなは部活の話やアーティストの話で盛り上がっている。そんな中、ボクは陰キャらしく、同じ雰囲気の男子と一緒に、ゲームの話で盛り上がっていた。


「FFのことよぉ。叩きやがってよぉぉ!」

「あー、なんか、いつも叩かれるよね」


 彼は向江むかえオサム。

 ボクにとって、唯一の友達だ。


 ボクらはいわゆるオタクという生き物。

 言葉を変えれば、陰キャ。

 アニメやゲームの話をしては、世間に対してブチギレまくっているという謎の性質がある。


「めっちゃ綺麗じゃん! ほら。あの、名前分からないけどよぉ。男装の麗人がよぉ。いるじゃんよぉ」

「誰だろ」

「いや、名前は分からねえ! 俺、PF5持ってねえもん」


 そうなのだ。

 ボクらはゲームが好きだけど、財力のないオタク。

 最新機器など買えるわけがなかった。


「中世だぜ? だったらよぉ。シスターとか出てくるじゃん!」

「シスター……」


 今朝のことを思い出し、頭を抱えてしまう。


「マジでよぉ。あれほど、エロい生き物いねえだろ! シスターだぜ?」

「う、うん。ボクらって、存在自体が罰当たりな気もするけど。とりあえず、相手の崇める神様に謝っておこう」


 オサムくんは素直に手を合わせ、「すまねえ。神様。エッチな目で見ちまった」と、懺悔をする。


 ボクも手を合わせ、世界に謝った。


「禁欲。黒い装束。あと、なんかやたらピッチリ」

「考えた人は天才だよね」

「ああ。かつては日本にハゲ頭のおっさんが来やがったらしいが、伝えるのは服のデザインだけでよかった気がするぜ! 気が利かねえな!」


 こんな感じで、ボクらはシスターという生き物が好きだ。

 本来のシスターがどんな風に信仰をして、どんな苦労があるのか。

 全く知ったことではなかった。

 ボクらにとって、エロが全てだ。


 かつての日本で隠れキリシタンという存在がいたように、ボクらは世界から追放されても、隠れながらスケベなシスターを崇めるだろう。


「FFやりてぇ。マジでやりてぇ」

「高いもんね。あ、そうだ。知ってる? PF5って、永久追放とかあるらしいよ」

「なにそれ?」

「わかんないけど。通報食らったら、永久にBANされるらしい」

「……こわ」


 という情報を得たので、ボクはオサムくんと共有した。

 たぶん、中傷とか、厄介な人はオンラインできなくする感じだと思う。

 パーツを換えても無理らしいから、二度とネットに来るなって感じなんだろう。


 まあ、中傷とかする方が悪いんだけど。


「そういや、シスター・〇〇ックやった?」

「うん。やったけど。全然、エロいシーンにいけないんだよ」


 シスター・〇〇ックという字面で、だいたい分かる内容のゲーム。

 悪の怪人になって、ひたすらシスターとエッチなことをするゲームだ。


 こっちの攻撃は、刃物を使おうが、魔法を使おうが、シスターの被ダメージは服が破けるだけ。

 なのに、悪の怪人は血みどろの惨劇に見舞われたりと、何かと不公平な扱いを受けるもの。ただ、女の子の痛々しい姿なんて見たくはないので、ボクとしては、これぐらいがいい。


「ガーターの紐をさ。ハサミで切るんだよ」

「切ろうとすると、首の骨折られるんだよ」

「バカ。そこはビンタで黙らせるんだって」

「激怒したシスターから歯を折られるのに?」


 という感じで、何かとハードである。

 一の暴力に対して、百のしっぺ返しがくるのだ。

 一部では熱い人気を誇り、『女の子を崇めながら、女の子を楽しむゲーム』とまで言われている。


「あ、予鈴だ」

「今日はラーメン食って帰んべ」

「うん」


 ホームルームが始まり、今日もかったるい一日が始まる。

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