第17話 動機は母と永遠に別れたい

「晃の日記帳が出て参りました。」

居合わせた警官もエッ!?という様な顔をして綾乃を見守っていた。

次の言葉を待つ様に・・・。

「昨夜の御通夜に晃の身辺を整理していたら晃が小学校から認めていた日記帳がお母さん読んでくれとでも言うように表紙を開けて置いてありました今からその本文を読み上げますから晃の言葉だと思って聴いて下されば幸いでございます。」

 気丈にも綾乃は日記帳をパラパッラとめくって付箋を外し、滔々と読み始めた。

「真夏だというのにエアコンが点いていない。

パパが病気で障害年金を貰っているけど、「お金が無いから電気代を支払えない」

と、小ウルサイママが良く我なり立てる。

「アンタがそんな身体に為ったから私が働かなければいけなくなったでしょ!」

最後は捨て台詞みたいに吐き捨てた!

そんな時パパは最初は怒るが、ハア!と寂しげな顔をして、溜め息を一つだけ突いて黙りこくっていた。

かなりアホそうに見えるママに偉そうに言われるのが多分悔しいのだろうな。

僕の家はママが「お金お金。」と言うので、そんな事を言えば暗い森の奥からバサッ!バサッ!

と、音を立てて黒い大きな梟の様な鳥が家にやって来る。

何をするでも無しに庭の片隅のシマトネリコの細い枝に留まってホーホーと、鳴きながら家の中を覗いていた。

けれど梟の鳴き声が分かる!

僕には分かるのだ。

「中西の・・・夫婦とは、何なのだろうかね?

チャペルで誓いを立てた筈の夫婦はいつかそれを忘れて笑顔が消えた2人になってしまったよ?

夫や妻がダメージを受けた場合にそれを補う事が、神の十戒。

いつの間にかそれを忘れた妻に戒めを与えよう。

月の光に誓うよ、ホーホー、ホーホー。」

梟は、獰猛な獣さ、神の十戒を破ったなら梟に後頭部を堅い嘴で襲われる!

例え鮮血が舞おうとも神の僕は戒めを止めない。

相手が力尽きるまで、攻撃は続く。

いや、続ける。

それが神の戒め。ホーホー、ホーホー。」

パパとママが言い争いを始めたなら僕はいつだって怖い!

いつの日か、恐怖に戦いて泣きながら布団を被ったりしたものさ。

漸く知ったよ。

その時の2人は神に粛清される運命!

夫婦には其々理由が有る。

事情が有る。

しかし、妻が暴言を止めない限り、神は僕の梟二羽を使い私を神の身元へ思し召し下さる。

この世でいつまでも抗って居ては天空の存在を末梢されるだろう。

この世ともさらば、私は神の使い梟二羽に迎えられ神の誘い(いざない)に俯き肯定する。

錦小学校2年3組中西晃。

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