半怪人
穴に入ってからどのくらい経ったのだろうか。
食事は無いらしい。とはいっても、怪人は約3週間飲まず食わずでも生きられるらしい。
半怪人である俺も1週間は食べなくても困らないと言われた。事実、まだ腹はすいていない。
しかし、簡易トイレと照明しかないこの中はひどく退屈だった。時間も見れないのでいつまでこの状況が続くのか、まったく分からない。
「おーい、3日経ったよ。もう出てきて大丈夫-」
薄暗い静寂の中、終わりを告げる声が穴の中で響いた。やっと終わったのだ、長かった。
足に力を込め、大きく飛び上がる。一気に穴の外に出られた。
「いやー、本当にお疲れ様。ゆっくり休んで……」
杏奈さんは俺の姿を見ると言葉を詰まらせた。
「えっと、どうしました?何か変なことでも??」
「変って、何で3日経ってるのに半怪人のままなんだよ…………」
自分の手を見ると確かに入る前と何一つ変わらない
。ちゃんと5本指はあるのに片手だけ爪は鋭利な刃物みたいにのびている。鱗も同様に片腕のみにあった。
「と、とりあえずいいや。実際に今は理性があるんだ、問題ないだろう。じゃあ、次は訓練をしてもらうよ」
杏奈さんもそうは言っているが、声が震えていて動揺が隠せていない。周りにいる人たちの目線も変なものを見るように感じる。
「おい、ボサッとするな。さっさと行くぞ」
誰かに服を引っ張られて俺は下水道の奥へと連れていかれた。
5分くらいして、訓練場らしき場所に着いた。
「おお、病院の子か。覚悟を決めたんだ!!」
聞いたことある声に呼ばれて振り返ると、あのとき助けてくれた人がいた。
「はい!あなたのお陰です!!」
「いいや。君が決めたことだ、俺のお陰じゃない」
そう言いながらも嬉しいのか口元が少し緩んでいた。
「それはそうと、ここに来たってことは強くなりたいってことだよな?俺は甘くはないぞ」
「はい!」
目一杯の声で俺は返事をした。
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