救出

 しかし、どうしたものか。

 力を使ったせいなのかは知らないが、自分の腕は完全に人間じゃない。

 このまま出ていけば確実にあの男にばれる。

 それに先ほどから少し騒がしい。たぶん、奴の仲間が俺を捜索でもしてるんだろう。

 いくら恨みがあるとはいえ、今の俺が戦いを挑んでも勝てるわけがないことはさすがに分かる。

 

 「おっ、いたいた」


 建物の上から聞こえた声は俺の背筋を凍らせた。

 『どうやり過ごすか』それだけのために頭をフル回転させる。

 しかし、声の主は予想外のことを口にした。


    「お困りでしょう。助けますよ」


 そうして建物から降りてきたとき、俺はこの言葉の意味を知ることとなった。

 触覚が頭から生えていて身体全体が甲殻類のような殻に包まれている。俺と同じように怪人化した人間だったのだ。

 「我々はあなたと同じです。病気になっただけで世間から虐げられ、殺されかけた。私たちの世界にはそんな理不尽なことはありません。皆平等なのです。さあ、こちらに」

 そういって会ってまもない目の前の男は手を差しのべている。

 信用は正直言って出来ない。とはいえこのまま逃げ続けて生き延びることが出来るとも思えない。

 

 「…………分かりました」


 男の手をとり、握手を交わすと彼と一緒に向かった。

 

 

 


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