急襲
「お、俺はどうすれ……」
質問の途中、窓ガラスを突き破る音と共に目の前にナイフを捉えた。
反射的に身体が動いたから、おれ自身はなんとか躱せたが他の2人には深々とナイフが刺さってしまった。
急いで母さんのもとに駆け寄ったが、どうやら即死だったようでもう動かない。医者の方も同様だった。
「あー、きっも。化け物が人らしく振る舞ってんじゃねぇよ」
窓から入ってきた男は軽蔑したような顔でこちらを見ていた。
こいつが誰なのか、何で襲ってくるのか疑問はあったが正直言って今はそんなことはどうでも良い。
『殺意』、それ以外に今の俺を突き動かすものはなかった。
俺は足に力を込め、前傾姿勢になる。
「なんだ、俺とやる気か?」
奴も居合の構えをして、臨戦態勢に入る。
込めていた力を一気に解放し、渾身の突進を放った。
「甘い」
勢いを受け流された上、首筋には痛みが走った。
ドロッとした液体が首の切り傷から溢れ出す。
のたうち回りたい身体の衝動を必死に抑えて、相手を睨み付けた。
前回以上に足に力を込めて先ほどの姿勢をとる。
「はぁ、それさっき通用しなかっただろ?」
呆れながらも奴も同様に居合の構えになった。
結果は先ほどと同じだった。
しかし勢いだけは以前とは違い、壁を突き破った。
地面に着地すると一目散に病院から離れる。
幸いなことにどうやら奴は人外並みの走力は無いらしい、振り切ることが出来た。
その日、俺は仇を取れなかった俺のふがいなさを呪った。
それと同時にあの男への復讐を誓った。
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