怪人化症候群

ポワワ

初期症状

8月上旬、真夏日。

蝉はいつも以上にうるさいし、照りつけてくる太陽のせいで喉の乾きもすごい。

携帯していた水筒から水分を取り、部活後で疲れていた足をなんとか動かしていた。

「……ったく、なんで明日も部活なんだよ。めんどくさ」

そうやって愚痴をこぼしながらも俺は妙な違和感を感じていた。

なんというか今日は身体がやけに重い。

いくら部活後とはいえ、いつも通りの練習メニューでここまでなることはまず無いはずだ。

熱中症を疑いもしたが、家に帰ってから体温計で測ってみても平熱。

「そういうこともあるか」

そう自分に言い聞かせて、俺は仮眠を取った。



次に起きたとき俺がいたのは病院だった。

「どうして、家で寝てたはず…………」

混乱している俺とは違い、横にいた母は安堵したような顔を浮かべている。

あとから医者らしき男が入ってくると、俺が質問する前に神妙な面持ちで話し出した。

「これから私が言うことは決して悪ふざけや下らない妄想などでは断じてありません。そしてこれを聞いても決して取り乱さないでください」

「あなたの症状は怪人化症候群です。あと3日であなたは自我を失い化け物になってしまうのです」



耳を疑った。

怪人化症候群?自我の無い化け物になる?

そんなおとぎ話のような話を信じる方が無理がある。

それに症状もせいぜい身体が重い程度で他にはなにも……


         

「は?」



肌が鱗みたいにざらざらしている。

片手の爪はまるで鋭利な刃物みたいだ。

それを見て直感で分かってしまった。

医者の言う通り、数日で俺は俺じゃなくなると。











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