第34.5話 クレアの苦悩

「ねえ、メラー」

「どうしたんだ?」

「快斗と別行動って言うけど、今快斗は何してるの?」

「大事なことをしている」

「何それ」


 今日の夕方、急に任務が出来たと言ってあたしと快斗は別れた。しかし、今この状況で別々に行動するのは危険でしかない。それに万が一のことがあったときにすぐに場所が分かるように、快斗がどこに行くのか聞いたが、曖昧な返事しか返ってこなかった。これは私に何か隠し事をしているに違いない。


「快斗はどこにいるの?」

「どこだと思う?」

「なんで質問に質問で返すの。でも、メラーは知ってるんだね。あたしは知らないのに」

「私も定かではない」

「じゃあ、どこら辺にいるか教えて」

「この街のどこかだ」


 質問攻めをしたところで適当な答えばかり言うメラーにあたしはため息をついた。


「なんで、あたしには教えてくれないの。信じるって言ってくれたのに」

「信じてるからだろ」

「適当なこと言わないでよ……」

「すまん」


 あたしは採取の任務を中断し、木に寄りかかった。快斗は今どこにいて何をしているのか。今はそれだけが気がかりだ。


「もう一回聞くけど、快斗はどこにいるの?」

「さあ」

「もう、早く教えてよ」

「教えたところでクレアがそこに行こうとするのは目に見えている。そこに行かせないことが私の役目なのだから、言うことは出来ない」

「危険な場所ってこと?」

「そういうことだ」

「だったら、人数が多い方がいいでしょ」

「事前に聞いた話によると、危険な場所にクレアをあまり連れて行きたくないらしい。快斗も優秀な人材を失いたくはないんだ」

「今、その人材を使わないでいつ使うっていうの!?」

「それは……」


 あたしがなんのために快斗についていくことを決めたのか。それはカイトの役に立ちたいからだ。それに危険な場所に一人で行くのは無謀にも程がある。危険なところにも立ち向かえるのは仲間がいてこそだというのに、快斗は一人で行こうとしている。それは命を無駄にするような行為だ。


「快斗の場所、教えて」

「それは出来ない。教えたら、行くだろ」

「当たり前でしょ。ほら、早く吐いて」

「言ったら、私が怒られるんだぞ」

「知らないよ!ほら、早く言って!」


 快斗の命が危険に晒されている。だから、後で怒られるかどうかより、今は快斗の命の心配をしたい。


「分かった、言う。言うから、あんまりぐわんぐわんさせないでくれ。酔ってくる」

「じゃあ、早く言って」

「快斗は教会の一番上を目指している。しぐじってなければ、今は教会に入ったぐらいだな」

「分かった。ありがとう!」


 教会になんの用事があるのか分からないが、あたしは荷物をまとめてこの森を後にした。


「待っててよ、快斗」

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