第27話 洞窟の災難②
「それより、探しに行くってどうすればいいんだろうね」
「とりあえず、歩くしかないだろうな」
「そうするしかないね」
ここの洞窟の広さというのはよく分からないし、もしかしたら、さっきまでいた洞窟ではない他の洞窟にいる可能性がある。それでもこの場に留まるべきではない。探す努力だけでもした方がいいだろう。
「ここって未探索の洞窟みたいだから、魔物もいるだろうし、もしかしたらお宝も眠ってるかもね」
「お宝か。モチベーションが上がるな、それは」
「でしょ。洞窟のお宝って基本的にいい値段がつくんだよね。一攫千金ってやつ。だから、そういう洞窟を探索する冒険者もいるみたいだよ」
「へぇ。でも、それってだいぶ危険だよな」
「うん、だからハイリスクハイリターンってわけ。あたしもそういう夢あることしたいんだけど、流石に命とお金を天秤にかけたら、命の方を選ぶだろうから出来てないんだけどね」
「まぁ、今日はそういう気分を味わっておこうぜ」
「うん、そうだね。いい機会だと思うよ」
未探索の洞窟が数多くあるこの世界ではそこにある宝で食っていく人たちもいるわけだが、やはり命は何事にも変えられないだろう。一番大事にしなくてはいけないものだ。
「曲がり角だ。気をつけてね、カイト。こういうところで急に対面する可能性があるから」
「あぁ、分かってる」
クレアが前を、俺が後ろを警戒して洞窟を進んでいく。今の所特に発見はないが、とりあえず、分かることは未探索の洞窟というのは真っ暗で視界が悪いということだった。俺は暗視があるから平気だが、クレアは魔道具を駆使して視界を明るくしていた。
「カイト、気をつけて。魔物がいる」
「道を塞ぐようにいるから迂回も出来ないな」
「戦うしかないみたいだね」
「あぁ、分かった」
俺たちが行きたい方向に鎮座する数体の魔物。体躯は小さいから戦った方が早いだろう。俺は不意打ちの先制攻撃を放った。
『ファイヤーボール!』
「戦じゃー!」
俺のはなった攻撃は見事魔物の背中に当たり、魔物は魔法の衝撃で吹っ飛んで倒すことに成功した。
『ウォーター!』
クレアも続いて攻撃する。何回か攻撃すると道を塞いでいた魔物を全員倒すことに成功した。
「なんだ、余裕じゃねえか」
「そうだね。深いところにある洞窟って強い魔物がいるってよく聞くから、大したことがなくて良かったよ」
「ここの洞窟が浅いってことなんかな」
「いや、あたしたちが強すぎたんだよ……。なんてね。確かにこの洞窟が浅いところにあるからなのかも」
冗談っぽく笑みを浮かべて手を広げながらそういうクレアは、早速魔物を倒したところを調べ始めた。
「暗くてよく分からなかったけど、蜘蛛型の魔物みたいだね。それも小さい」
「それよりも、こっちになんかあるぞ」
「うわっ、お宝じゃーん。それに結構多くない?」
「だろ?来てよかったな」
「まぁ、来れたのは不運のおかげなんだけどね」
蜘蛛の魔物の近くには、金属などの宝が多く見つかった。どうしてここにあるかはわからないが、これは不運の中で見つけた大きな収穫だろう。
「よし、バッグに出来るだけ詰めたし、再出発しよっか」
「ちょっと待ってくれ」
「うん?どうしたの?」
「静かに」
バッグにお宝を詰め込めるだけ詰め込んだ後に、俺は何か変な音がすると思い、耳をすました。
「なんか聞こえないか?」
「うん、聞こえた。カサカサって何か這いずり回ってるみたいな音が」
嫌な予感がする。確実に人の足音ではない音に俺らは警戒した。
「こっちからだな」
「うん、そうだね。戦える準備はしておいて」
俺たちが来た方から音は向かってきていた。俺たちはいつでも戦える準備をしておく。
「来るよ、カイト」
「あぁ、分かった」
カサカサという音がより一層大きなり、その大きさから見てもいないが、その魔物の体がデカいということだけが分かった。そして、ついにその魔物は姿を現す。器用に動かす八本足、それはさっき倒した蜘蛛の親玉であった。
「デケェ」
「そんなこと言ってる場合じゃないよ!早く逃げよ」
「あぁ、そうだよな」
予想以上の大きさにただ茫然としていたが、クレアの焦った声色に俺も急いで逃げることにした。
「あいつ早いよ!」
「ヤバいって」
『グシャーッ!』
「うわっ、回り込まれた!?」
頑張って走ったところでこの巨大な魔物からは逃げられない。天井を伝って回り込んできた蜘蛛はそこから退く様子は見受けられなかった。
「戦うしかないみたいだね」
「あぁ、そうだな」
結局後ろに逃げたところで道はないわけだし、ここで諦めて戦うしかないのだろう。ちょうどここは洞窟にしては広い。戦う場所としては最適解な場所だろう。
「どこかで聞いたことがあるんだけど、こういう足が多い魔物って足が弱点らしいよ」
「じゃあ、集中的に足を狙うか」
「うん、そうしてみよ」
信頼できる情報か分からないが、信じてやってみる他ないだろう。
「じゃあ、俺は左狙うから」
「オッケー。じゃあ、行こっか!」
威嚇を繰り返す蜘蛛に俺たちは同時に魔法を繰り出す。
『ファイヤーボール!』
『ウインド!』
的確に狙われた魔法は蜘蛛の足を貫いた。しかし、まだ足は六本あるせいか、まだ元気だ。
「カイト、気をつけて攻撃が来る」
「あぁ」
攻撃の意思表示を見せた俺らにずっと威嚇していた蜘蛛は溜めのモーションに入る。二秒もない溜めの後、素早いスピードで何かがこちらに飛んできた。
『予測回避』
まさに危機一発。スレスレのところで回避すると、その物体は壁にぶつかり、凄まじい音を立てた。あれを食らったひとたまりもないだろうな。
「気をつけないとな、あの攻撃に」
「うん、そうだね」
少しの溜めはあるものの攻撃のスピードが異常だ。慎重に行かなくてはいけない。切り替えて、俺はもう一度攻撃した。一本、二本。クレアと協力して蜘蛛の足を無くすことに成功し、その場で蜘蛛は動かなくなった。
「どうかな?動かなくはなったけど」
無防備に蜘蛛に近づくクレア。油断しているクレアに蜘蛛は攻撃を仕掛けた。
「危ないッ!」
『俊敏!予測回避』
俺は魔法を使ってすぐにクレアの元に行き、抱きしめて攻撃を回避した。
「大丈夫か!?」
「う、うん。ごめん、カイト。完全に油断しちゃってた」
「怪我がないだけマシだ」
どうやら蜘蛛は動けないふりをしていたようだ。攻撃が外れたのが分かるとどういう理屈か足がないまま動いてどこかに消えていった。
「はぁ、怖かった。本当にありがとね」
「大丈夫だ。あんな状態で何かしてくるとは普通思わないだろうからな。油断するのも無理はない。ただ、次からは気をつけてくれよ」
「うん、絶対そうする」
油断というのは一番の危険だろう。もし後何歩か反応が遅れていたらクレアは大ダメージを受けていただろうし、取り返しのつかないことになっていたのかも知れない。だから、俺は釘を刺しておく。もう一度このようなことが起きた時、俺はきっとクレアを救うことはできないだろうから。
「じゃあ、出発するか」
「うん、分かった。早く見つかるといいね」
「あいつらはどこで何をしてるんだろうな」
俺たちは天音たちのことを気にしながらも洞窟の中を探索し始めようと歩みを進めた。
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