第11話 どうぐマニアのクレアがあらわれた!

「特等級の一歩手前といったところか。このレベルのドラゴンがここら辺に来るのはごくまれなケースだ。クリチャー・パーティーを警戒した方がいいだろうな」


「こんだけの大きさだと素材持ってくの大変そうだな」


「あー、そういう時はね、協会に頼めば大丈夫だよ。素材回収システムって言って自分じゃ全部回収できないやつを代わりに持ってきてくれるの。しかも、無料タダ!」


「その間にこれ誰かに盗られないか?」


 他の人に盗られないにしろ、他の魔物が食料にしてしまうかもしれない。


「そこは安心して!この道具があれば大丈夫だから!」


「なんだ、この六角形の箱」


「これを配置した範囲に結界が貼られる魔道具だよ。結界は魔物も入ってこれない」


「へえ、便利な道具だな」


「そうでしょ!他にもいろいろ便利な道具があるんだよ!これはね、時間差で爆発して周囲の警戒を引かせることができる道具。これはカメラって言って写真が撮れるよ。カイトも持ってた方がいいかもね。はい、あげる。で、これは」


 見慣れたカメラを渡され、次々にバックに入っている道具を紹介するクレアに俺は戸惑って何も言えない。


「おい、やめろクレア。カイトが困ってるぞ」


「あ、ごめん!いやー、カイトが道具に興味津々みたいだったからさ。道具マニアとしてはちょっと沼に引きずりたいなって思っちゃって」


 グオンが止めに入り、ようやくクレアの怒涛の簡単道具紹介の時間は終わった。グオンがいなかったらバックの中身が尽きるまで永遠に説明を聞かされていたかもしれない。


「じゃあ、これを周りに置きにいこっか。あ、必ず白い方を上にしてね」


「分かった。じゃあ、俺はこっち側やる」


「レインも行くのです」


「じゃあ、あたしたちはこっちね」


 半々に分かれてドラゴンをクレアから渡された道具を使って囲む。なぜ、白い方を上にしなくてはいけないのか。置いたら理由が分かった。置いた瞬間、地面にグサっと固定される感覚があり、引っこ抜こうとしても全く微動だにしない。レインに聞けば、地面に置くと勝手に釘が刺さり、ちょっとやそっとじゃ動かないようになっているらしい。


「逆にすれば天井まで釘が伸びるのか。だから、あれほどするなと釘を刺されたというわけか」


「……カイト、面白くないのです」


「あ、はい。ごめんなさい」


 渾身のギャグに期待をふくらませ、レインの方をチラッと見ると一瞥いちべつもくれずに呆れた声が返ってきた。悲しい。


「よし!一周したみたいだね!って、どうしたのカイト?」


「いや、なんでもない。もう、帰ろうぜ」


「そうだね。いやー、今日もカイトに助けられちゃったなぁ。あの威力、君魔法使いの素質があるよ!」


「いや、あれは俺じゃ——」


 俺じゃないと言いかけたところで俺はハッとする。ここで俺じゃないと言ってしまえば、どうなる?色々面倒になることこの上ない。だったら、俺がやった体で行くしかないのか?でも、そうなると俺はめちゃくちゃ強いやつに認定されてしまう。そんな誤解をあいつらに与えれば、見合わない高級難易度のクエストをやりかねない。だったら、俺はどうすれば良い?


「ふぅ、クレア!道が開いたぞ」


「お!ナイス、グオンとレイン!」


 ちょうどいいタイミングで閉ざされていた道をグオンとレインの二人が協力して開けてくれた。話をすり替えるチャンスだ。


「あ、そう言えばクレア。このカメラってどう使うんだ?」


「ん?これはね、まず、側面に入ってる電池に魔力を貯める。で、そしたら上の方のボタンを押して完了。撮った写真はここの画面で見ることが出来るよ」


「へぇ、それにさっき見せてくれた道具も説明してくれないか?結構気になったんだよな」


「カイトも興味ある感じ!?しょうがないね!この道具は、煙幕みたいなもので視界を防ぐやつだね。これで一定時間逃げれる時間を与えれる。まぁ、さっき使えよって思うかもしれないけど、これって対人用なんだよね。それにドラゴンはそもそも煙より高い位置に頭あるから効果はなしだし。あ、一個上げるよ。護身用にね」


「対人用って、人と戦う時もあるのか?」


「まぁ、盗賊団だったり、犯罪集団だったり、そういうのは相手するかな。それに女だと一人でいる時に複数の男がやってきて路地裏に連れていかれたり、とかあるからね」


 俺も非力だから一つ護身用に持っておくか。クレアからもらった煙幕をバックに入れておく。


「これは囮用の爆竹だね。投げるとちょっと時間置いてから音を鳴らしながら爆発する。これは、結構重宝するから持っておいた方がいいよ。で、これが即席テントで……」


 クレアが紹介するごとに俺はその道具を貰った。どんどんバックが膨れ、流石に入りきらなくなった頃にようやく街へと戻ってきた。

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