第6話 悪くないと思えた

「じゃあ、あたしとカイトとグオンで今から換金しに行くね」


「俺も行くのか?」


「当たり前でしょ。今回の功労者なんだし、それに換金のシステムとか説明しないとだから。あたしがやるのを見ておいてね」


 重い腰を上げて俺もレインとグオンの後に続く。あんな重い荷物を持っているというのに二人の足取りは軽いもので俺はやや遅れて二人の後ろを追った。


「いらっしゃいませ。今日もまた値引きの交渉ですか?」


「違うし、いつもじゃないでしょ!?換金しに来たの」


「ふふ、すいません。あなたってからかいやすいのでつい。それでは換金する素材の種類と分類を教えてください」


「ジャイアントクマの毛皮と骨、肉。分類は上等級だね」


 受付嬢と仲睦なかむつまじいやりとりをするクレアが言われた通りに素材名と分類を申告すると、今まで和やかだった表情が一変し、驚いたような表情を見せた。


「上等級ですか!?」


「ちょ、うるさいよ」


 受付嬢の大きな声に周りにいた冒険者も反応してこちらを見てくる。「嘘だろ?」「あの上等級を倒したのか?」という驚きに近いざわめきがここ全体に広がり、上等級を倒すことがいかに凄いことか直感的に分かった。


「本当なんですか?」


「本当だよ。グオン、見せてやって」


「ああ」


 グオンが紙に情報を写すと、受付嬢は紙を確認して真偽を確かめる。三回目の確認でようやく彼女は顔を上げて感嘆の声を上げた。


「どうしようもなく本物ですね、これは」


「そうでしょー?あたしたちが嘘つくわけないじゃん」


「……魔力を流したお風呂に入れば痩せるっていう嘘ついたこといまだに恨んでますからね」


「いやー、それよりさ、早く換金してよ」


 話題を一瞬ですり替えたクレアは早く早くと受付嬢を急かした。


「少し待ってください。ええ〜と、素材の総重量、需要ボーナス、上等級ボーナスで、だいたい——」


「あ、忘れてた!上等級ってことはクリチャー・パーティーが近いんじゃないかと思うんだけどどう?」


「はぁ、分かりました。最重要情報を教えてくれたので、それを加算して大体合計で……、これくらいになります」


「ありがとうー!大好きだよー!」


「はいはい、私もですよ」


「よーし!今日はこのお金で贅沢しちゃうぞ!あ、カイトにはこれあげる。今日の功労者だからね」


 ほんわかとした雰囲気の百合をながめているオタクと化していると、クレアから封筒を渡される。ずっしりと感じれるほどの重さ。恐る恐る中身を見てみると、その封筒の中には金が入っていた。


「な、なんだ?これ」


「それは君の分のお金だよ。君がいなきゃ、あの魔物は倒せなかっただろうし、それくらいはもらって当然。って言っても今回のパーティーは人数多くて少しになっちゃうけど」


「いや、普通にありがたい」


「じゃあ、レインたちのところに戻ろっか。だいぶ待たせてるだろうし」


 この封筒の中身は俺が今日一日の頑張りが詰まっているというわけか。そう思うとさっきよりより一層重く感じる。一日の稼ぎとしては少ないかもしれないが、その分充実感もあった。なかなか異世界というのも悪くないと思えた。

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