足音2

 日曜の夜。

「明日から1週間が始まる~」

 奥さんが布団の上で月曜日になることを嫌がっている。今の仕事というより労働自体が嫌らしい。宝くじで1等が当たったら、仕事に区切りがついたら辞めると宝くじを買ってから当選結果が出るまで夢見ている。

 僕らの家は2LDKで、部屋はそれぞれが使っている。お互い在宅勤務をすることがあるからだ。寝るときはいつも別々に寝ている。仲が良くないとかではなく、単純に布団を2つ置くほどのスペースがお互いの部屋にないだけ。僕が宝くじを当てたなら、2人で並んで眠れる部屋がある家を買いたいけど。

「そろそろ寝よっか」

 しばらく他愛のない話をした後、時計を見ると23時を過ぎていた。明日に備えて寝る為におやすみ、と言い奥さんの部屋を出る。奥さんもトイレに行くと立ち上がった。トイレは奥さんの部屋の向かいにある。ちなみに僕の部屋は玄関を入って一番奥にある部屋だ。

「スマホ置き忘れているよ」

 奥さんの声とガチャッとトイレの扉が閉まる音がする。自分の部屋まで戻った僕はスマホを取りに来た道を戻る。奥さんの部屋を覗くが、ぱっと見スマホは見つからない。

「私の部屋じゃなくて、洗面台だよ」

 トイレから奥さんが僕に声をかける。洗面台はトイレの隣にあり、振り向き洗面台を見ると確かに僕のスマホが置いてある。

 さて、ここでもう一度言おう。奥さんはトイレに入る前にスマホが置き忘れている事を僕に伝えてくれた。そして。その後、僕が奥さんの部屋まで行くと、洗面台にあると教えてくれた。まだ奥さんはだ。当たり前だが、扉は締まっているしトイレの中から外の状況が見えるわけではない。それにも関わらず奥さんは、僕がことが分かった。

 僕が驚いていると、トイレから出てきた奥さんが僕を見てこう言った。

「だって、洗面台を通り過ぎて部屋までくる足音がしたんだもん」

 普通、足音だけでどこまで歩いたのか判断つくのだろうか。だから、つい口から出てしまった。

「怖……」

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