第44話 幕間 ~ VS バーサーカー忍者

「きょ、狂戦士!? いやああああ! もっとひどいことされちゃううううう!」


 ダメ委員長が戻ってきたので、ちょっとだけ安心する。


 しかし、委員長を奥に奥においやろうと、隠し続けるバーサーカー忍者たちは口々に反対のことを言っていた。


「コナイデエエエ」「サッサトカエッテエエ」「ナカッタコトニシテエエ」


 委員長が大慌てに否定した。


「やめてよ! ああみえて、景山君は短気の甲斐性の据え膳食わぬは男の恥の真逆高校生なんだから、あんたらに同調しちゃったらどうするわけ!?」

「……やっぱり帰ろうかな」


 なんか、イラってした。

 少しだけ、イラって。


「きゃああああ! うそです! イケメン景山さまあああ! どうかわたしめをすくってくださいいいい! お慈悲をおおおおお!」


 委員長が、負け犬のメスなんちゃらみたいになっていた。恥も外聞もない。


「でもなあ……なんかバカにされた気がするし……」

「そんなああ、おねがいしますうううう! こんなやつらと一晩明かしたら色々うしなっちゃいますうううう! あああ! なんか壁が迫ってきてる! 肉壁がすごいのでえええええ!」


 肉壁の向こう側から聞こえてくる声を聴くだけで、委員長の泣きべそ顔が目に浮かぶようだった。

 鼻水も出てるだろうし、髪も乱れているだろう。それも変なコスプレを着たままだ。


 なんかちょっと笑ってしまう。そんな自分に驚く。


 委員長って、異世界に行くまでは、正論ばかりを吐く、融通のきかない人間だと思っていた。

 俺は、いつも殴られていて、先生もクラスメイトも助けてくれず、家族には言えるわけもなく――ああ、そうだよなあ。いっつも気にかけてくれたのは、たとえ演じていたんだとしても、この委員長だけだった。


 こちらでは四日。

 それでも俺にとっては四年の魔王退治。


 死に分かれた仲間とは、二度と会えないのだろうけど――彼ら彼女らは、世界に何人もいた勇者のなかでも、特にしょぼいはずだった勇者の俺を生かすために、文字通り命をかけてくれた。


 失禁だってしたし、命乞いもしたし、何度も泣いたけど、それでも、助けてくれる人はいた。

 だから、いじめられても我慢するだけしかできなかった俺でも、成長し、そして卑劣な手と言われようとも、魔王をソロで倒すことができたのだろう。


「ったく……仕方がない」


 良いつつ、俺も笑っていた。


 さて、そうと決まれば、俺も全力を出すほかない。


 本日二度目の、身体強化――。


「……オールON」


     *


 この時点で、俺はまだ、なにも心配をしていなかった。

 まさか、ここから万事休すになろうとは思いもしなかったんだ……。

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