アナザー50話 いっちょやりますか

注意!

このお話は本編とはなんの関係もありません。

あくまで元々使うはずだったが、没になったもう一つのお話です。

こういう最終回もあったんだ〜ぐらいに思ってもらえればいいです。

なお、話をわかりやすくするために説明すると、この世界線?時間軸?では、49話目が少し違っており、もーね達と会っていない状態です。



「月が綺麗だなぁ....」

俺は、大樹に肩を預け月を見上げながらそう呟く。

俺ももう少しで消えちまうのか....。

もーね達は今何をしているんだろうか。

「ほんと、なんでこんなことになってるんだか」

苦笑まじりにそう呟く。

「なぁ...月」

俺は月に問いかける。

「俺って、マガイモノだったんだよな?」

そう問いかけても、当然返答なんて返ってはこない。

でもなんだか、「そうだ」と言われている気がした。

「やっぱりそうなんだよな......」


そんな時、俺を呼ぶ声が聞こえた。

「颯太君」

「だ、誰だ⁉︎」

そう言って辺りを見渡しても、人影はない。

「.......」

「颯太君」

と、また聞こえた。まるで頭に直接話しかけてきているみたい.......もしかして。

「あえか.....なのか?」

自分の胸に向かってそう問いかけると、

「大正解」

そう聞こえたと同時に、視界が真っ白になった。


「.......っ...なんでここに...?」

気がつくと、自分の....正確にはあえかの部屋にいた。

「やっと会えたね」

「その声は.....」

振り返ると自分......いや、<あえか>がいた。

「あえか....か」

そう言うと、あえかは頷いた。

「ここは、私たちの精神の世界」

なるほど.....だから俺たちは今対面しながら話せるってことか。

「そういうこと」

「え?俺が思ったことがわかるのか?」

「そりゃ、私はあなたなんだよ?」

それもそうか......ん?ちょっと待てよ?

「私もあなたってどういうことだ?あなたは私っていう方が普通じゃないか?」

俺は疑問に思ったことを聞いた。すると、

「そりゃあ、この世界....あえかとして君が過ごしてきた世界はまやかし。そして荒木颯太として過ごした世界も全部まやかし」

「は?」

意味がわからなかった。だって、俺は自信が転生したと思っていた。だからこの体は借り物で、いつかは返さなきゃいけないと思ってきた。

それなのに.....あえかとして過ごした世界がまやかし?それに自分が18年間過ごした世界もまやかしだって?

そもそもなんで自分の元々いた世界を<あえか>は知ってるんだ?

頭がこんがらがってきた。

「それは、私が君によって生み出された存在だからだよ。私は君の夢の中の人物に過ぎないんだ....」

なんで夢の中の人物に自我があるんだ‼︎というツッコミがさておき......俺が生み出した?一体どういうことなんだ..........。

「君は男の子じゃなくて女の子なんだよ?本来の名前は荒木あえか。君は荒木という名字から荒木颯太を生み出し、それを自分とした。そしてあえかという名前から私を生み出した」

色々驚くところはあるが、今知りたいのはそこじゃない。

「なんでこんなことをしているのか知りたいんだよね?」

俺はそう聞かれ、頷いた。

「それはね。君がいじめられていたから。君はトランスジェンダーで、心は男なのに、体は女っていうのでいじめられていた。そんな過程で、君はいじめられるのが怖くて、夢の世界へと逃げた。結果、この二つの世界が生まれた」

「そういえば、さっきなんで前者の世界と後者の世界で全部あやかしと、あやかしなんて言って、分けたんだ?」

「それは、このあえかとして過ごした世界は、君の世界が元となっている。そして、それは、すべて正夢なんだ」

正夢ってことは.....。

「そう。君が目を覚ました後も、君が体験したことが起きるよ」

..........なるほどな。

「逆に君が荒木颯太として過ごした世界は、場所や人物が実在していても、君が体験したことは起きない。それは正夢ではないから」

そんな、大規模なことを可能にしたのはこの頭ってわけか。

「そういうこと」

そこで、俺は全てを思い出した。自分のことを全て。

「俺は....マガイモノじゃないってことか?」

「そうだよ。確かに君は私たちの世界ではマガイモノでも、現実的にいえばマガイモノじゃない」

そう言ったところで、あえ....少女が上を見上げた。そして言った。

「もう、タイムリミットだね」

そう言ったのと同時に精神の世界が崩れ始めた。

「タイムリミットってことは.......俺が夢から覚めるってことか」

俺がそう言うと少女は頷いた。

「じゃあね……」

そう言った少女は、泣きそうだった。

「あのさ。俺……目が覚めてもお前のこと、絶対忘れないからよ」

俺はそう言った。この世界は確かに存在した。俺が作って存在したんだ。そうして少女に俺は体を貸してもらった。きっと、この出来事がなかったら俺は夢の中で一生引きこもっていただろう。少女には感謝しかないよ。

「…………私は何か残せたのかな……」

少女がそう聞いてきた。

「当たり前だろ。お前のおかげで今の俺があるんだから」

そう言うと、少女は泣いた。

夢の中の人物。夢とは言え、一応自我があるわけで、さらに小学6年生が、今から消えるって状況で泣かないはずは無いからな。

泣いて当然。俺だって怖かった。

けど…………

「お前が怖かったのはやっぱり、自分がマガイモノってことだろ」

そう。俺は最初、この世界にとって自分はマガイモノだと思っていた。けれど違った。

俺は彼女達と同じ世界で生きていた。

夢というものかそうでないかという違いだけで、本質は全く変わらない。

しかし、少女はどうだろうか?少女こそ、この世界にとってのマガイモノだった。

私に似ていて、作られた存在。それが今の少女だ。そして、何も残せず消えていくのが怖かった。だから、少女は泣きそうだったのだ。

そして、

「…………ありがとう」

そう言って少女は笑った。

悩みなど一切ない、清々しい……笑顔だった。

「もーねさん達をあっちでも救ってね」

そう、少女わたしから託された。

「任せろ」




ジリリリリリリリ

「…………ん……」

………。




「いっちょやりますか」


VTuberとしてじゃなく、オタクとして。

同志の願いを叶えてやらなきゃな。


そうして、俺は布団から出たのだった……。

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