第49話 最終日

今日は、最終日だ。

自分があえかでいられるのは今日で最後だ。

それはつまり、今まで会ってきた人と会えなくなる......もーねと話すことも会うこともできなくなるってことだ。

でも俺は十分生きたほうだろう。

颯太として18年間も生きて、そしてあえかとして1年間も生きた。

もういいよな。


今日は、今まで行った事のありそうな場所に行くことにした。

記憶が全くなくて、思い出せるのは楓さんが黒幕だったというところまで。

楓さんが今まで自分達に何をしたのか、全く思い出せない。



「結果が出たよ」

私は先生から結果表を受け取った。

そして、その表を見ると...。

「やっぱり........」

私はすごく驚いていた。

「あえかちゃん.....あなたって何者なの...?」

私はそう....呟いていた。



そういえば、学校で誰かに絡まれた記憶があるんだけど.....。

誰だったっけ?

まぁ、思い出すような価値もない人だった気がする。

よし思い出さなくてもいいか。



この場所でもーねと出会ったんだっけ?

もーねと出会ってからもう1年半か....早かったなぁ.....。


それからも自分はいろいろな場所を回った。

朧げに見覚えがある場所もあったが....思い出すと言うようなことは一切なかった。


まぁ、これくらいでいいだろう。

もう悔いは...............あるが別にいい。

十分生きただろうし自分。これ以上、あえかに迷惑をかけるわけにはいかない。

「帰って配信でも見よっかなぁ........」

そう言いながら、自分は自分の家に帰った。


いやぁ....この人の何がいいかって、まずキャラデザが神。絶対に3次元では再現できないようなイラストで可愛すぎる......。この人のコスプレとかいっぱい見たけど、あんまし上手く再現できてはいなかった。それもそのはず。まず第一関門として、頭にちょこちょこちょこ動いている謎の可愛い生物がいることだ。

さらにこの人のママは、その生物の作成図を公表していない。だから、全くもってコスプレイヤーの人が再現に四苦八苦するのである。

第二関門として、その人にはキラキラエフェクトがずっとかかっており、それがその人を表すと言っていいほど印象が強いと言ってもいい。

エフェクトがかかっているVtuberなんて見たことなかったし....。

だからどうしてもそのエフェクトができないコスプレイヤーさんたちは、いくら見ても、それがその人だとは思えないのである。

そして自分はタイツフェチ&足フェチなのだ。

その人の足は、タイツの時と普通に生足の時の衣装がある。それだけで最高。

.....そう考えると自分って特殊な性癖を持っているよな..。

まずドMで、ロリコンでタイツフェチで足フェチで、恋愛対象が今の所....百合だけで....いや、今は違うか。好きな人いるわ。その他にも.....etc。

ロリコンとかドMとか特殊性壁に入るのかわからんけどね。

てか、ドMというか控えめのマゾみたいな感じだよな自分。

マゾのくせに血が嫌いとかおかしな話だよなぁ....。

....この人のいいところは他にもあってだな...。

トーク力が上手くて、コメント欄で話題に出したコメントと似ているものに繋げて話すってのが非常に上手くて、それでも人気なんだよねぇ。コメントが拾われないなんてこと全然ないからねぇ....。

さらに、何にも諦めずに頑張っているのが非常に人気。


そんな感じで、最初でも言った3次元じゃ再現できない.....そう思ってた。


なぜならその人は....我が最愛の推しである、「もーね」だから。

確かに頭に乗ってはいないけど、それでも可愛い。

なんか天然のエフェクトがかかってるし。


っと、こんな感じで日記的なのを書いていたらすっかり6時になってしまった。

「学校やだなぁ.....」

最後に多く居たのが学校ってやな感じだなぁ.....。


「あえか、これ答えてみろ」

「はい。それは(以下略 だから、こうなりますね」

「正解だ」

はぁ....正直簡単すぎて話にならねぇ...........。

「せんせーい」

「なんだどうしたあえか」

「暇なので帰ります」

「そうか、気をつけて帰れよ」

「はいわかりました。さようなら〜」

「......え?今あいつ、帰る理由なんて言った?」

と言う先生の声が聞こえた気がしたが気のせいだろう。


はぁ.......あの監獄から脱獄することに成功。

あんなところにいたら息が詰まりすぎて窒息死しちまう。

外は何かと楽しいんだよな.......あくまで学校よりは.......って話だけどね。

「何しようかなぁ.....」

もう推しの配信見まくって人生に幕を下ろそうかなぁ?

今日は配信もないし......。

配信とか諸々のことが書いてあるあえかに向けた手紙もあるし。



「って感じで、暇なんだよ」

「いやなんで私のところに来た」

そう言ったのは、胡桃さん。

「どうせ、はなさんいないでしょ?」

「な、なんでそれを?」

「そりゃ、もーねとコラボしてるんだから当たり前でしょ」

もっと正確に言うと、何十回ももーねから言われたからだけど。

「そうだけど.......学校を抜け出すのはまずいと思うよ?」

「そうかなぁ....だって学校って息が詰まるし......」

自分がそう言うと、

「だからってねぇ..............」

「助けてくるえもん」

「誰がくるえもんだ!てか<み>どこ行った?そこはくるみもんじゃないの⁉︎」

「ツッコむとこそこ⁉︎」

そこから、胡桃さんの惚気話を聞かされて死にたくなったので、布団で丸めておいた。まぁ、もう少しはなさん帰ってくるだろうし、平気でしょう。

今日の最高気温36度だけど.......まぁいいか。

俺に惚気話を聞かせた罰だ。そこで反省してもらおう。


その数時間後に聞いた話だと、胡桃さんの家に来たはなさんが干からびている胡桃さんを発見。なんとか助かったようだ。..........ッチ。


「いやぁ、それにしても困ったなぁ....」

学校を脱出して、胡桃さんを拘束して放置したとことまではいいが、それ以降の計画は何もなかった。

闇雲に歩いても仕方ないし.....。


てか、もーねに何かバレてそうだったんだよなぁ............。

もしかして、俺がもーねにやられっぱなしなのが嫌で、もーねのプリン20個食べたのがバレとか⁉︎

やべぇどうしよ.............。

まぁいいか。もーねも自分のハーゲン食べてたし。自分の倍食べてたし。


ゲームもすることないしなぁ....無課金で世界ランク1位まで行っちゃったし......。

花札でもやろうかな.......いやいいや。流石にランク1位になってまでやることなんて...。


<〇〇〇〇の星4が2体追加!さらに今までの復刻も!>


やるしかねえぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!!


ー10連目ー

「いけぇぇえ‼︎」

そして画面に表示されたのは、持っていない推しキャラカードのパラダイス。

途中で始めたから全然持ってなかったんだよなぁ...。


ー20連目ー

「あ〜被ったぁ....」

まぁ、ガチャにはそういうのも付き物だしね。


ー30連目ー

「........」

星1しか来なかった....。


ー40、50、60連目ー

「...........」

やっと星4が1つキタァァ!!


というような感じで、回した数が4桁に突入したところで.........。


「やっと........全部揃ったぞぉぉぉぉぉぉぉぉ」

そう言って手元のスマホ画面を見ると、そこにははっきりと

推しキャラの星4が3枚、星3が3枚、星2が11枚が写っていた。

いやぁ....疲れましたなぁ....。

結構課金してしまったけど......まぁまだあるし、それは全部今まで体を貸してくれていたあえかに、ということでいいよな。


それから本当にやることがなくなってしまった。

1日、それは長いようで短い時間だったな....。

自分は昔から時間がいくらあっても足りなかった。

小説なんか書いていれば、1巻分終わった時にはすでに1ヶ月以上がすぎている。

切り抜きも終わった時には数時間以上経ってるし。

ゲームも、宿題もそう。いつの間にかたくさんの時間が過ぎている。

だからいくらあっても足りなかった。

でも、足りないと思っても本気で足りないと思うことはなかった。

.......こんなに、時間が足りないなんてな。

まだまだしたいことあったのになぁ....。

もーね達にとっては1日は貴重じゃないかもしれない。ましてや長いと感じているかもしれない。

けど俺は違う。1日が貴重であり、貴重なのに一瞬で時間が過ぎていく。

俺にとって1日なんか1時間と変わらない。

「まだ生きたい.....ってのはダメだよな」

もう決めたことなんだから。そんなことを言ってはダメだろ。覚悟が鈍る。

誰だって、生きたい。そんなの当たり前のことだろ。

自殺しようとしている人が最初から死にたいと思ってるわけがない。当然のことだ。

でも俺は生きたくてもダメなんだ。

誰かの体を使って生きるなんてさ......。

俺は俺の人生があっただろ?なんで死んだかわからないけどさ。

でもそんな、なんでか分からずに死ぬ人なんていくらでもいる。

俺だけが特別じゃない。これは俺が授かった体じゃないんだ。

あえかという少女が授かった体であり、俺が授かった体じゃない。


心残りなんていくらでもあるさ。

最も叶えたい願いといえば、もーねと付き合いたかったってことだな....。

でもそれは叶えられることはない。

俺はこの世から消えるからな。あえかが混乱しちまうしな。


って、誰に話してんだが。この癖最後まで治らなかったなぁ....小説書いてたらいつの間にか、こうなっちまったんだよなぁ....。

さてと.......思い入れのある場所に行こうか。


ー夜ー

よし。ここら辺でいいかな....。なんて思っていると、

「あえかちゃん‼︎」

と、馴染みのある声が後ろから聞こえた。振り返ると、

「もーね?それに胡桃さんとはなさん......それに蘭野部先生?どうしてここに....」

そう自分が言うと、

「君こそここで何をしているんだい?もう夜だけど」

と、先生が言った。

「いやその....夜景を」

と苦し紛れの嘘を言うが、

「嘘をつかないの」

と、はなさんに見破られてしまった。

「あえかちゃん.....じゃなくてもう1人のあえかちゃん」

「は?」

その瞬間俺の思考は停止した。

だってそれは、自分があえかではないとバレているってことだから。

「な、なんで?」

自分はそう口ずさんでいた。

「あの時....調べたからだよ」

あの時.......?いつだ?そんなバレるようなこと俺はしてな——


「もしかして.......あのとき?」

そう。あの時のもーねは確かに俺に聞いた。


ー回想ー

「そういえば、あえかちゃんって女の子なんだよね?」

そんなことをもーねが聞いてきた。

ん?どう言うこと?もしかしてバレてる...?

俺が理解できないと言うような顔をしていたのだろうか。

俺が困っているとわかったのか、もーねは発言を訂正した。

「ごめんごめん。そんなファンタジーみたいなことじゃなくてさ。トランスジェンダーみたいな感じのさ」

「あ〜なるほど」

なるほどね。確かに私の言動が言動だし。疑問に思っても仕方がないかも。

「安心して?自分は女の子だよ?」

「.....!?」

スマホをいじっていたもーねの顔が少し驚いた顔になった。


ー現在ー

「もしかして、もーねがスマホいじりながら自分が女の子かどうか聞いた時か⁉︎」

「当たり。その他にもあるけどね」

..........その他?なんなんだ一体。

でもまぁいいか。今まで付き合ってくれた彼女達には知る権利がある。

俺が何者で、どうなるのか。


さぁ......この物語に終止符エンディングを。


<あえかの記憶が消えるまで、残り2時間>

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