第48話 狂気の裏側

「そういえば、あえちゃんってはなちゃんと胡桃ちゃんが両想いって知ってたんでしょ?」

もーねがそう尋ねてきた。

「うんまぁそうだね。知ってたというか、なんとなく気づいてたってのが正しいけど。普通に、はなさんが胡桃さんのことを好きだってことは、知ってたんだけど。胡桃さんがはなさんのこと好きなのか知らなくてさ....。でもこの前の旅館で襲われた時になんとなく察したんだ」

「旅館で襲われた時?」

もーねは何のことを言っているのかわからないようだ。

「ああ、もーねには言ってなかったっけ?この前に行った旅館でもーねが寝ている時に自分襲われたんだよ」

「........ちょっと胡桃ちゃん始末してくる」

「ちょちょちょっっっと待てぇぇぇい!」

意外と大きな声でもーねを静止したつもりだが、それでももーねは止まらない。

「なんで止めるの⁉︎襲われたんでしょ」

胡桃さんのところに行こうとするもーねを必死に抑えながら言う。

「だから!その時に自分が察したところなんだよ」

「え?」

もーねがどういうこと?というような顔をする。

まぁ、今頃胡桃さんが言ってることだろうし、今言ってもいいか。

「あの時なんだけどね.....」

あの時のことを話しだした。


ー回想ー

「ちょ...ほ、ほん....とに...しゃ...洒落にならない...からぁ」

真面目に苦しい。力強すぎる....

(....)

....

「アッ....」

俺は事切れた。


ー現在ー

「ってことがあって」

あの時のことを伝えると、

「なるほど?」

と、まだよく分かっていないようだ。そんなもーねに、

「だから旅館でも俺が胡桃さんを避けたり逃げたりしていたのは、演技。そういう風にしてほしいって言われてたから」

と、説明すると、

「なるほど.....」

もーねが納得した。その後、何かを思いついたのか、自分に言ってきた。

「じゃあ、もしかしてデートも?」

自分は答えた。

「そうだよ」

その日のことを話し出した。



ー回想ー

「まぁ、じっとして待ってますか」


ー数分後ー

「お待たせ〜♡」

.......なんか怪しい気がする。

「はいあえかちゃんの飲み物♡」

()

()

()

()

()

「あ、うん。あ、ありがと」

こりゃガチでやばいかもな....一応はなさんに連絡送っとくか。

....

<メール>

はなさん。今胡桃さんの家にいるんですけど、なんか怪しいので、5分経って自分からメールが届かなかった場合、来てください。おなしゃす。 by AEK


....よし。これで俺に何か起きても大丈夫だろう。

()

()

.........飲んでみるか。

「.......あ」

視界が歪む...やっぱり罠だったか...。

......

「あは♡」

もはや狂気だな..........はい。意識を手放しまーす.....zzzzz


ー現在ー

「って感じでさ」

「送られてきたメールもそういうことだったのか」

『そうだよ』

「自分が監禁されてて余裕ぶっこいてたのは普通にガチで監禁しているわけじゃないからで、もーね達が絶対来るとわかってるからじゃないし。それもあったけどね。そして、自分が洗脳されてないのも、洗脳するフリをしていただけだし」

と、また自分はわかりやすいように説明した。

「なるほどねぇ」

「そして....」

またその先を話した。


ー回想ー

「おかしい...自分がここから運ばれてから結構時間が経つのに....なんで誰も来ないんだ...?」

「それはね♡」

「⁉︎」

い、いつの間に後ろに...。

「って、それはねって...もしかして...」

「うん♡はなにはしっかりと送らせてもらったよメッセージ」

「.......そんな....」

「それじゃまたね〜」


DM

.......よかった..思惑どうりで...。

それにしても流石に精神的に疲れてきたな...まぁ、信じるか。自分を。


ー数分後ー

「で?自分は演技を続ければいいんだよね?」

「そうだよ」

自分は胡桃さんと話していた。

「どうしてこんなことを?そろそろ話してくれてもいいですよね?」

「.....私ね...はなのことが好きなんだ」

「やっぱり?」

「あれ気づいてたの?」

「まぁ勘だけどね」

「まぁ、それでね。多分知ってると思うけど、はなも私のこと好き...みたいなんだ」

自分で言ってて恥ずかしくないのかなと思った。

「でも、自分から告白するのは恥ずかしくて...。それではなも告白してくれないから、嫉妬とか焦らせようと思ってさ」

「それで.....じゃあ、あの噂も嘘だったんですね」

「うん。まぁそうだね」

「あ、もう少しではな達が来る!それじゃ、演技よろしくね」

「OK!任せて!」


ー数分後ー

「うーん...」 

そろそろ帰りたいザマス...。

「なんだか余裕そうだねぇ♡」

「あのさぁ...急に現れるのやめて?心臓が死ぬ」

「びっくりするあえかちゃんがみたいから嫌だ」

ほんと、やってることはやばいけど、言動は優しいというか<メスガキ>なんだよなぁ...。

おかげさまで怖くないんだよなぁのこの状況。

それに、迎えはもう少しでくるし。

「なんでそんなに自信たっぷりなのかな」

「そりゃだって.....あ。どうやらその答えが後ろにあるみたいだよ?」

「後ろ?.....っ!?」

扉には、もーねとはなさんがいた。


ー現実ー

「って感じだね」

「じゃあ、それから仲良かったのも?」

「うん。演技でやったことだしね。恐怖なんて何もなかったからね」

事実、終盤遊んでてバレないか心配だったんだけど......全然バレてなくて内心爆笑してたしな...。

「あの噂って何?」

「<普通に身体関係に持って行こうとするから厳重な警戒が必須。

無防備な状態で彼女と一緒に寝ようものなら、朝にはやられていることが大体。

もうお嫁に行けないと思ったほうがいい。

所属事務所の<木漏れ日>からは、注意されまくっている。

一度、スタッフの体を壊したことで懲戒処分が下ったことがある>...って噂」

「あ〜」

「体関係に持っていこうとするってのは胡桃さんが流したデマだし、スタッフの体を壊したってのも嘘。<木漏れ日>から注意されているってのも嘘だよ」

「やっぱり?そういう事する子に思えなかったんだけどやっぱりそうなんだね」

「まぁそうだねぇ....」

(さっさと、言えばいいのにさ.....やっぱりだよ)

と、ボソッと自分は呟いた。



「ええええ⁉︎そうだったの?」

私は胡桃から事の顛末を聞かされ、驚いた。

「そうだよ?嫉妬させようとしたのにはなが全然嫉妬とかして告白とかしてくれないから....」

そうだったんだ........全く気づかなかった......。

「はなの気持ちを尊重しようと思ってて...。それにあえかちゃんにはもーね先輩がいるからね。それを邪魔しようとはしないよ」

胡桃がそう言った。

「そっか。1番胡桃のこと知ってると思ったのに.....」

なんかすごく悔しい。

「それだけ私の演技が完璧すぎたってことだね‼︎ぶい☆」

胡桃が私に向かってピースをした。

「.............で返事は.....?」

私は胡桃に返事を聞いた。

「......もちろんOKに決まってんじゃん」

その言葉を聞いた瞬間、胸が急激に熱くなるのを感じた。

「.....っ!....う、嬉しい!」

私は胡桃に抱きついた。

「私もやっと告白してくれて嬉しいよ」

2人でしばらくの間、抱き合っていた。



「そう言えば今どこに向かっているの?」

もーねがそう尋ねてきた。

「とある秘密の場所」

「?」

もーねが首を傾げている。可愛い........。

「まぁ後悔しない、いい場所だからさ」

自分がそう言うと、

「まぁ、あえちゃんがそう言うなら......」



「はいと言うことで、今回はゲストとして「アエカ」ちゃんと、「もーね」ちゃんにきてもらいましたぁ〜」

「はいどうも〜」

2人で挨拶をする。

「お2人とも今回は電話での参加とのことですが、この歩いているような音と関係あります?」

司会の人が自分達に尋ねる。

「あぁ....今七夕まつりにいましてですね....」

「あ〜なるほど〜」

「まぁでも、配信には出られるので安心してください」

「わかりました」


最近の配信....なんかぬるくないかなぁ?

確かにありがたいことではあるんだけど、外にいる自分達...ましてやいろんな雑音が混じっているのにも関わらず、OKしてくれたのは流石にいいのかなぁ....と思ったが...。そこまでしてあの2人にはくっついてもらいたいんだろうか。

だとしたら、もう成功だな。

流石に、告白してるでしょ。2人とも。


配信内容は至ってシンプルだった。

司会者が質問したりしながら会話を広げて、過去のことや未来のこと。現在のことを話したりする配信だった。

Vtuberになったきっかけとか、なってみてどうだったとか聞かれた。



「もうそろそろだよ」

胡桃がそう言った。

「疲れたぁ...」

結構歩いた気がする。けど胡桃と手を繋いで歩けてるからいくらでも歩くけど。

「そういえば、あの2人もこの会場にいるんだよね?」

胡桃が私にそう聞いてきた。

「うん。煮え切らない私たちのために変わってくれたみたい」

「そっか.....煮え切らないのはそっちもだけどね」

胡桃がそう言ったので私も、

「そうだよねぇ.......あの2人もくっつけばいいのにね」

と言った。

「そうなんだよ....でも私たちが言えることじゃないか」

私は微笑しながら言う。

「確かに、私たちもそうだったしね。少し前まで」

そう言うと、さっきの出来事を鮮明に思い出してしまい、黙ってしまった。

胡桃も思い出したみたいで、少しの間、沈黙が続く。


「そういえば、演技ってことはあえかちゃんのこと好きじゃないってことだよね?」

「いや?」

あれ?

「どどどどどういうこと?」

私は不安になった。しかし、

「確かにあえかちゃんのことは好きだよ。けど、はなほどじゃないかなぁ...」

「よ、良かったぁ....」

怖かった......もしかして告白も演技なんじゃないかって。

そこの茂みから<ドッキリ大成功>の看板を持った人たちが出てくるのかもしれない..... って思ったけど、そんなことはなかった。


配信の休憩時間に目的の場所に着いた。すると、

「あ」

自分の目線の先には.....

「あれ?2人ともどうしてここに?」

そう、胡桃さんと、はなさんだった。

「いやぁ、下見できた時にいい場所見つけたと思ってさ。今花火上がるじゃん?だから、ここで見ようってわけ」

「なるへそ...。それで?上手く行ったの?」

自分がそう言うと、2人は顔を赤くしながら、

「「....おかげさまで...」」

と言った。

「おめでとう〜.........あ、花火が始まる!」

「みんな座れ〜〜〜」

2セットあったベンチに急いで座る。


「あえちゃん」

もーねが話しかけてきた。

「どうしたの?」

「今年の七夕まつり.....楽しかったね‼︎」

......この笑顔が見れて嬉しいや。

「....うん。そうだね」


「胡桃....絶対来年も来ようね!」

はなが私にそう言ってきた。

「うん...絶対ね」

この笑顔...いつまでも守ろう。



そうして、花火が上がった音がした。

みんなが一斉にとある言葉を言った。




「「「「」」」」

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