第47話 告白したのは......

「それじゃ最初どこ行こっか?」

自分はもーねに尋ねる。

「う〜ん......金魚すくい?」

なんで疑問系なんだ......ってそういえばもーねは外国人だったな。聞いたことはあっても、やったことがないから疑問系なのか。

「OK!じゃ、金魚すくいの屋台に行こうか」

自分たちは金魚すくいの屋台に向かった。


「へぇ〜こうやって、金魚をすくえばいいのか」

もーねが店員さんの説明を受けて、ぽいを見ながらそう言った。

「まぁそうだね......でも難しいよ?」

「.........なら。勝負しようよ!」

もーねが唐突に言ってきたので自分は、

「勝負?」

もーねの言ったことを聞き返した。

「うん!勝負!どっちがたくさん金魚をお椀にの勝負!残機は、ぽい3個!」

「その勝負......乗った‼︎.........と言いたいところだけど、負けたり勝ったりした何かあるの?」

そう。もーねのことだ。絶対何かあるに決まってる。

「う〜ん.......じゃあ、勝った方の言う事を負けた方が1つ聞くで!」

「........乗ったぁ‼︎‼︎」

負けたらやばそうだが、勝ったらもーねにしてほしいことがあるんだ...だから勝つ!


まぁ、ぶっちゃけるともーねに負ける気がしない。

なぜなら、何度も金魚すくいをやっているからだ。

やったことがあるかないかで、金魚すくいは180度変わる。

ぽいの入れ方。茶碗の置き場所などなどね。

この勝負......もらった!

とはいえ、油断大敵という言葉もあるぐらいだし....。

もーねがもしかしたら天性の才能を持っている可能性もある....。


油断だけは絶対にしないようにしよう。

今は、金魚すくいだけに全身全霊で集中するしかない。


まず、金魚すくいのコツは、斜め....約35度ぐらいの角度でポイを入れる。

その時、入れる場所は、目星をつけた金魚の頭側から入れる。

そして、そっとお腹に潜り込ませてすくう。

ポイを長く水に入れすぎないようにすることも大事....。

茶碗も8割ぐらい水を入れて、水面に浮かべる。

そうすることで、金魚が入れやすくなる。

もーねはこのことを多分知らない。

だから負ける気はしないんだけど......。



ー数分後ー

しかし自分の心配とは裏腹に、もーねはまだ1匹も見つけられていない。

「心配して損した....」

もーねの残機は残り1つ。

対して俺は7匹すくい、残機はまだ3つ。

<本気>は使っていない。流石に可哀想だし.....。

すると、もーねがこっちを向いた。

「えぇぇぇ⁉︎取りすぎじゃない⁉︎」

もーねがすごく驚いている。

まぁ、自分は取れてないんだし.....当然ちゃ当然か。

まぁ、伊達に鍛えられてないからな俺は。

自分が家に小説などを作っている間に、リア友達がどんどん結婚していた。

俺と同い年だから18歳。十分結婚できる。

それに、女性は16歳から。16歳より前に交際し、16歳で結婚したために、子供持ちが結構多かったんだよなぁ....。

俺は高校に入ってから女友達も男友達も多かった。正直ほぼ全員と友達だったかもしれない。

友達になってくれる理由がよくわからなかった。

だって、顔もブサイクと言われるほどじゃないと思うが、そこまでいいというわけじゃないし、コミュ力は.....まぁぼちぼち。勉強ができたわけでもないし....。正直友達なんてできないと思ってた。だから聞いてみた。

女友達からは、

「ん?なんで友達になってくれたのかって?............いやまぁ、面白そうってのもあるけど.......やっぱりそういう目で見てこないからかな?」

「そういう目とは」

自分がそう聞くと、

「颯太って、百合が好きなんでしょ?」

「まぁ、そうだね。自分は無性愛者みたいなもんだねぇ、こっちの次元だと。2次元だったら、好きな人たくさんいるんだけどね〜。強いていうなら、レズセクシャルってとこかな?」

「だから安心なんだよねぇ〜。そういう目で絶対見てこないし、変な気も起こさないから襲われる心配もないし.....だから安心して男達のこと聞けるし」


——とのこと。

男友達も、そんな感じの理由だった。いつの間にか俺はキューピッド的な存在になっていた。

そんな過程で、みんなが結婚して子供ができた時によく世話を任されていた。

もちろん七夕まつりもだ。だから、金魚すくいは無限にやっていたため、自然と上手くなってしまった。


「このままじゃ負けちゃう....」

もーねが焦っているようだ。

少し可哀想な気もするが、手は抜かない。やってほしいことあるし。

そうして、もーねから目線を外した時だった。

「あ〜えちゃん♪」

隣から自分を呼ぶもーねの声が聞こえたかと思えば、頬に柔らかい感触が....。

擬音にすると、「ちゅ」だろうか。

「?????????????」

俺はそこで思考が停止した。

しかし、すぐに冷静になった自分は、うわやらかした....と思った。

なぜなら、もーねのお椀に7匹金魚が入っており、自分のお椀には1匹も金魚が入っていなかったからだ。

「そんなのあり?」

「私は最初に言ったよ?金魚をお椀にどれだけの勝負だって」

「....!!!」

さ、策士だ....。

やはり油断は大敵だったというわけか....。

「しかし、自分のぽいはまだ3つ。まだ取り返せる....」

そうだ。まだ、自分にはポイがある....。


しかし......。


「あ、あれ?」

ポイが破けてしまった。ま、まだいけたはずなのに....。

て、手が震えて、うまく定まらない....金魚が逃げちゃう...。

「あれ?どうしたの?調子が悪そうだねぇ?」

もーねがそう言ってくる。

こ、この悪魔がぁ....。

「まだ、ぽいは2つある....」

「どれだけお椀に入れられるかなぁ?」

「絶対勝ってやる.....」


そう息巻いたものの、結果は自分は1匹もお椀に入れられずに惨敗。終始、映像がフラッシュバックして集中できなかった。

「それじゃあ、私のお願いをひとつ聞いてもらいます」

「.......はい」

?」

そう言われた俺は2つの意味で虚しかった。

1つ目は、もーねにはやっぱりまだ過去の傷が消えてなくて、それをどうにもできないから。

2つ目は、それを守ることはできないってこと。

でも俺は、

「うん。どこにも行かないよ」

そう、言うしかできなかった。断るなんてできなかった。

「次は射的行こー‼︎」

「はいはい」

俺らは、射的屋に向かった。



「あれ欲しいぃぃ」

もーれがそう言って、見ているのは自分のぬいぐるみだ。

.........正直、取ってあげたい気持ちもあるのだが、自分自身を撃つとなると.....ちょっとね...。


それからもーねが何回か挑戦するが.......。


「と、取れない....」

ぬいぐるみに当たりはしても、落ちることはなかった。

「しゃーないなぁ....流石に自分を撃つのは気乗りしないけど、推しが困ってるんだし....」

「ほんと⁉︎」

「うん。任せて」


自分はもーねから視線を外して、ぬいぐるみを見た。

<本気>を使ってみるか。

軽い気持ちで使っていいものじゃないんだけど....推しが困ってるしな。

確かに環境が違うから多少性格は違うと思うけど、根は変わらないはず。

だからあえかもきっとOKしてくれたはずだ。ここにいたのなら。

だから俺は<本気>を使う。



.....これ落ちにくくなってるなこれ...。

けど落ちないわけじゃない。角度が確かにやばいが、何回か特定の角度で当てたら落ちるはずだ。

あとは俺のAIM力にかかってるんだけど....。

「まずは一発目」

.....結果は命中。

目標の場所に当たって、少しだけぬいぐるみが動いた。


そんな感じで、順調に命中していき......。


「あ、落ちた」

8発目で、ぬいぐるみが落ちた。

「あちゃあ〜このぬいぐるみ取られちゃったかぁ〜。うまいねお嬢ちゃん」

店員さんが私にぬいぐるみを渡しながらそう言ってくれた。

「あ、ありがとうございます」

そう言って、私はぬいぐるみを受け取った。


「いやぁ〜ありがとうね」

「まぁ、せっかく楽しい七夕まつりなのに、楽しくなかったらダメだからね」

それに......。

「このぬいぐるみ大事にするね!」

........この笑顔が見れるなら安いもんよ。



それから自分たちは、いろいろなところをまわった。

わたあめとか、りんご飴とか、焼きそばとか、かき氷とか。そういうものを食べたりした。

覚醒した俺は、射的屋で合計77命中をいう異例の数値を叩き出したりもした。

おかげさまで、すごい景品をもらってしまった。

「す、すごい景品の数だね.....」

「そうだね....」

本来なら、命中したとしても、命中=景品GETというわけじゃないから、たくさん命中させても平気だよな.....ぐらいの軽い気持ちでやっただけなのに....。

しかし、こればっかりは運なんだよなぁ....。

命中したら、その場所がそいつの適切な角度だったみたいで、どんどん落ちていく始末。やめることもできたけど、お金を払っている以上、もったいなく感じてしまって外すこともできなかった。

......もしかしたら心の奥底でもーねにいいとこ見せたくて無意識に狙ってやったって可能性もあるけど......まぁ、何もなかったし、よしとしよう。



「そういえば、金魚すくいの時、私に何お願いしようとしたの?」

「ん?」

「だって、すごく乗り気だったじゃん。だからきっと何かお願いがあるんだろうなって」

「ほんと鋭いねぇ」

「伊達に1年半一緒にいないし」

自分が微笑混じりに言う。

「それもそっか」

「で?何お願いしようとしたの?」

「えっとね....一緒にとあるコラボ配信に交代で出てくれないかな、今」

「別にいいけど......今⁉︎」

「うん。今ね。ポケットWi-Fiもあるし、配信には音声だけでいいみたいだし」

「.......もしかして2人の交代?」

「よくわかったね」

「あの2人が可哀想だしね。このお祭りを一緒に行けないってのはね」

「確かにそうだね」


ということで自分はその配信担当に連絡をした。

「あの、そういうことなんですよ....できますかね?」

そう自分が言うと、担当さんは、

「そう言うことですねぇ.....OKです!」

と言うような感じで2つ返事で許可してもらえた。



「え?他に担当が決まったから、出演をしなくても大丈夫?」

「はい。代行として2人に頼んだんですが、元々呼ぼうとしていた人達がOKしてくれたので。2人は、用事があったんですよね?」

「いやまぁ、そうですけど........」

私がそう言うと、

(楽しんできてくださいね.....七夕まつり)

と、マネちゃんが小さい声で言った。

「え?ちょ」

言っている最中に通話を切られてしまった。

...............もしかしてバレてる?

.....とりあえず、このチャンスは逃す手はないよね。胡桃にも同じ連絡いってるだろうし、支度しますか....。


ー数分後ー

「いやぁ....急遽代行がキャンセルになるとはねぇ...」

「そうだねぇ...」

私は胡桃と七夕まつりの会場を一緒に歩いていた。

屋台を楽しみたいところだが、あと数十分で花火が始まってしまう。

花火が終わった後も、2時間程度屋台は続くから、花火が終わった後にしよう。

「とりあえず、花火用の席行こうか」

「.....この前、下見に行った時にあんまり人が行かなそうな場所にベンチがあったんだよね」

胡桃がそう言ってきた。

「え?」

「いやぁ....人が多いし、静かなところでみたいじゃん?それに花火もめっちゃ見やすそうだし」

「う、うん。そこ行こっか」

私達は、胡桃が見つけたという秘密の場所へ向かった。


ー道中ー

私は向かっている最中に胡桃に話しかけた。

「あのさ...胡桃」

「ん?どうしたの?」

私はここしか言う機会がないと思った。

これを逃したら絶対に、私は言えない。

「私.....その.....胡桃が好きなの....」

私は一番言いたかった言葉であり、人生で初めてのその言葉を胡桃に伝えた。

胡桃から返ってきたのは、告白の返事でもなく、驚きでもなく、

「知ってたよ」

という一言だった。


「え?」

私はすごく驚いていた。だって、今までそんな素振り、胡桃がしたことなかったから。

でもきっと、返事はNOってことだろうなぁ....。胡桃はあえかちゃんが好きっぽいし。けれど....

「私も好きだよ。はなのこと」

私も好き?

その単語を聞いた瞬間数十秒、思考が停止した。

数十秒経って、思考が戻った後、私は胡桃に尋ねた。

「い、いつから自分が好きだってわかってたの.....?」

「そりゃ1年前ぐらいかなぁ?」

「え⁉︎」

私は驚きが止まらなかった。

「だって、出会ってまだ数ヶ月しか経ってないのに、七夕まつりに誘ってきたしね。私達、性格正反対だから普通は一緒に行かないのが普通なのに。めっちゃ食い気味だったし。よく私の近くにいるし」

「ぁ」

確かに。胡桃視点だと私が胡桃のことが好きだと言っているようなものだったのか。

「だ、だとしても。胡桃が私を好きってどういうこと?」

「いやどういうことも何も、私ははなが好きだよ?ずっとはな一筋だったよ?」

「え」

私は胡桃から衝撃の事実を伝えられた。

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