第15話 かっこいい嫁2

「ん...朝か...」

時刻は朝の8時。本来なら学校があるので相当焦らなくてはいけないが、俺は入院中だからな。まぁ、早く生活リズムを戻さないとまずいんだけど...。

「あなた達...ここ病院だというのを頭に入れて行動してください?」

看護師さんにそう言われて今気づいた。

「.....っ/////」

ある意味、今の状況を見られたのが看護師さんで良かったかもしれない。

俺ともーねの服がそこらに散らばっていたのである。ちなみにそんなことをした記憶はない。とりあえず、服を着よう....あれ??

「私の服どこだ..?」

辺りを見渡してももーねの服と俺のパジャマしかない。下のズボンがない....。

「って、ここかよ...」

横下を見ると、もーねが寝ているわけだが、ガッチリと自分のズボン持ってやがる..。

引き剥がそうとしてもすごい力で押さえつけられていて取れそうにない...。

「あの、替えのズボンもらえますか...?」

「わ、わかりました...」

看護師さんが察してくれたらしい。やっぱ世の中捨てたもんじゃないな...。


ー退院日ー

「先生、本当にありがとうございました」

「いや、人を助けるのが自分の仕事だからね」

「なんか、ラノベの主人公がいいそうなセリフですね」

他愛もない話をして帰路についた。俺は2週間ぶりに帰宅できるんだ。

「もちろん、ついていっていいよね?」

「そりゃあ、まぁもちろん」

「やったー!ついにあえかちゃんがデレてくれたー!」

「デレてないし...。てかよくそんな難しい言葉覚えたね...」

「なんかYouTubeの日本語勉強動画にあった!」

「ちょっと、その動画教えてくれるかな⁉︎」

何やら危ない動画な気がする...いや、そんなことより。

「この前の時はありがとうね」

「この前?」

「ほら、自分が寝落ちしかけてベッドから倒れそうになった時あったでしょ?」

「あ〜。その時は全然お礼とかいいよ。自分がしたくてしたわけだし」

なんでもーねはこんなにイケメンなんだ...。26歳の時にたまに見せるクール対応とかで女性視聴者の心を鷲掴みにしてたけど、その片鱗は19歳の時からあったってわけか。こりゃ女性視聴者が惚れるのも納得だわ。

「まぁでも?そのあとハメを外して大暴れして自分の服を脱がして散らかしたってのも忘れてないからね?」

「あははは...」


ー学校ー

「ねぇねぇ、あえかちゃん」

「ん?」

クラスメイトの女の子から話しかけられた。

「この前誘拐事件に遭ったのよね?」

「うんまぁ、そうだけど...」

やっぱ、そのことだよな...

「犯人の人のこと許したって聞いたんだけど、どうして?死ぬほどの大怪我も負わせられたのに...」

「うーん。ぶっちゃけると、もーねが無事なら別にいいんだよね」

ちなみにクラスの全員に自分がアエカだということを打ち明けている。後々めんどいことになりそうだし。

「それに彼は悪人じゃないよ。命令されたからやっただけ。それだけ」

「そんなものなの?」

「私たちが親から勉強しなさいと言われて勉強するように、彼は誘拐しろと言われたから誘拐していただけ」

そう。彼には人質もいたしどうしようもなかったのだ。

「それに、自分のモットーはVtuberは夢のかたまりだから」

「?」

「Vtuberってのは夢がたくさんあると思ってるんだ自分は。そしてそれを提供している。だから彼の夢、希望を妨げちゃいけない。それを提供、見せてあげるのが私らVtuberだと思ってる。もちろん、それができるのがVtuberだけとはいわないけど」

そんな感じで、自分の持論を話していく。

そうして話終わると、他愛もない話に戻る。そんなのが中学校生活というものだろう。


ー放課後ー

「はぁ...帰ったら何しよっかなぁ...」

生憎、明日が<ただいま配信>なので今日はフリーなのである。

「う〜ん。平和じゃないのも嫌だけど、平和すぎるのもなんかなぁ....」

人間というものは実におかしくできていて、争いが嫌なのに、いざ平和になると、暇で暇で平和じゃないことを求めるのだ。もちろん、絶対というわけではないが。

「まぁ、帰ったら、溜めてた百合アニメを見まくるか」

そんな感じで帰ってすることが決まったので鼻歌をしながら帰っていると、

「おっ、可愛い子いるじゃん?」

と、声がしたと思ったら、路地裏に引っ張られた。

「いたっ...」

引っ張られ、俺は尻餅をついてしまった。

「だ、誰ですか...?」

見たところ、男子高校生が3人。制服がそうだから高校生だろう。

「俺らが誰だってどうでもいいじゃん?」

は?何を言ってるんだこいつらは。名前答えてくれなきゃ後で学校に連絡できないやんけ。

「私に何の用ですか...」

「お兄さん達をいいことしないかなぁ...と思ってさ」

「そ、そんなことしないです。もう帰ってもいいですか...?」

俺は面倒なことにはなりたくなかったので、帰ろうとした。すると、

「ちょっとその反応は冷たくない?少しだけでも良いからさぁ」

と、手を掴まれた。....手を掴まれるのはまずい...。逃げらんねぇ...

「ちょっと、やめてください...」

そういいながら辺りを見渡すが、この位置は入ってきた道路からも死角になっていて見えない。...万事休すか...。まじでなんでこんな厄介ごとに巻き込まれるんだ本当に。

「ちょっと、こっち来ようか」

そう言って、行く先には謎のドアがあった。多分地下行きの扉。この扉を通ったらもう戻れない気がする...。どうっすかぁ...。俺が困っていると...

「私の連れに何してるんですかね?」

「ああ?」

そこにいたのはもーねだった。

「もーね、危ないよ?」

普通にもーねに怪我してほしくないのだが。

「先に帰ってていいよ。学校で疲れてるでしょ?子供は休んでて良いんだよ。働かなきゃいけないのは大人だから。それに私だってあえかを助けたいの。これは自分のしたいことだからOKでしょ?」

やべぇ、惚れそう。てか惚れたわ。普通は俺が言う場面なんだけどそういうこと。

「まぁ、じゃあ、任せるよ...無理はしないでね?」

俺はもーねを信じて、その場を去った。

その後、男子高校生達は改心したらしい。次の日に謝りに来た。もーねがどんな方法を使ったのか知りたくないと言えば嘘だけど、聞かないでおくことにした。なんか怖かったから。


かっこいい嫁とか聞いてないんだよなぁ....

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