第7話 友人のモデラー
一難去ってまた一難、とはよく言ったものだ。
まず、この不可思議な転生が始まりだった。慣れない生活に慣れ始めたら、今度は推しと会うし、初潮がきたし、第二次性徴期が終わってるし、自分がぶっ倒れた理由が自分の脳の状態が一般の人と違うって話だったし。
そんな俺に当然のようにまた災難が降りかかっていた。
「Live2Dになって」というコメントが増えてきていたんだ。Vtuberにとって、Live2Dはとてつもない武器というか必需品だ。
表情があることで、より感情が伝わるから。
「ということなんだけどさぁ」
『ということなんだけどさぁ、と言われても』
もーねに相談してみたが、私にどうしろと?みたいな顔をされてしまった。
また、一から俺がしてもいいんだけど、ぶっ倒れるのはごめんだし、何より先生に止められてるからなぁ。最悪植物人間とか嫌なんだけど。推しが認識できなくなる植物とか.....死刑に等しい。
「うーん.......」
俺は悩んでいて前を見ていなかったんだ。そしたら、
ドン‼︎ と、女性にぶつかってしまった。
「あ、ご、ごめんなさい。怪我はありませんか?」
「い、いえこちらこそ...」
「⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎」
顔を上げた俺は絶句した。なぜならそれは、《転生する前の友人》だったからだ。
「私の顔に何か?」
「いえ、なんでもないです...」
ついうっかり、名前を呼びそうになった。あぶねー。こっちの世界では初対面なんだしな。
「って、もしかしてアエカちゃん?」
「ナ、ナンノコトデショウカ?」
......また、俺は誘拐されてしまった......ほんと俺って災難多すぎないか...?
はぁぁぁぁぁ...。俺はバカだった。普通に忘れていた。それは友人はロリコンだってことだ。...まぁ、流石に悪いやつじゃないし大丈夫だよな...?
「えっと、家に連れてきちゃって悪いね...」
「あっ、いえ全然...」
全然あるけどね。
「あの、それでなんで私をここに?」
これで興奮したからとか、写真を撮りたいからとか、一緒に寝たいからとか言い出したら、目潰しをしてやる....。けれど、心配は要らなかった。
「いや、アエカちゃんが配信でモデラーを探してるっぽかったから」
やっぱりこいつはするどいな。けど......こいつの名前が思い出せない。転生した代償なのか?全く思い出せない。
「あ、はい。自分をモデリングしてくれるモデラーさんを探してて」
「やっぱり‼︎それならさ!私に任せてくれない?」
あれ?こいつってモデリングできたっけ?...まさか名前以外の記憶も抜け落ちてるのか?それとも似ているだけで俺の知っている世界とは若干違うのか?...今はそんなことより...
「いいんですか!?」
こいつは器用だからな。だからそういうことに関しては普通に期待できる。
「うん!推しの役に立てるとかファンして本望だよ」
友達に推しって言われるってなんか複雑な気持ちだなぁ...
.......ん?...................私の薄い本が彼女の机にあるのを見つけた。うん、まぁ。そういうこともあるよね。うん...触れないでおこう。実際俺もそういうの持ってたし。
何はともあれ、モデラーの人も見つけられたし結果オーライなのでは?
「ということで他のモデラーさんにはごめんだけど、そういうことだから。出来次第体を動かしてみるからね〜」
その時、電話が鳴った。
「ちょっと電話が.....ってもーねから?」
→嫁からきた感じ?
→この前の痴話喧嘩から仲直りしたのか?
→『旦那としての威厳を見せる時』
『いや、旦那じゃねぇから!?』
ツッコミを入れつつも電話に出る
「えっと、もーねどうしたの?」
なぜかビデオ通話になっている....いや、忘れているだけだなきっと。
『いや、モデラーさんが見つかったってマネちゃんから聞いてお祝いにと...』
『そっか。ありがと』
ん?もーねの机の上にあるのは.......!!
『もーね...』
『な、なに?」
『友達の薄い本を何冊も買ってんじゃねぇぇぇぇぇぇぇ‼︎‼︎‼︎‼︎』
そう、机に上にあったのは、俺の薄い本10冊ぐらいだった。
その日、アエカの薄い本がトレンド入りし、たくさん切り抜かれた。
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