監獄実験進行中

「ねえご主人様。」

昼休みに机でぼーっとしてたら、机の下からひょっこりと顔を出してきた。


「学校でその呼び方やめろ。命令。」

「わかったわ、雫ちゃん。」

ナチュラルに名前呼びに移行するな。そんなに距離を詰めた覚えはない。


「それもダメ。姉川でいいじゃん。」


「そんな、せっかくのかわいい名前なのに。いや、苗字も素敵よ。あなたの可愛らしさを十分に表していると思うわ。」


ぽっと出のど変態に私のかわいさを理解されたくはないかな。


でも名前を褒められるのは素直に嬉しい。


「…じゃあしずくでいいよ…」

「やった。何か命令ないのかしら。学校だからこその刺激的なやつとか。」

安定の嫌な予感だ。私はこいつの命令をしろという命令に強く逆らうことができない。


昨日、彼女の家のパソコンで、一言一句スキャンされた私の黒歴史ノートを見せつけられた。彼女の機嫌を損ねると、ワンクリックで全世界に拡散されうる。


「たとえば、パンツを脱いで授業受けるとか、トイレで***…」

おおよそ公共の場で口にしていいラインを遥かに超越したワードを普通に発言する。


「流石にそれは引くわ。あんたってずっとそんなこと考えてるわけ?」


「ううん、今は、雫ちゃんかわいいなとしか。」


…よくそんなことを平気で言えるな。急にそんなことを笑顔で言われると流石に照れる。

こいつ、普通に美人だし余計に照れる。

不意に彼女の胸に目がいく。


男子どもは藤原を妄想の中で好き勝手しているのだろう。ただし、藤原は男子どもの想像以上に脳内でやばいことをしている。いや、されているはずだ。私に…


「おっぱい見過ぎでしょ。」

珍しくまともなことを言ってる。


「でかいなと思って。」

「雫ちゃんの好きにしていいんだよ?」

すかさず食い気味で言ってくる。テンプレがすぎる上にテンポ良すぎ。この流れ用意してただろ。


チャイムがなって、彼女は自分の席に戻っていく。




帰りのホームルームにて。今日は席替えらしい。くじを引いて、当たった場所に座る。

「雫ちゃん、お隣よろしくね。」

当たり前のように藤原が隣にいた。こいつ…もしかして担任を買収した?あの家のデカさなら、それもあり得ると邪推する。


翌日。当たり前だが、藤原が隣で授業を受けている。彼女は優等生なので、真面目に授業を聞いているのだろうと思って、チラッっと見てみる。


消しゴムのお尻の部分を指で押してジャンプさせて遊んでいた。アホか。

真面目そうな顔をして、本当はバカなのでは?

「あっ、」


言わんこっちゃない。

藤原の消しゴムが私の足元に転がってきた。

しょうがないので拾ってやって、先生にバレないようにこっそり渡す。


「ありがとう!雫ちゃん大好き!」


彼女は満開の笑みで言った。こうして素直にお礼を言われるとちょっと照れる。

…無駄に顔がいいし。

でも、授業中なのにそこそこ大きな声で言うのはやめてくれ。一瞬授業が止まってめちゃくちゃ気まずい。



彼女の横顔を見る。

ドMなのを除けばただの美少女なんだよな。


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