第37話 チフユの思い


 冬の到来に迎えて色々と支度していたが。

「なめてたなー、ここまで酷いんだ」

 窓の外は雪で真っ白になっている。

「さむーい!これまじで!」

 ダウンジャケットを着たアカネもこれはアウトらしい。

「ここが一番じゃ」

 コタツムリになっているミルスはほっといて、エアコンを最大にするが部屋がデカすぎるのが仇となったか。


 エアコンの二台目を作って置いてみる。

 一台目の前にシータ。二台目の前にチフユが陣取っている。

 これじゃ意味がないのでこたつをもう一台作ってみるとコタツムリアカネが出来上がった。

「お前たちは少し我慢を覚えた方がいいぞ?」

「だって冷蔵庫の中にいるみたいだもん!」

「隙間があるんです!」

「そこから風が」

「なら早く言って!」

 隙間を埋めると今度は暑くなってきた。

 エアコンを一台にしてなんとか快適な温度になったようだ。


「こんなに寒くなるとは思わなかった」

「だね」

「にほんは寒くないのか?」

「温暖化で寒いは寒いけどここまではないかな」

「なら、にほんに行くのじゃ!」

「別にもう寒くないだろ?」

「うん、寒くはない」

 あとこれだけ雪が積もってたら流石にダンジョンはお休みだ。


 お菓子を食べながらトランプでゲームをやっている四人を放置して、一人で日本に帰る。

 チラシが多いな。

 玄関のポストからチラシなんかを抜いておく。

 一応住んでますと言う痕跡が残る様にしておかないといけないよな。


 あとは部屋の換気をして、外に出る。

 車を出してスーパーに行き、冬の定番のミカンなどを大量買いして戻る。

 部屋に戻って鍵を閉め、異世界に戻るとまだ下でワイワイやっているので差し入れにミカンを持って行く。


「あ、日本に帰ってたの?」

「あぁ、換気したりしてきたついでに買ってきた」

「ミカン好きなんですよ」

「好きなだけ食べると良いさ」

「果物じゃな」

 剥いてやるとミルスが気に入ったらしく、黙々と食べて指を黄色くしている。


「こんど帰るときには言ってよね?」

「何か用事があるのか?」

「女には色々あるの!」

「わかったよ」

 生理用品とかか?まぁ、連れて行くしかないか。


「今から行くか?」

「え。いいの?」

「まあ。アカネだけだろ?」

「うん」

「ならいくか」

 また日本に逆戻り、そして買い出しに行くと薬局にいく。

「痛み止めとか買っとかないと」

「あぁ。辛いっていうもんな」


 ほかにもたくさん買い込んできた。

 そんなにいるのか?

 あとはアイスを補充して、異世界に帰ると、こんどはチフユが行きたいと言い出した。

「分かったよ」

「ありがとうございます」

 日本に帰ると、

「わ、私とデートしてくれませんか?」


 買い物ではなくてデートがしたかったらしく車で海までドライブだ。


 海は綺麗で夕焼けに染まっていた。

「わたし、イチヤさんの事が好きです」

「俺もだよ」

「やっと言えた」

 涙を拭ってキスをした。

 今夜は日本で泊まることにした。

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