第27話 一夜


 そして五階層には扉があった。

「この扉、ボスかな?」

「可能性は高いな」

 扉を開けると灰色のトロールではなく緑色のトロールがいた。

ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・

ハイトロール レベル56

トロールより俊敏に動ける。強い戦士。

ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・


「トロールより速いそうです!」

「分かったよ!みんなも気をつけて!」

「はい!キャア!」

 シータが体当たりを喰らったみたいだ。

「シータ!大丈夫か?」

「これくらいなら平気です!」

「よし、ウォォオォォ!」

 回り込んで首を切ろうとするが避けられる。逆に持っている棍棒で腹をなく殴られる。

「イチヤ!」

「イチヤさん」

「大丈夫!甘く見てたよ!」

「本気でかかってよね!」

「転移」

 転移で首を斬ればすぐに倒れるハイトロール。

「本気出したらすぐ終わるから」

「転移はずるよ!」

「まったく出番がなかったのじゃ」

「宝箱がありますよ」

「何!我が開けるのじゃ」

「罠はないわよ」

 ミルスが開けると古代魔法の魔導書がでて来た。

「んー、可愛くないのじゃ」

「しょうがないだろ?これは預かっておくよ」

 

 その場に下に行く階段とクリスタルが出て来た。どうやら触ると一階層に転移出来るらしい。

「気持ち悪いのじゃー!」

“チュドーン”

 魔法と言っていたがこうみればガンナーだなぁ。

 いったん六階層を見てから先に進むか決めようと思ったが、ここででてくるのはポイズンフロッグ、気持ち悪くてミルスが見つけ次第魔法で倒している。

「く!気持ち悪いのじゃ」

「しょうがないよ」

 ドロップはカエルの肉と毒腺と皮と魔石だった。


 カエルの肉は美味いって言うけど毒ガエルだしな。まぁ毒腺があるから大丈夫か?

「持って帰ってみるか」

「えぇー!!」

「いや、アイテムボックスに入れるだけだしな」

「うへぇ」

 そんなに嫌なのか。

 ミルスの一撃必殺でカエルはドロップ品に変わる。

 あ、

「あ!宝箱!」

「待って罠があるわよ、罠解除」

「もういいのじゃ?」

「いいわよ」

 開けると魔剣ディテクターと言うのが入っていた。

「これはイチヤじゃな」

「そうね」

 まぁ、魔剣だしなんかかっこいいからいいか。


 七階層は大きめのスケルトン?にしてはデカいな。

「魔剣でも使ってみるか!」

 一振りで三回攻撃する様で振り回すだけでスケルトンは粉微塵になって消えていった。

 流石魔剣。

「あ、指輪がドロップしてる」

「鑑定で守りの指輪だって!」

「誰がつける?」

「チフユでいいんじゃないか?この中で一番レベル低いし」

「んじゃチフユで決まりー」

「あ、ありがとうございます」

 チフユは遠慮しながらつける。

 あとのドロップは剣に骨、魔石だ。


「そろそろ帰るか?」

「だね、もういい時間だし」

 腕時計を見ながらアカネがいう。

 五階層まで上がりそこからクリスタルで外に出る。

 転移で街まで行くと、俺は動悸と息切れで倒れそうになるが頑張って門を潜る。


「顔色悪いのじゃ」

「転移がまだ慣れてなくてな」

 いつになったらなれるのだろう。

「まずはギルドからだな」

 ギルドに行くといつも以上に人がいる?

 受付のお姉さんに聞くとダンジョン目当ての冒険者達らしい。

 隣の解体場で買取を頼む。

「おほー、ダンジョン産のドロップアイテムはきれいだぜ!これは買い取ってオッケーなんだよな?」

「全部買取で」

 結構な金になるな。


「よし、帰ろうか」

「ちょい待ち!あんたダンジョン行ってたんだろ?どんな感じだ?」

 俺はまぁ大体のことを喋ると、冒険者どもはテンションMAXで、今からでも行こうとしている。

「あんがとな」

 金貨を貰い家に帰る。

 正直絡まれるのかと思ったよ。


 そろそろ二人の気持ちに答えてやらないとなぁ、と思っている。

 正直言って日本に帰る気がなくなってしまったのとアピールが酷くなって来たこと。

 まぁ俺も男だからそこらへんは処理して来たけど、我慢の限界も近い。

「あ、イチヤから」

「なんで、あ、あー」


 まぁ一線を超えたってやつだな。

 さらにベタベタが激しくなった気もするが、まぁ今更だろう。

「よーやくしちゃったみたいだねー」

「うっせー」

「よくやったよ!」

「うっせー」

「家に響くから静かにね」

「う、うっせー」


 チフユは顔を真っ赤にしていた。

 しょーがない、日本に帰るのを諦めたんだし責任は取る。

 

 閑話休題それはさておき


 今日も今日とてダンジョン日和だ。

「行くぞダンジョン」

「今日は休ませてもらえんじゃろか?」

「どうした?」

「主が激しすぎるんじゃ」

「私も」

 顔が熱くなる。

「分かったよ、今日は休みで」

「いやったー」

「最近ダンジョンばっかりでしたからね」

「そうだな、たまには休みもいいかもな」


 あー恥ずかしい。俺も買い物でもするか?いや魔術書を読もうか。


 結局家からは出ずに魔導書を読んでいた。

 かと思えば下で女子トークが聞こえてくる。そこまで言ったらダメでしょうが!って言っても聞かないんだよな。


「シータとミルスはいいよなぁ。ようやく結ばれて」

「アカネはおらんのか?」

「こっちにそんないい物件ないでしょ?」

「チフユは?」

「わ、私はイチヤさんしかまだ知りませんし」

「お、チフユもイチヤ狙いか?まぁ一番いいのはイチヤなんだよねー」

「一夜はすごかったぞ」

「どうすごかったのよ!」

「それは言えぬ」

「ぬーー」

「だめー」

「シータは惚けてるし、ミルスしか聞けないのに!」

「我と旦那様の秘密じゃ」

 やめてくれ。そういうのはカフェとか言ってやってくれ。俺は家にいるんだぞ。


 そうだ、俺が出ていけば。

「転移」

 日本に逃げて来た。一人ならもんだいないのだが。これが四人になるとどうなるかだな?


 久しぶりに家のソファにすわり古代魔法の魔導書を読む。

 まったりとした時間が過ぎていく。


 気付くとそとは夕焼けに変わっており時間が経つのが早く感じたが魔導書は読み終えた。さぁ、そろそろ帰ろう。


「転移」


「うわぁ!」

「俺の部屋で何やってんだよ?」

「い、いやこれは」

「俺はお前たちの話が丸聞こえだったから転移してただけだぞ」

「失礼しましたぁー!」

「なんだあいつは?」

 アカネは顔を真っ赤にして出て行った。


「はぁ、だから我慢してたのに。まぁやっちゃったもんはしょうがないか」

 いまさら取り返しがつかないので気にしないことにした。


「明日はダンジョン行くぞ?」

「ラジャ」

「はい!」

「大丈夫かのぉ」

「またあんな……」

「そんなこと言ってるともうやんないからな」

「まぁ!そんな事いっちゃうんですか?」

「そうじゃ!ワシらは遊びなのか?」

「遊びじゃないが次の日に支障をきたすくらいならやれないだろ?」

「大丈夫です。わたしは」

「ワシも大丈夫なのじゃ」

 ……もう好きにしてくれ。

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