第22話 転移


 転移を取って分かったことがある。地球にも帰れると言うこと。

 さてどうしようか?

 このまま帰るか?

「で?どうなの?」

「帰ることはできる」

「じゃあ」

「でも迷ってる」

 帰って来れなくなるかもしれない。

「じゃあ、全員で」

「それこそ無理だ、今の俺にそんな力はない」

「じゃあ、」

「少し一人で考えさせてくれ」

「…分かった」

 帰るにしても今の俺じゃ一人が限界だ。それは分かる。帰ってからの金もないし、服もこれじゃだめだな。

 そして死んでいたら。

 それが一番怖い。

 帰れると思ったら急にいろんなことが頭に浮かんで怖気付いてしまった。

“バンッ”

「らしくないわね!これ!私の名前」

 その紙には立花茜と書いてある。

「調べて来てよ!」

「わ、私も」

 こちらの紙には神谷千冬と書いてあった。

「あっちに行って調べて来てよ」

 アカネはそう言って部屋から出て行った。

 チフユは、

「一緒に帰れないのは残念ですが、せっかく転移を取ったんだし、使ってみればいいと思います」

 と言い部屋から出て行った。


 うーむ、やってみるか?

 二人の所在も確認しなきゃだしなぁ。

 その前に、金になる物持ってかないとな。

「買い物行ってくるよ」

「何買うのー?」

「金か宝石」

「あぁ、お金にするためね」

「そう、無一文だと困るからなぁ」

 俺は金と宝石を買って帰って来た。


「本当にいくのじゃな」

「帰って来ますよね?」

「当たり前じゃないか!」


「じゃあまたね」

「帰ってきてよね」

「絶対じゃぞ」

「あぁ、転移」



「ここは?あれ?俺は?」

 服はボロボロになっていて、来ているのがやっとの感じだ。

 渓流に一人キャンプしに来てたんだっけ?

「この紙は?立花茜と神谷千冬?」

 頭の片隅に何かがあるが、思い出せない。

 っと車車と、キャンピングカーに戻ると汚れが酷かった。

「あれ?なんでだ?」

 バッテリーとか大丈夫か?

「な、なんとかエンジンはついたな」

 最近買ったばかりの軽キャンピングカーだからな!

「えーと、えぇ!二ヶ月近くたってる?」

 ナビを見てビックリしてスマホを出すと会社から鬼の様に電話が鳴っていた。最後に留守電でクビだと言われた。

「そりゃ二ヶ月も音信不通だとクビだよな」

 とりあえず家まで帰るか、車を飛ばして家であるアパートに帰るとポストは満杯で、解雇通告があった。


「はぁ、なんでこんなことに?」

 家に上がると埃臭くて窓を開けて換気をする。

「わかんないなぁ?なんで二ヶ月も経ってるんだ?それにこの紙は?」

 聞いたことある名前だけど、だれだったかな?

 スマホには名前入ってない。


 コーヒーを淹れて椅子に座りパソコンを立ち上げる。二ヶ月前に何があったんだ?

 色々と調べて行っても分からないので立花茜を調べると、

「行方不明?修学旅行中にバスが転落、死傷者三十六名中一人行方不明か」

 こんどは神谷千冬を検索する。

 こちらは学校のいじめで自殺。一命を取り留めたがその後神隠しにでもあった様に行方不明になっているらしい。


 どちらも同じ年月日で二人ともいなくなってる。俺も同じ日だな。


 コーヒーを飲み干し、食べ物を探すがないのでスーパーに買い物に行く。ついでにATMで金を引き落とす。

「やばいよなぁ。会社もクビになったし、俺は何やってんだろ?」


 買い物も終わり洗車をしてガソリンを入れる。ぼーっとしながらも運転はちゃんとして家に着くと。

 何か忘れてる気がする。


 それよりもこれからどうするよ?金もそこまでまたねぇぞ?明日から職探ししないとな。

 風呂に入りに行くと自分が少し若返ってる様な気がする。

「俺の髪長すぎじゃねぇ?」

 前髪が顎まで届いている。

 しかもどこかしら怪我をしたあとが残ってる。こんな傷だらけじゃなかったはずなのに筋肉質にもなってるし。

「??なんで?」

 分からないので髪を洗い、髭を剃り、湯船に浸かる。

「はぁー、久しぶりの風呂だなぁ」

 って言ったが久しぶりの気がするだけだ。

「なんか違和感があるんだよな?」

 テレビをつけるとバラエティー番組を流したままパソコンで、もう一度立花茜を検索する。画像を検索してみる。


 画像にあるのは間違いない、アカネだ。

「俺はなんで忘れてたんだ?」

 チフユもアカネも行方不明になっているだけだ。


「ステータス」

 ステータスもちゃんと出る。

 よし、これをコピーして見せればいいか!あとはあいつらが喜びそうな物をとりあえず買ってくればいいか!

 お菓子やジュースなどを大量に買って帰る支度をする。あとは髪も切りに行く。

サッパリしてからみんなに会いに行こう。


「さぁ異世界に帰るぞ」

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