第18話 デート2


 クーラーのおかげでこの暑い夏を乗り切れそうだが、この前の朝帰りからベタベタが激しくなっている。

「おはよう二人とも、暑いのだが」

「おはようございます。んーチュッ」

「おはようなのじゃ。チュッチュチュ」

 んー、ウザい。


「なー!二人ともなんなんだよ!この前はちゃんと説明して納得してくれただろ?」

“シャッ”

「な、なんだミルス?」

「求愛のポーズ」

「やめろ!」

「そろそろ童貞を卒業したくなーる!」

「ならねーよ!てか童貞じゃねーし!」

 童貞だけど、

「いーや、童貞の貴方への求愛のダンス」

「やめーい!」

 シータもミルスもなんなんだよ!

 

 下に降りていく、アカネがコーヒーを飲んでいるので隣に座る。

「イチヤもそろそろ受け入れたら?見てて辛いわよ?」

「受けてる方が万倍ツラいよ」

 アカネは分かってない。

「指輪でも買ってあげたら喜ぶんじゃない?」

「指輪かぁ、考えなくもないな」

「なら買いに連れて行きなさい!デートの一つでもしたら気がおさまるわよ」

 そうかな?そうかもな。


「シータ、ミルス、デートする?」

「「する!!」」

 即答のミルスとシータ。

「おおう!」

「着替えなきゃ!」

「我も!」

 これはこれで可愛いと思うんだけどな。


 着替えて来たシータは綺麗め系でミルスは可愛いらしい。

「二人とも素敵だね」

「えへへ」

「いやんなのじゃ」

「じゃあ行こうか?」

「「はい」」


 王都の街をブラブラするのはなかったなぁ。

「どこに行くのじゃ?」

「んー、なーいしょ!でも行きたいところがあったら言ってね」

「じゃーここ!」

 下着売り場かよ!

「最初から?」

「ダメですか?」

「いいよ」

「やったぁー」

 選ばされても困るので外で待ってると言ってもダメだった。


「いやん、これですか?」

「…いや俺は何も」

「じゃあこっち?」

「ノーコメント」

「両方買いますね」

 なんだよ!買うのかよ!

「わしのはこれ?」

「こっちでよくないか?」

「いでっ!」

 女児用下着を指差したら蹴られた。

“カプッ”

 腕を噛まれ、大人ミルスになりやがった。でも大人ミルスになっても破れないなんて、あの服伸びるんだなー。

「どれがいいんじゃ?ん?」

「なー、大人になりやがって」

「これかな?それともこれかな?」

「じゃーこっち!」

「もー、ちゃんと見てなのじゃ」

「み、見てるよ」

「そうか!じゃー買ってくるぞ」



 ようやく下着売り場から脱出したら、今度はオシャレなカフェでゆっくり…出来ねぇ!

「アーンなのじゃ」

「アーム」

「次こっち!」

「アーン」 

「アーム」

 ケーキセットを頼んだのはいいけど自分達で食べろよ!美味いけど!

 俺はコーヒーだけでいいから。


 暑いのに腕を組んで歩く。ミルスは子供に戻ってるから手を繋いで、次は服屋か、

「これとこれどっちがいいですか?」

「んー、こっち?」

「んー、こっちもいいですがこっちも捨てがたい…両方買って来ます」

 さっきと一緒じゃねーかよ!

「カプッ」

 あっ!

「さてと、これでいいのじゃ、こっちとこっちどっちが似合う?」

「両方とも似合うんじゃねーか?」

「そうか!じゃぁ両方買ってくるのじゃ」

 また大人ミルスになるのは勘弁だよ。

 

 さらに買い物が続き、ヘトヘトになった俺はやっと宝石屋に辿り着いた。

「指輪買ってやるから選んでいいよ」

「……」

「……」

「ぇっ!だめなの?」

「嬉しい」

「嬉しいのじゃ」

 二人に抱きつかれて両手に花?


 シータは髪と一緒のエメラルドのついたシンプルな指輪、ミルスはダイヤモンドのついた可愛い指輪にした。


 右手の薬指に嵌めると恋人らしいので二人にはめてあげると喜んでいるようで良かった。

 もう夕暮れ時、大通りを歩く俺たちはどう見えてるのかな?カップル?子供姿のミルスがいるから夫婦かな?

“カプッ”

「こらっ!」

「だってずるいんじゃもん、これなら二人とも恋人に見えるのじゃ」

 まぁそれはそうだけど、血を抜かれすぎる可能性があるんだが?



 その後はアカネと合流して晩飯を食いに行く。いつもの倍以上に機嫌のいい二人はよく食べるなぁ。そんなことを思いながら二人を見てる。


 二人の薬指は輝いていた。

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