第17話 クーラー


「あっついなぁー」

「暑いのじゃ」

 とろけヴァンパイヤが出来ている。

 エアコンはないのか?

「この世界にエアコンはないのか?」

「エアコンとはなんじゃ?」

 ないのかよ。

「いつもはどうしてたんだ?」

「爺やが氷魔法で氷を作って涼んでおった」

 氷魔法があるのか。

「暑いよー」

「今日は特に暑いですね」

 アカネもシータもかなり薄着で際どい。

「お前らなんて格好してんだよ」

「暑くて死にそうなんだもん」

「あは、赤くなってるイチヤは可愛いですね」

 いや、自分達の格好をちゃんと見ろよ!


「あ、タクヤにお願いしにいってくるわ!」

「あぁ、あのロン毛に?」

「エアコンくらい作れるだろ?」


「と言うわけで来たんだ」

 地下室は涼しかった。

「何がと言うわけなのか知らないけどエアコンね?面白そうだね」

 タクヤは長い髪を縛ってまだバイクをいじっている。

「だろ?作れるか?」

「箱さえあれば多分大丈夫だけど」

「俺が調達してくるよ!」

「お願いね」

 

 街の鍛冶屋にやってきた。

「こんちわー!」

「なんじゃ!この暑い中こんなとこ来て?」

 鍛冶屋は半端なく暑い。そんな中で作業しているのはこれぞドワーフといった感じの髭もじゃのおっさん。

「このこう言う箱を作って欲しいんです!」

「なんじゃ、こんな箱ならいくらでも作ってやるけど」

「出来ればここにこう言う羽もつけて欲しいんですが?」

「おう。何に使うか知らねえが簡単な仕事だな」

「とりあえず五個は欲しいんです」

「分かった!ちょっと待ってな!」

“カンカン”とリズムに乗った音が聞こえてくる。

 あまり時間もかからずに出来た。

「これをあと三十くらい作って貰えますか?」

「分かった、とりあえず今の代金は五万ゼルな!」

「はい!わかりました。よろしくお願いします」


 また地下室に行くとひんやりした風が吹き抜ける。

「タクヤ!作って来たぞ!」

「早かったね。たぶん氷魔法と風魔法の付与と錬金術でできると思うよ」

「ほんとか!とりあえずクーラーだな!」

 タクヤが一個完成させると試しに動かしてみる。

「涼しいぃー!」

「あははは、外はそんなに暑いのかい?」

「凄い暑いよ!干からびちまう」

 とりあえずあと四台作ってもらった!

「ありがとうタクヤ!これ売れるから外側の箱はまた持ってくるよ!」

「あはは、ちょうど僕も少しくらい稼ぎたいと思ってたところだから渡りに船だよ」

「じゃあ、また持ってくるな!」


 とりあえずは家と鍛冶屋だな!

 鍛冶屋に持って行って取り付けると、

「おぉ!こりゃいいなぁ!これを作ってるわけか!もっといるか?」

「できるだけ多くていいよ」

「分かった!とりあえず三十な!」

 三十台のクーラーの外側がもう出来ていた。

「もう出来たの?」

「こんなもん朝飯前だ!」

「なら百台お願いします」

「置くとこがねえからちょっとづつ取りにこいよ!」

「はい!」


 次は家だ!

「ただいま!作ってもらって来たよ!」

 四台を各部屋に設置する。

「あぁー、涼しい!」

「これは天国じゃ!」

「だろ!俺、今からまたいってくるから!」

「頑張って下さいね」

「おう!」

 また鍛冶屋に寄って三十台アイテムボックスに入れる。


 それをタクヤに渡して作ってもらう。

「これいくらくらいで売れるかな?」

「どうしようか?箱代は一個一万ゼルだぞ」

「それを加味して」

「一個三十万ゼルで売ってくるわ!」

「ボッタクリ過ぎじゃないか?」

「暑さには敵わないと思うよ?まずは王様に献上だね」

「あぁ、それなら僕も行くよ」

 二人で謁見の間にやってくる。

「本当に暑いね」

「だろ?」


「して、この度はどうしたのだ?」

「はい!このクーラーと言うものを作ったので、献上しようと思って」

「何?クーラーとは?」

「失礼してつけさせてもらいます」

 謁見の間に涼しい風が吹いて、皆が驚いている。

「このように涼しい風がでる魔道具になります」

 タクヤが言うには魔道具と言うらしい。

「こ、これは何台あるのじゃ?」

「いまは五十九台ありますが、三十万ゼルで売りに出そうと思ってます」

「買う!買うからわしの部屋につけてくれ!」

「わかりました!」


 次から次に注文が入り、執務室や王城全てにクーラーがとりつけられた。

 俺は鍛冶屋に追加で注文して、まずは騎士団の団長にいつものお返しにつけてあげた。

 そして、

「ダイスケ!大丈夫か!」

「無理!痩せてしまった」

 そこには蕩けダイスケがいた。

「今、クーラーつけてやるからな!」

「あ、ありがとー」

 ダイスケは復活して痩せた分を食べると意気込んでいた。


 薔薇園のサクヤは大丈夫そうだけど、部屋にクーラーをつけてやる。

「まぁ、ありがとぉ、お礼に」

「要らない!」

 逃げるように出て来た。


 あとは街の店なんかに置いておくと客足が増えるだろう。

 クーラーは飛ぶように売れた!俺たちが追いつかないほどだ!貴族にも売れて、鍛冶屋もタクヤもクタクタになるまで働いた。もちろん俺もクタクタだ。

 そのおかげで儲けた金は折半して、俺は大金持ちになってしまった。

「頑張った甲斐があったね」

「だな!こんなに儲かるとは思わなかったぜ」

 タクヤと二人で飲みに来た、鍛冶屋のオッサンはドワーフ仲間を引き連れて後で合流する。

「「カンパーイ」」

 キンキンに冷えてやがるぜ!

 もちろんこの店もクーラーが効いている。


「僕のポイントは錬金術と付与術、あとは魔法に全振りしたからここでこんな稼ぎ方ができて嬉しいよ」

「タクヤが生産職っていってたから多分そうなんだろうと思ってさ!よかったよ!」

「バイクを作りたかったからね、まだ時間がかかりそうだけどね」

「魔導バイクってかんじかな?なら後から来る鍛冶屋のおっちゃんにパーツ頼めばいいんじゃないか?」

「それいいね!」

 後から来たおっちゃんとタクヤは仲良くなり、一晩中飲み明かしたのだった。



「あらあらイチヤは朝帰りですか?」

「なんで我々がおるのに!」

 帰ったらお小言が始まってしまった。

 二人とも起きて待ってたらしい。

「いや。これはタクヤ達と飲み明かして」

「それならそうと連絡くらいしたらどうですか?」

「はい!」

 シータとミルスに怒られて肝が冷えた。

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