第14話 東の森


 朝起きると動けなかった?と言うよりも、

「ミルス、シータ、動けないんだが?」

「おはようございます旦那様」

「誰が誰の旦那なのじゃ!イチヤは我と結婚するのじゃ」

「いえ、私とが先です!」

「いーや、我とじゃ!」

「二人とも退いてくれるか?」

 朝から大変だな。

「シータも大人気ないぞ?相手は子供だ」

「我はもう236歳なのじゃ!」

「は?その身体で?」

「そうじゃ!血さえ飲めば普通の体に戻るのじゃ!カプッ」

 俺の腕に噛み付くミルス。

「痛っくないな」

「プハっ!どうじゃ!我の姿は?」

 そこには白銀の髪を持つナイスバディのお姉さんがいた。

「どうじゃイチヤ!この体で満足させるのじゃ」

 紅い瞳に吸い込まれそうになると、短剣が突き刺さる!

「私のイチヤに何してるんですか?」

「おおおおお、お主!刺さるところじゃったぞ」

「イチヤは私のです!」

「怖っわ、分かったのじゃ。我は第二でいいのじゃ!」

「ふぅ、わかったならいいでしょう」

 おうふ、俺の鼻先に冷たい感触があるのは気のせいかな?怖っ!


「イチヤ!朝飯食いにいこうよ!」

「おうっ!ちょっと待っててな!」

「ほら二人とも着替えて飯に行こう」

「「はーい」」

 いつの間にか戻ったミルスも部屋から出ていく。あれで236歳とはな。

 まぁいいか。さっさと着替えて出るか!

 四人で朝飯を食い、ギルドに向かう。

 中に入ると混雑していたので先に解体場にはいる。

「おう、朝からここに来るとは何事だ?」

「あ、俺はイチヤ。渡り人だ。で、アイテムボックスが使えるからいつでも解体場に来れるんだ」

「へぇ、渡り人かよ。初めて見たよ」

「んで?出していいかな?」

「おう、いいぞ!」

 途中で倒したキングブルを出す。

「おおー!キングブルじゃねぇか!しかも鮮度もいいと来ている!」

「どう?」

「良い値段になるぜ!まってな!」

 ささっと解体して紙を渡してくる。

 十五万ゼルになった。

「もっと持ってきてくれよ?お前らなら大歓迎だぜ」

「おう!またな!」

 まだ人の多い受付に並んで金を受け取りアイテムボックスにいれる。

 王都に来て外に出てないから今日は外での狩りをすることにした。

「ミルスは大丈夫か?」

「大丈夫じゃ!日焼け止めも日傘もあるからのぉ」

「そんなんで戦えんの?」

「まぁ、見とるのじゃ」

 ちょうどフォレストウルフが出てきた。

「ミルスガン!」

 畳んだ日傘の先から赤い弾丸が打ち出されて脳天を撃ち抜かれたフォレストウルフは倒れてしまった。

「ふぅー、どうじゃ?」

「やるじゃないかミルス」

「ほんと、凄いですわね」

「まぁまぁやるじゃない」

 だが昨日聞いた話では、ミルスのレベルは十台で、弱いと思っていた。

 レベルが上がればあのナイスバディも維持できるらしい。

「ワシにかかればこんなもんじゃ」


 それからは草原でフォレストウルフやホーンラビット、ラッシュボアなどを倒してギルドに帰還する。解体場で大量にだすとビックリされたが、こんなものじゃまだ足りないなぁ。

 換金して夜飯を食いにいく、自炊は出来る時だけにしようと行ってある。


「あーはっはっは!まぁ。私達くらいになるとこんなもんかねぇ!」

「アカネ、飲み過ぎだぞ、それに草原だから弱い奴しかしなかったじゃ無いか」

「それでもあの量は凄いですよ」

「渡り人ってのは凄いもんじゃのぉ」

 チビチビとエールを飲んでるミルスの肩を抱いて笑いまくっているアカネ。

「でしょ?凄いのよ渡り人は!」

「アカネ!ボリューム下げろ!」

「イチヤもさっさと童貞卒業したら?」

「アカネ?怒るぞ」

「ラジャ」

 よし、本当に起こりそうな時はシラフに戻るのはヨシとしよう。

「でも美味いのう!爺やの作る料理はあまり美味しくなかったからな」

「あれ爺やだったの?倒して大丈夫だったの?」

「あぁ、もう直ぐ寿命だと本人も言っておったしのぉ。最後に戦えて本望じゃろうて」

「そうか、ならいいけどな」


「明日は東の森に行ってみようか?それなりのモンスターがいるらしいし、ミルスのレベリングもしないとな」

「ラジャ!」

「東の森にはオークの巣があるみたいですが?」

「まぁ、なんとかなるだろ?やばそうなら撤退しよう」

「はい」


 次の日の朝も二人によって動けなかった。

「なんで?なんで、二人とも自分の部屋で寝ろよ!」

「ここが、私の居場所です」

「イチヤの隣が寝やすいのじゃ」

「やめて!疲れ取れないじゃん」

「もう!おはようのキスくらいしてくれても良いのに」

「そうじゃそうじゃ!」

「朝から大変だな」

 二人にほっぺキスをして機嫌を取る。

 二ヘラ笑いで出ていく二人を尻目にため息をつく。大変だ。

 朝から疲れたが、今日は朝から東の森だ。

「いくぞ!」

「「「おぉー!」」」


 東の森にはオークの巣やミノタウロス、キングボアなどがいるらしく上級者向けの狩場だ。

「シータ」

「はい!」

 俺がタンクになりシータが攻撃して、ミノタウロスを倒す。ちゃんとミルスにも攻撃させておく。

 アイテムボックスにいれて森の中に入っていく。


「オークが多くなってきたな!」

「オークがオークだって!」

「おい!親父!やめろそう言うのは!」

「ラジャ」

 本当にもう!

 だがオークの巣が近いことは分かるな。

 シータが斥候で先に見に行っている。

「オークの巣がありましたがでかいです!オークジェネラルもいました!」

「じゃあ撤退しようか」

「「「はい」」」

 東の森を抜けると、ほっと一息つく。


「オークジェネラルはやばいな」

「そうですね。一対一なら勝てますが」

「それよりオークの多さがやばいな!」

「あの規模だと討伐作戦が出かねないですね」

 討伐作戦とはギルドから召集されたパーティーで討伐を遂行することだ。こっちはまだミルスがいるからな。

「一応頭に入れておこう。じゃあ帰ろう」

「はーい!」

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