第6話 デート


 シータを連れて『錆猫の居眠り亭』に帰る。

「女将さん部屋一つ空いてる?」

「あいよ。銀貨四枚ね」

「イチヤ様と一緒がいいです!」

「ダメ!これは譲らないからね」

「はい、分かりました」

 シータは銀貨四枚を渡して部屋を見るとすぐに荷物を取りに行った。

「もぐ、イチヤも、モグモグやるねぇ」

「飲み込んでから喋れよ」

「んぐっ!イチヤモヤルネェー」

「なんでカタコトなんだよ。俺は疲れてんの!」

 女将さんが晩飯を持って来てくれる。

「イチヤにゾッコン見たいじゃないか」

「オークから助けただけですよ」

「なら責任取らないとね」

「は?」

「知らないのかい?オークに捕まった女は」

「それは見たからいいです」

「そうなるからオークから助けられた女はその男に一生を捧げるんだよ」

「なぁー、わかんねぇ!ここの普通がわかんねぇよー」

「じゃあ私も助けてもらったから」

「うっせぇ!アカネはアカネだろ!」

「そっうでーす!」

「ウゼェ」

「あっ傷ついた!まじ傷ついたね」

「あー悪かったよ、もー飯食わせてくれよ!」

「はい、アーン」

「ちげぇし!」

「あははは」

 アカネのやつ出来上がってるな!


「ただいま戻りました!すぐに参ります」

 そしてシータも帰ってきたらもうどうなるの?


「でさぁ。まじ優しかったんだよ!」

「わかります!ツンデレですね」

「わかるぅー!」

 黙々と俺は飯を食っている。

 シータとアカネは気が合ったのか喋りまくっているが、無視だ。

「んで?どーすんの?責任とるよねー?」

「そうです、責任とってください」

「しらねぇよ責任なんて取れるか!」

「あ、童貞だ!」

「な!ちげぇし!」

「優しくしてあげますから」

「だからちげぇって言ってんだろ!」

 童貞だけども、

「仲間からですもんね!」

「そうだ。仲間ならいいぞ!」

「よし。私も仲間になろうじゃないか!」

「お前は借金返してからな?」

「もぉ、いいじゃないさぁー、一緒にやってこーぜ?」

 酷い酒乱だな。

「今日の稼ぎは?」

「ホーンラビット二十体!」

「お、真面目にやってるじゃないか」

「でしょ?どうよ?仲間にしたくなったでしょ?」

「おいおいな!部屋に戻るわ」

「待ってください!私も一緒に」

「一人で寝るの!」

 もう!疲れたから寝る!


 次の日は目覚めるとなぜか狭い。

「おい、シータ?なぜここに?」

「鍵をチョチョイとして入って来ました」

「はぁ、ダメだろ?そう言うのは」

「仲間なんですから大丈夫ですよ」

「ダーメ!ほら自分の部屋に戻りなさい」

 部屋から押し出して自分の部屋に戻らせる。


 下の食堂で飯を食い、今日は休みにするかと思う。

「今日の予定は?」

「金も入ったし休みにする」

「じゃあ、デートしましょう!」

「へ?」

「デートですよ!したかったんですよデート」

 シータが食いつくと、

「私も休んじゃおうかなぁー!」

「いいですね!ダブルデート!」

「意味違うからね!」

 すぐにそう言う事になるんだからたまったもんじゃない。

「まぁ、私は遠慮しとくよ。借金返したらデートしてよね?」

「は?なぜアカネと?」

「鈍感は嫌われるよ?」

「はぁ、俺のどこがいいのかわからんね」

「優しくてカッコいいじゃないですか!」

「シータ!いいからやめて!恥ずい!」

「もう!でもデートですからね!」

「はいはい」

 もうどうにでもしてくれ。


 なぜ同じ宿なのに待ち合わせなんだよ。

「待ちました?」

「べつに」

 ほぼ一緒に出て来たろうが!

「キャァァ!」

「なんだよ?」

「言われたい言葉でしたので、つい」

 ふぅ、これ以上はやめてくれ。

「どこに行くんだ?」

「私、服が見たいです」

「あいよ」

 腕を組んでくるシータ。柔らかい物が当たっているぞ?

「服じゃないのかよ!」

「下着も服ですよ!どんなのが好みですか?」

「いや、それは、ちょっと!」

「いいじゃないですか!デートですし」

 目ざとく俺の好みを当てて来るシータにタジタジでしかも、下着屋だから逃げ場もなく。

「もう、えっちぃですねぇ」

「ふ、ふん、男はみんなこんなもんだ!」

「へぇー!もう、可愛いんですから」

 腕を組む力が尋常じゃないんですが?さすがCランクですね。

「あ、俺も防具屋行かないと」

「あ、それなら行きましょう」

 防具屋に着くとアイテムボックスから防具を出してやはり直せないらしいから新しいのを買うことに。

「こっちも似合いますねぇ」

「いや、俺はそんな高いのは」

「でも、ちゃんとした防具じゃないと」

「…まぁ、そうか」

 金も入ったしちゃんとした防具にするか。

「でも革鎧な!動きにくいのはやだから」

「はい!これなんかどうでしょう?」

 三十万ゼルか、なかなかするけど黒でかっこいいな。

「んじゃこれにするわ」

 金を払い手直ししてもらい受け取る。

 アイテムボックスにしまうと、

「イチヤ様はアイテムボックス持ちなんですね」

「な、なんでわかった?」

「いや、ズタ袋にそんなに入りませんし、オークの時から知ってましたよ?」

「あ、あぁ、ね」

「大丈夫です、いいませんから」

 ルンルンのシータは次は道具屋に行くと言う。ポーション買った時以来だな。

「避妊薬ください」

「ぶっ!!」

「どうしたんですか?」

「避妊薬って」

「大事ですよ!子供は計画的に作りましょうね!」

「……」

 俺はポーションを三本買っておく。避妊薬?なんのことかな?

「さてと。あとは武器屋も行きたいな」

「あ、私もそうでした」

 デートで武器屋もないと思うが、

「あんちゃん、この剣はもうダメだね」

「やっぱり?」

「よく持った方だよ」

「んじゃ新しいのを買うか」

 剣も少しいい奴にしようと手に馴染む奴を探す。シータは短刀を探している様で目が真剣だ。

「よし!これでいいか!」

「私も決まりました」

「んじゃこれ二つで」

「イチヤ様?」

「ここは俺が出すよ」

「イチヤ様!」

 さすがCランクですね。お高かったです。

「大事にしますね!」

「まぁ、大事にしてくれ」

 短刀を贈るのが俺の女になれって意味を知らないイチヤであった。

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