第4話 アカネ


 ここ二日で魔法もある程度使えるようになってきた。

 あの男ほど大きなファイヤーボールはまだ出ないけどね。

 火魔法特化したんだろうな。そんなことしたら生きていくのが大変なのわかるだろ。

 結局は死刑になったらしいが見ていない。

 やっぱり同郷の人が死ぬのは見たくないからだ。殺されかけたけどね。


 また北の森に行くかと朝から出かけている。そしたら殆ど下着だけの女の子が座って泣いていた。

「こ、これよかったら」

 俺の古着を渡すと、

「ありがとう」

 とそれを着ている。もちろん俺は後ろを向いているが、もしかして、

「もしかして同郷の方ですか?」

「たぶんね。ポイント制の?」

「はい!そうです!まさか服までポイントだったなんて!」

「俺もパンイチでここに来た時は焦ったよ」

「あ、私は茜っていいます。ここではアカネ?」

 赤い髪の少し気の強そうな女の子だ。

「その方がいいね、じゃあ街まで案内するよ」

「え、いいの?私今何も持ってないし服も借りてる状況なのに?」

 ちゃんと周りが見えてて偉いな。

「俺も色々な人に助けられたからさ」

「あ、ありがと」


 街の門まで行くとゴズに話をする。

「というわけで冒険者登録したいそうなんだ」

「分かった、が、街で何かあったらイチヤの責任になるぞ?」

「それは分かってるよ、でも助けたいんだ」

「わかったよ」

 門を通してもらい冒険者ギルドで登録をする。

「わぁ、ドッグタグ可愛い!」

 可愛いか?女の子のセンスが分からないな。

「次は服とブーツだね」

「えっ!買ってくれるの?」

「貸しね!」

「うん!ありがとう」

 服屋に行くとアカネは時間がかかる。

「あ、コレも買っていい?」

「いいよ、貸しだしね」

「よし!」

 結局ブーツまで選ぶのに一時間以上かかってしまった。

「どう?可愛い?」

「可愛い可愛い」

「もう!ちゃんと褒めてよ」

「それより武器はどうするの?」

「私は魔法特化だから杖かな?」

「なら革鎧と杖だね」

 しまった、また時間がかかるやつだ。

 

 案の定時間がかかり、昼になってしまった。

「今度こそ可愛いでしょ?」

「可愛い可愛い」

「だから!もっと感情込めてよ!」

 そんなところは可愛いけどね。

「あとは宿だけど俺と一緒のとこでいい?」

「一緒の部屋じゃないんだよね?」

「当たり前だろ!」

「ならいい!」

「あと、ほら、五千ゼル渡しとくから、ちゃんと返すようにね」

「はい!」

 ピシっと敬礼するアカネ。


 宿の女将さんに空いてる部屋に入れてもらってお金はちゃんとアカネが払う。

「あ、シャワーがある!ライトもつく!すごーい!」

 俺も最初思った。


「んじゃ、日もまだ高いから稼ぎに行くよ?」

「ラジャ!」


 アカネを連れて草原へ行く、

「出て来るからこうすると、死ぬから」

「ウサギさん可哀想」

「ホーンラビットだから!人殺すからね!」

「わかってますよ、あ、出て来た!えい!」

 アカネが杖で思いっきりぶん殴ると息絶えた。

「わー、やった!」

「アカネはアイテムボックスは?」

「とってないよ」

「なら次はアイテムボックスをとったほうがいいよ」

「なんで?」

 ホーンラビットの死体をアイテムボックス ににたいとも入れると、

「こーゆーこと」

「すっごーい!アイテムボックスってそんなんなんだ!」

 パチパチと拍手するアカネ。

「三百ポイントで獲れたけどいまは分からないからポイントは貯めといた方がいいぞ?」

「ラジャ!」


 それから夕暮れ時までホーンラビットを狩って、ギルドに戻り解体をお願いする。

「お。おまえもパーティー組んだのか?」

「臨時ですけどね」

「アカネって言います、よろしくお願いします」

「へぇ、ちゃんとした子じゃないか」

「えへへ」

 ホーンラビット三十匹分を出すと、

「アイテムボックス欲しいなぁ」

 とアカネが独り言を言う。

 魔石持ちが十匹いたので七千ゼルだ。

 半分の三千五百ゼルを渡すと

「借りてるのから引いていいよ」

「自分一人で稼げる様になってからな」

「……はーい」

 アカネと一緒に行動するのは今日だけだ。じゃないと自分から動けなくなるしな。それに二万ゼルも使ったんだから早めに返してもらわなきゃな。


「へぇ、それで?」

「そいつは死刑になった」

 あいつのことだ。

「マジで?!」

「マジだ」

「怖っ!」

「だから真面目に働くのと、知らない奴にはついていかないこと!」

「イチヤにはついて行ったけどね」

「それはしょうがないだろ?」

「だね!運が良かったよ」

「だな、明日から別々に行動するからな」

「えー、まだいいじゃん!」

 膨れっ面のアカネに、

「俺はまだ強くならなきゃなんないからな」

「え?なんで?」

「そりゃ、怖いからだよ。いつ何があるか分かんないし、強くなっておくことは常識だろ?」

「そ、そうかも」

「だからアカネも自分で強くなる方法を探っていけよ?」

「うん!」

「んじゃおやすみ」

「あーい、おやすみ!」

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