第200話 問題児
カミュの怒りにアイリ達3人が押し黙る。
「悪いな、自己紹介してなかった。
俺はこのギルドの副マスターで冒険者学校の総合筆頭をしているアールだ。
うちのギルド全体のトラブル対策担当でもある。
それとカミュが言った事は本当だ。
俺が冒険者登録を拒否すればそれまで。逆に許可すればどれだけ失敗しようが今まで通りだ、例え誰だろうと俺の決定には従ってもらう。
うちのギルドの従業員はカミュを含めた元冒険者や貴族の令嬢もいる。みんな俺に軽口を叩くけど、俺の決定には絶対にさからわない。
それと冒険者はならず者も多い。でもうちのギルドにくるとみんな借りてきた猫のように大人しいし優しい。
答えは単純だ。暴れたり、受付の子達に迷惑をかけたり、君達みたいに礼儀を知らない奴はみんなこの世から姿を消す。それだけだ。
もう一度質問する。君達はどういう妨害を受けたのかな」
俺が言った言葉に3人の顔から生気が抜け、顔色が白を通りすぎて土色になる。少しおどかし過ぎたみたいだ。
「アイリ、貴女のくちから一つ一つの案件について説明しなさい。
アールなら、貴女達の力になれるから」
カミュがアイリを諭すように言う。
「う、うん。最初にやられたのが配達。治安は悪い地域だけどそんな難しい場所じゃ無かったから、3人で目立たない格好で行ったの。
依頼をくれた商店を出た後、黒いローブをまとった男だと思う奴に声をかけられて依頼をキャンセルすれば命は助けるって、突然言われて。
その時は逃げたの。なんか怖かったし、とっとと依頼を終わらせようと思って。
でも、荷物を渡す家に付いたら、そのローブを着た男が家から出てきて、それで気付いたら商店の前にいて荷物が商店に戻されていたの」
「君達に怪我は無かったかい?」
「私は問題無い。でも魔法使いのルイの太ももに変な魔方陣が出来てしまったの」
アイリが泣きそうになる。
「ルイ、悪いがその魔方陣を見せてもらえるか?」
ルイとアイリが目を合わせた後で静かに頷く。
その魔方陣をカミュと一緒に見る。それは紛れもなく呪いの魔方陣だ。
「ルイ、貴女体に異常は無い?最近魔力切れをおこしやすいとか、誰かに見られる感じがするとか。
それより何でこの事を教えてくれなかったの?」
不安になったカミュが真剣にルイに聞く。
「ごめん。私達、これがそんな面倒な物だと思っていなくて」アイリが震えだす。
「カミュ、メルシーとマリアンノを呼んできてくれ。俺には外せない類いのものだ」
カミュが青ざめる。
「あの、メルシーとマリアンノってもしかして」
ルイとヨットが無邪気にはしゃぎだす。アイリはそれ所では無かったみたいで1人で責任を感じて落ち込んでしまっていた。
メルシーとマリアンノが会議室に来ると、カミュが3人を紹介する。
アイリ、ルイ、ヨットの3人が緊張の余り大人しくなるが目だけはキラキラと輝いていた。
流石、我がギルドの女神と言われるお二人。後光が射しています。
「さ、アール様は部屋を出て外で待機です。服をぬがないと見えない事もありますから」
にこやかにマリアンノに言われる。
「分かった、俺も考え事がある。食堂にいるからカミュ、終わったら教えてくれ」
「かしこまりました」
食堂にいるとライト レイがニヒルな笑みを浮かべて会議室の方に消える。
どうやら闇の精霊が関係しているみたいだ。
ライト レイが消えてから15分位でマリアンノが来た。
「アール様。よろしいですか?」
「今行くよ。この書類を少し持って」
そう言うと呪いの魔方陣について書かれた資料を分けて運ぶ。
会議室に入るとライト レイがメルシーにくっいてメルシーを満喫している。いくら姿を消してるからって絡み過ぎ。
「ライト レイ、教えてもらえるか?」
ライト レイが不満そうにメルシーから離れると、姿を表してこっちに来た。
「アイリは鈍化と頭、ルイは無能化と心臓、ヨットは身体不能と精神。
かなり昔に流行った古代の呪いだよ。かれこれ500年前には廃れた呪いだ。
誰かがアバロディアのダンジョンからみつけて来たのかも知れないね」
「それは何処にあるんだ?」
「今で言うランバルト王国の最南端にある忘れられたダンジョン。それがアバロディアダンジョンだ。闇の精霊の住みかだよ」
「それで対策はあるか?」
「簡単だ、術者より強くなれば良い、術者は精々レベル15ってところだ。この3人がレベル20をこえたらなにも問題無い」
「だそうだ、聞いていたか?」
アイリ、ルイ、ヨット、カミュが恐ろしい者を見たように震えている。
「あの、アールが召喚したの?」
カミュが恐る恐る聞いてくる。
「当然、アール様です。私やマリアンノも大変お世話になっています」
カミュが青ざめる。元々Aランク上位の冒険者だ。ライト レイの凄さを肌で感じたのだろう。
「この間の獣帝の幹部が可愛くみえるわ」
カミュがそう言うとアイリ達3人を抱き締める。
「もう大丈夫よ。いい? 自分達を守る為にも強くなりなさい。良いわね」
カミュの言葉に3人が頷く。
「メルシー、マリアンノ。助かった。ありがとう」
「いいえ、たまには私達もダンジョンに連れて行って下さい。最近体が少し鈍ってしまってますから」
メルシーにそう言われるとね。断れ無いね。
「分かった、近々行こう」
で、例によってアイリ達3人を連れてダンジョンに来る。2階層でゴブリンを倒すのを見学しながら様子を見る。
そこにワイパが来た。このところ自分の商会が忙しくギルドに顔を出すことすらなくなった。
「アール、新人さん?」
「ワイパ、久しぶり。
今年、登録したばかりの冒険者だよ」
「そうか」なんか感慨深く言う。
「僕は卒業した後、正式に西の辺境伯領に行くことになったよ。完全に任される事になった」
「そうか、なんか寂しくなるな。最近じゃハッシュベルクもアルッシュと辺境伯領が忙しくてね。顔を余り出さないよ」
「そうか。まあ、アーマイル辺境伯もいるし、遊びに来たら」
「今日は何階に行くの?」
「22階層。月光草に新種が有るらしくてね。それを見に行こうと思ってね」
「分かった、気を付けてな」
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