第194話 狙われた行軍

第2部 4章


少し寒さが落ち着いた時にアーマイルが出発すると生徒達に伝える。


薪を処理して出発し始めると夜が明け少しづつあたりが明るくなってきた。


そこからさらに10km近く進んだ辺りでアーマイルが生徒達を止める。軍人の感だろう。


「全員、構え。いつでも攻撃出来るようにしておけ」


そう言うと森の中から騎士団のような鎧を着けた一団が出てきた。出て来たが誰1人として生気がある奴はなく、みんな言われた通りに動く玩具のように見える。


「お、アーマイルご苦労様」


「師匠? もっと先にいると思っていました」


「俺もそのつもりだったけど人が多すぎてな、アーマイルの隊の先陣が間もなく来るだろう。来たらこいつらを預ける。


それと生徒全員をお前の隊に預ける、本日の行軍は中止とする」


俺が生徒達にむいて話す。

「生徒につぐ、これは訓練ではない。現在、この場所にベルート共和国の軍隊がいる。


君達はアーマイルの兵士と共に引き返すように命じる。アーマイルの兵士は現在もっもと勢いのある兵士達だ。兵士達の動きや連携は勉強になる。色々と勉強して欲しい」


「教官、私はここに残りたいと考えます」


「マフィンか? 理由は?」


「ここにいる捉えられた兵士以外にも複数の人を察知しました。

他に捕まえる必要があるのもを逃すのは危険だと判断しました」


「他に気づいた事は?」


手を上げたのは冒険者登録をした2人組だ。

「はい。我々の後を追うように付いてきていた者がいます。今現在も付いてきています」


「わかった。3人は残れ。


アーマイル、兵士は後どのくらいで到着出来そうだ」


「はい、日の出に合わせ20km付近で待ち合わせています。間もなく来ると思います」


「わかった。捕らえた者を全て縛れ、今は魔法で押えている。任せても良いか?」


「わかりました。生徒達、荷台からロープをだせ、3人1組で対応するように。

兵士、騎士に係わらず必要な作業だ。


準備しろ!!」


「ハイ」

生徒達が捕まえた者達を捕縛して行く。その一人一人をアーマイルがチェックしていく。


およそ1時間かけ、捕らえた者全てを縄にかける。

その途中でアーマイルの兵士達が到着していた。


アーマイルが兵士達と生徒に号令をかける。

「これより王都に向かう。

生徒はこの敵兵士の護送の危険性を知らない。この敵兵士達が確実に国に渡すまでが仕事だ。


距離にして20km。いつ我々が狙われる可能性もある。応援の兵士はやって来るが気を抜くな。


これより、貴族学校 Fクラスの者を一次的に西方軍見習いとして私の配下に置く。


これは緊急事態だ。これからお前達は生徒ではない。気を引き締めろ」


「アーマイル。後は任せる」


「ハイ、おまかせください」


「マフィン、ライツ、ダット。

俺達も移動する。これからの対応を説明する、集まれ」


マフィンが俺を見て驚いていた。ほとんど生徒と顔を合わせず名前を呼ぶ事すらなかった。

「教官、いつライツとダットの名前を覚えたのですか?」


マフィンが驚いた顔で聞いてきた。それはダット達も同じ意見だったらようだ。


「当日だよ。ルストールからみんなの名簿と並び順を聞いた。

それと俺は冒険者だ。同じ冒険者は良くチェックしているだけだ」


それから森の中に入り身を隠す拠点をいくつか作る。丁度距離として半径60mの範囲に4ヵ所設ける。


「これは何を為されているのですか」マフィンが不思議そうに聞いてきた。


「俺の索敵の範囲だ、これから行動を開始する。だがその前に休憩を取る。マフィン悪いが10分だけ仮眠する。

ダット、武器を手入れしておけ、ライツはポーションの準備をしておいてくれ」


「あの、私は何を」マフィン、聞いてくる。


「何か起きた時、マフィンが判断しろ。ただし無理はするなよ」


そういって仮眠を取る。およそ20分程で目を覚ました。

「マフィン、変化は合ったか?」


「いえ、なにもありません」


「ライツ、武器の手入れは?」


「終わりました」


「わかった」

そういってバトルアックスをだす。寝る時に寄りかかっていた木の後ろの木を斬り倒す。


「出てこい」

俺が声をかけると以前アンバス辺境伯とガリアと一緒に行った時に会った獣帝の人族の男が姿を表す。

マフィン、ダット、ライツは全くきづかなかったようで動揺していた。


「しかし凄いものですね。私がいるのを知っていて完全に熟睡するなんて、命知らずなのでしょうか?」


「あんたもな、良くこんな敵しかいない所に単独できたな」


「これを、我々は貴方と行動を共にする事を決めました」

そういって手紙を渡される。目を通すとメフィスからの手紙だった。


「まあ、わかった。返答は後だ。今は忙しい」


「はい、ではこれで」


「おい、生きて帰れよ」


獣帝の男がまた姿を消す。それを見た3人がまた驚いた。


それから森のなかをダリアンにむいて進む。すでに索敵には10人程の兵士を確認する。


ある程度進んだ辺りで通りに出る。


それに合わせ矢が飛んでくる。当たりそうもないものは無視して先に進む。


余り森の中で氷帝の能力を使うと森が無くなってしまう事もあり魔法弓をだすとゆっくりと構える。


狙いは奥にいる一際危険な魔力をだす奴を狙う。


シュッ ダン!


奥にいた魔力が完全に消える。

「盾を構えろ、身を隠せ」


「ライト ミスト」光の霧を出し広げていく。光の細かな粒子が半径3mの範囲で浮かぶ。このミストは光の粒子だ。これに当たると粒子が弾け全てを遮断する、絶体防御だ。


飛んでくる矢が光の霧にふれると弾かれて地面に落ちる。

「全員、地面を見て腕で目を塞げ」


「ライト フレア」

矢で倒せないと思ったのか、だいぶ近付いて来た所に強烈な光を浴びて倒れている。


うめき声を上げゴロゴロと転がる敵兵士達を捕らえて行く。

動ける者は叩いて気を失わせ、亜空間の腕輪から取り出した手錠と足錠をつける。


取り押さえた者が約30名。そのなかにモルモット共和国の騎士団共通鎧をつける者もいる。


やはり、内通者がいる。そこを叩く必要がある。


敵兵士達を見てどのようにするか考えていると応援の軍が来た。


「アール殿、遅くなりました」


「すまない、来てもらって」


「こいつらは、このまま我々はで移送します」


「わかった、馬を二頭借りたい。お願い出きるか?」


「かまいません、どちらまで?」


「このままダリアンに行く。あそこは騎士団の数も少ない。応援に向かう予定だ」


「了解しました。馬を二頭、それからロキ、小隊を連れて同行しろ」


ロキと呼ばれた兵士が馬と兵士を10名連れて来た。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

狙われたダリアン (題名)


そこから馬に乗りダリアンを目指す。流石に歩いている時とは速度が違う、昼前にはダリアンの近くに来る。

そこで休憩をしているトッシュを見つける。


「トッシュ、早いな。ここまで来てたのか?」


「あ、アール。ずるいぞ馬に乗ってるなんて。


って? なんかあったのか?」


軍を連れだって来たのにトッシュが驚いている。


「誰か、トッシュを乗せてやってくれ。トッシュは信頼のおける冒険者で俺の部下だ」


「では、私が」ロキと呼ばれた兵士がトッシュを乗せてくれる。


「ダリアンは湿地帯に橋をかけた村だ、無防備な状態で橋をつっきる。何かあった時の防御は俺がする。橋をわたりきるまで気を抜くな」


「「「はい」」」


馬に乗り一気に橋をわたりきる。最後の兵士がわたりきったあたりで矢が何本か飛んできた。


そこからギルドに向かい全員をギルドに入いる。

「アール様、ご無事で何よりです」

リンナが声をかけてきた。リンナと一緒に元アンドウ騎士団の副騎士長アルカも一緒いた。


「アルカもいたのか、悪いな迷惑をかけて」


「何をおっしゃいます。久しく落ち着いておりました。多少刺激が欲しかった所です」


「リンナ、手紙ありがとう。こっちは軍の小隊長ロキとその小隊。


そして貴族学校の生徒が3人だ」


リンナとロキが軽く挨拶をした。


「状況を説明してもらえるか?」リンナに説明を求める。


「はい、アール様が屋敷を出られて間もなく、何者かのたれ込みが有りました。

屋敷に手紙が投げ込まれ、その真偽の精査に時間がかかりました。

ですがその時ガシン様が屋敷を訪れました。訪れた要件は手紙と同じ内容です。

その後、マリアンノ殿下が直接手紙を持ってこられ屋敷は心配無いと伝えて欲しいと仰せ使っております」


「しかし本当なのだろうか?」


「私は何とも」リンナが押し黙る。


「ロキ、軍はここまで来る予定は有るか?」


「私は聞いておりません」


「わかった。悪いが命を預かる」


「問題ありません。私としてはアルッシュの死神とご一緒してる事に興奮を覚えています」


「リンナ、住人の避難は?」


「問題ありません。マルタに一任しております」


「わかった。リンナ、悪いなやな思いさせて」


「何をおっしゃいますか。これでも伯爵家の娘です。若い者には負けません」


「よし、作戦を伝える。

ロキ達小隊はギルドの回り中心に守ってくれ、俺は単騎で敵を向かう。


リンナとアルカ。悪いがここが最後の砦だ。貴族学校の生徒3人と頑張ってくれ。


トッシュ、いつでも動けるように待機。必要に応じて首都ギルドに応援を頼む」


「え、走ったって丸1日かかるよ」トッシュが呆然として言ってくる。


「心配無い。

それに最終的にどうにもならない時は俺が住民を含め全員たすける」


「リンナ、アルカ。敵は後ろの森には現在誰もいない。それと貴族学校の生徒は実戦がこれが初めてだ。悪いが面倒を見てくれ」


「ロキ、橋からギルドを中心に管理を頼む。一応索敵に引っ掛からないが注意は怠らないように」


そういってギルドを出る。


1人で橋に来る。回りはおよそ30人位だろうかかなりこなれた感じを受ける。


しかし、第1王子のルールがベルート共和国と手を組んだと言うのは本当だろうか?

確かにベルート共和国から獣人のドレイを購入しているのは耳に入ってはいた。それも戦闘力の高い軍人上がりや冒険者上がりばかりを集めていると聞いている。


考え事をしていると後ろにマルタが来た。

「アールすまない、そのまま聞いてくれ。獣帝と名乗る女に教会を追い出された。


教会の地下に住人30人がいる。それとこの手紙をアールに渡すように指示を受けた」


後ろから渡された手紙を見る。


「マルタ、落ち着いて行動して欲しい。住人をトッシュと一緒にギルドに移動させる。


トッシュと貴族学校の生徒達を使い移動させろ。獣帝には俺に言われたと伝えればいい」


「良いのか?」マルタが震えながら悔しがる。


「それで良いな? 何人でやって来た、メフィス」


マルタの横で隠匿魔法をといてメフィスが顔をだす。その状況にマルタが腰を抜かしてしまった。


「ちょっとお母さん位言えないの?本当に失礼しちゃうわ」メフィスが緊張感もなくプリプリと怒る。


「悪いがマルタを抱えてやってくれ、腰を抜かしたみたいだ」


メフィスが手を上げると狼族の男が近付いて来た。

「みんなをギルドに避難させるよ、後、貴方は彼を連れてきてちょうだい、腰を抜かした見たい」


メフィスと一緒にキルドに戻る。

「ロキ、悪いが作戦を変更する。ダリアンは捨てる。

この獣人族の男達と一緒に住人を全員ギルドに移動してくれ。

メフィス、20分でいい。守ってくれ」


「貴方は?」


「助っ人を呼んでくる」


そういってギルドの奥に入り転移魔石に乗る。アルッシュに行って、ハッシュベルクに声をかける。その後一緒にベルクドダンジョンギルドに移動。メルシーとマリアンノに声をかけみんなでダリアンのギルドに入る。


ギルドに集まった住人を手分けして転移魔石を使いベルクドダンジョンギルドに移動させる。おおむね20分程で全員を移動。最後にリンナとアルカをメルシーとマリアンノが連れて行き、残ったのは俺と獣帝の強者だけになった。


転移魔石を亜空間の腕輪にしまうとギルドを出て敵を牽制する。


「さて、息子君。どうするつもり?」

メフィスが少し楽しそうに聞いてくる。


「あんた達は逃げな。俺が時間を稼ぐ」


「この場所を私達に譲る気持ちは無い?」

メフィスが本来の目的を口にし始める。


「悪いがそれは出来ない。別に獣人族か住むのはかまわない、だがこの場所を求めるなら話は別だ。

目の前にいるベルート共和国の兵士共々、仲良く葬ってやるよ」


「ずいぶんと自信があるのね」メフィスの目付きが変わる。


それと同時にフェルリンとライト レイが姿を表す。流石に最上級精霊2人が放つ強烈な魔力にメフィス以外の獣人族と外にいる兵士達が倒れてしまう。


「さて、どうする。メフィス相手に手加減なんてものは最初から無い。

住人を避難させたのも俺が戦うと被害が出る。その為だ。今は何一つ遠慮はしないぞ」


メフィスと少しの間にらみ合いが続く。

「やめ、どう頑張っても私達の方が分が悪いわね。困ったものね、息子1人抑えれないなんて。


でも、住むだけなら問題はないのね?」


「住むなら税金は取るぞ。そこは譲れない」


「ケチ!!」メフィスがまた俺を睨む。


「お前達、いつまでねてんの? 子供達が待ってる、帰るよ」

メフィスが仲間の獣人達を無理やり起こすと静かにギルドを出て帰って行った。

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