第192話 様々な事情
それまで黙っていた、ルストール学校長が話を始める。
「アチチ宰相、世の中は常に変わります。私が陛下の前で言った事は本当の事です。
マンチェタ国と神聖立国はこのところ関係を深め、ベルート共和国は最近、我が国を敵国とはっきりと名言し、神樹国は我が国と距離をおいております。
唯一ランバート王国だけが国王ロシナンテ陛下との友情でその仲を保っております。
これは由々しき事態です。我々はロシナンテ国王の力強さにうぬぼれてしまった。その強さに胡座をかいた。
私はそう考えております。侯爵家以下の貴族は皆、成り上がりです。
なのにたった50年、争いがなかったからと言って、貴族がはびこる世の中では、モルモット共和国は破滅します。
もう一度、貴族学校の運営を考え直して下さい」
アチチ宰相が悔しそうに唇を噛み、地団駄を踏む。
「さて、アチチ宰相。この辺で良いか?
下らない言い訳なら王宮でゆっくりと聞こう。但し俺はこれから生徒の指導がある。
夜中まで、待たせるが良いか?」
「夜遅く?」アチチ宰相が真っ青な顔で聞いてきた。
「当たり前だ、これから行軍に関し生徒達の指導がある、その指導こそロシナンテ国王からの依頼だ。俺にとっては最優先課題だ。貴様の言い訳はその後だ」
その後、西方軍によってアチチ宰相達はつれていかれた。
「邪魔が入ったな。悪かった。先に君達の事が知りたい。それに合わせ隊列を組む。
先ず索敵可能な者?」
5人間の生徒が手を上げる。
「身体強化を使えるもの?」
20人近い者が手を上げる。
「索敵と身体強化で手を上げた者は脇によけろ」
そう言われ22人の生徒が避ける。
「回復魔法を使えるものは?」
2人が手を上げる。
「攻撃魔法を使えるもの?」
10人が手を上げる。
「残りは何が出来るか教えて欲しい。隠匿魔法でも良い、食事の世話でも良い」
そこに1人の女生徒が手を上げる。
「私は魔力がありません、ですが。薬草学とふくろうの目と言われる暗闇を見る能力があります」
「素晴らしい能力だ。他はどんな能力がある?」
「私の能力が素晴らしいですか?
学校内では、卑怯者の能力と馬鹿にされていました」
「ふん、なら今回の行軍で君の能力がいかに有効な物か回りに示してやろう。
アーマイルを見ろ、君の話を聞いてから興味津々のようだぞ」
「師匠、私の事はほっといて下さい。でも卒業後の進路については、行軍のあと相談させて欲しい」
ガヤガヤと生徒達が騒ぎだす。
「次、残りの5人はどうだ?」
「俺は軽業の能力がある」
「私は魔力がなく、特殊能力は無い、けど料理と食料になる植物は良く知っている。私の父は猟師だ、狩りも得意だ」
「俺はなにもない。属性魔法も使えない、冒険者登録してるがEランクだ」
「私も同じだ、やっとEランクに上がったばかりだ」
「中々たいしたものだ。これから行軍の配置を説明する」
索敵 索敵 索敵
身体強化を使う生徒
魔法攻撃を使う生徒
索敵 手押し車 索敵
回復魔法を使う生徒
魔法の苦手な6人
「この並びで行う。手押し車は食料、薬、テント等だ40名を越える人間の荷物を運ぶ。
当然テントについては人数分は無い。夜の警備も行うからだ、また場合によっては怪我人なども搬送する可能性がある。
それから開始は1ヶ月後だ。いきなり体を動かしても壊すだけで意味はない。
それで君達に基礎トレーニングに励んでもらう。勿論魔力がないと言った生徒達も行ってもらう。
やることは魔力操作だ。学校が終わってから毎日これをやってもらう。魔力が無い生徒と、冒険者登録した生徒は最初だけ直接教える、その他は解散して良し」
「は! 学校長に敬礼」
ザッ
「アール教官、アーマイル辺境伯に敬礼」
ザッ
「本日の学科終了。よって解散」
「「ハイ!!」」
そして6人の生徒を残し皆、帰って行った。
「良し、始めるぞ。みんな地面に座れ」
そう言って1人づつ魔力を体に通し無理やり動かす。
グェ~!! ガガー!! ヒュッ!! 等みんな死にそうになりながら耐えていた。
そこにアーマイルが声をかける。
「最初は苦しいと思う。でもって続けると自分の力になる。私も師匠に言われてから毎日欠かすことなくやっている。みんなも頑張れ」
「あ、あの~。アールさんはどのくらいこれをやってるの?」ふくろうの目を持つ女生徒が聞いてきた。
「魔力操作か? かれこれ何年だろうな。教わった日から1日も欠かした事は無い、少なくても3年位にはなると思う」
「今はどのくらいの魔力を扱えるようになったのですか?」
「最初は君達より魔力が弱かった。それこそ魔力操作を覚えた時は、身体強化を唱えて魔力切れを起こした位だ」
そう言うとライトを唱える。
手に5cm台の光のボールが出る。その後、ボールの数を増やす。
あっという間に100個程のボールを作る。
「今ではこんな事を簡単に出来る位になった。こんな程度ら、読書しながらでも行える。
どういう理屈かはわからないが魔力量は必ず増える。レベルによっても増えるしな、だから魔力が無いと嘆かない事だ。
良いか? 能力が無いから駄目じゃない。自分を信じてやれないから駄目何だ。失敗はしても良い、転んでも良い。でもそこから得るものがある。
そこを忘れないようにな」
「「ハイ」」
それから一週間後、再度貴族学校にくる。
その日は生徒の所に教官2人が一緒にいた。
「アール教官に敬礼」
ザッ 生徒全員が敬礼する。
教官2人に挨拶する。
「アールだ、よろしく頼む」
「ハイ、よろしくお願いします。ルストール学校長から話を伺っております。
アールさんは、行軍に参加されると伺いました。本当に参加なされるのですか?
最近治安は良くなりつつありますが、まだまだ未開の地です、無理をなさらない方が良いかと思いますが?」
「俺のことなら心配いらない。朝一で出発して、他のクラスが通る場所を予め通る、警護の一環だ。
しかし教官が引率しないのに生徒が行軍する等不思議な行事だ」
教官2人が嫌そうな顔をする。そんな教官をよそに生徒に声をかける。
「今日は先週の宿題を確認する。順番は誰からでも良い。俺の前にこい」
生徒が列を作り並ぶ。1人づつ確認し振り分けしていく。分けた後、たった1人全く魔力操作をやっていない者がいた。
他の生徒にはその場で練習をするように伝える。
「さて、君は何故やらなかったのかな?」
優秀そうな女生徒だ。何故か一瞬教官の顔を見る。
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