第191話 アチチ宰相と俺
その後、学校長のルストールの案内で、行軍に参加するFクラスの40名の生徒達と会う。
向かった先はあの綺麗な校舎では無く、結構ボロボロな建物がたっている所だ。
こう言うのを見ると貴族って何だと思ってしまう。元はお互い平民だ。初代モルモット国王だって平民だった。
にも関わらず何をしているのか。
運動場に付くと生徒達が集まっていた。
「全員 整列」1人の生徒が声を上げる。
生徒達の前に立つ。
「全員、学校長に敬礼」ザッ!
こぎみ良い音をたて、一子乱れぬ動きに感動を覚える。生徒の中には見知った顔もいる。
メルシー筆頭公爵に使える騎士団の子息令嬢だ。
ルストールが生徒達に声をかける。
「皆、休め」ザッ!
全員、足を肩幅に広げ手を後ろに組む。成績上位と聞いていたがこれ程とは思わなかった。
「紹介しよう。彼は冒険者学校、総合筆頭のアールだ。国王、ロシナンテ陛下より、命を受けて君たちの指揮を取る。
もう1人はアーマイル辺境伯だ、今回の警備担当でもある」
ルストールの話を皆真剣な顔をして聞いている。このクラスだけを見ると何も問題無いように思う。
「紹介のあった総合筆頭のアールだ。俺に関してはため口で問題無い。
俺は基本的に礼儀作法何かに疎い人間だ。丁寧に扱われるのが苦手だ。よろしく頼む」
アーマイルが俺に続く。
「私はアーマイル辺境伯だ。今回警備担当として、この行軍に参加する。
私は基本的にすることが無い。ルストール学校長には伝えたが君達の行軍に同行しようと考えている。勿論、護衛は付かない。よろしくな」
そこにアチチ宰相が怒りをあらわにやってきた。回りに沢山の文官と騎士をつれている。
「おい、アール。これはどういう事だ?」
アチチ宰相が怒りを押さえる事が出来ず向かってきた。文官と騎士達がアチチ宰相を何とか止める。
「アチチ宰相か、お前に呼び捨てされるいわれはない。どういうつもりだ?」
俺の怒った顔を見て文官と騎士達が完全に怯える。
アチチ宰相は回りから人がいなくなった事に気がつき、うろうろとする。
アチチ宰相に近付き、胸を掴み持上げる。
「おい、何度も言わせるな。俺はお前に呼び捨てされるいわれは無い。
貴様、何様のつもりだ」
「ヒッ」
アチチ宰相が胸ぐらをつかまれて上に持上げられ足をバタつかせ苦しそうにする。
騎士と文官が遠くから俺に声をかけてきた。
「殿下、申し訳ありません。
アチチ宰相はダリアンに行軍するに辺り、各家の騎士団の同行を拒否される事について確認したく来ました」
「ダリアン?
当たり前だ。ダリアンまでの道中は我が領土だ。勝手に各家の騎士団の滞在する事を許可することは出来ない」
アチチ宰相が俺を見て言う。両手で俺の左手をつかみ、今にも気を失うかの如く震えている。
「ふ、ふざける…な…よ。ダリアンまでの…り…領地…は、く、国の…直轄…領だ。
ゲホゲホ…」
「ほう、宰相たる役職において筆頭公爵領と国有領の区別も付かないのか?
アチチ、貴様はやはり死罪が相当だな」
ここで、アチチ宰相を解放する。手を離すとアチチ宰相がドダッと地面に落ちる。
地面に這いつくばりアチチ宰相が俺をにらみつつ、地面を這いつくばって後ろに下がる。
「アチチよ、一度確認したらどうだ。筆頭公爵領内いで勝手に行軍の行うと決め、筆頭公爵の了解もなく、勝手に事を進めた。
それだけならばいざ知らず、筆頭公爵領を国有地で、自分の土地だと言い放つ貴様に、弁明の余地は無いぞ」
「いつ、貴様の土地となった?」
「お前はロシナンテのおっさんにこの話をした時、確認しろと言われなかったか?
なあ、アチチ宰相。俺は現在貴様を断罪することが可能だ。何故、文官達がお前に進言した時にお前は何も聞かなかった?
何故、騎士団がお前を止めた時にまともに話を聞かなかった?
その理由を聞こうか?」
アチチ宰相が回りの騎士や文官を見て震えだす。
「お前達、私に逆らうつもりか?」
だが、誰1人助ける者はいない。
「さて、文官に聞く。今回、行軍に使う領地は誰の領地だ」
俺の問いかけに1人の文官が答える。
「はい、メルシー筆頭公爵の領地であります」
「それを使うために必要な事は何だ?」
「はい、メルシー筆頭公爵に対し使用料を支払い、また使用するにあたり、筆頭公爵より決められた申し出は確実に守る事です」
「我が筆頭公爵家から使用に関する注意点を伝えている、その内容を簡単に申せ」
「はい、簡素に言わせて頂きます。
1つ、護衛の軍に関しては認めるが、各家の騎士団は利用を禁じる。
1つ、行軍における休息時の、使用人及びテント、及び娯楽は全て禁じる。
1つ、使用人を連れだっての移動、及び冒険者の護衛の使用を禁じる。
1つ、武器、防具等の利用は認めるがそれを世話する者の帯同は禁じる。
1つ、筆頭公爵が定めた項目に違反した者は例え誰であれ死罪、または同程度の罰を与え、それを犯した場合は、お家取り潰しもやむ無しとみなす。
禁止項目は総数30項目に及びます。全てにおいて、当主及び出場者は署名捺印の上の参加とする。
以上を持って行軍を許可する。
そうなっております」
「それで、行軍に参加する者の返答は?」
「はい、公爵家以下、総ての家より署名捺印を取り参加希望となっております。よって貴族学校、200に近い家がその申し出を受け、なおかつ参加を表明しております」
「さて、アチチ宰相。話を聞こう。申し開きはあるか?」
苦し紛れにアチチ宰相が文官が持つ紙を切るナイフを抜き取る「ふざけるなよ。いつダリアンが貴様の領地となった?」
アチチの後ろに控えた騎士がアチチ宰相を取り押さえ文官達が説明する。
「宰相殿下。ダリアンまでの領地はロシナンテ国王陛下がメルシー筆頭公爵殿下に様々な難題を解消されたご褒美として進呈された物です。
メルシー殿下が首都の警備担当になってから、犯罪が減り、商人が増え、人が増加し、税収が増加しております。
そのご褒美です。御存じありませんか?」
そこに俺がだめ押しする。
「以前の警備責任者はアチチ宰相だったな。何か我々のやり方に文句でも有るのだろうか?
喧嘩ならいつでも買うぞ。俺は誰であれ、俺の家族を馬鹿にする奴は許すつもりはない。
例えこの国が相手になろうとな」
俺の脅しにアチチ宰相が項垂れる。メルシーは若く筆頭公爵になった。うわべはみんな言うことを聞くが裏ではこんなもんなのだろう。
そこに西方軍500名が来た。
「アーマイル司令官、問題が起きたと伺い登壇しました」
アーマイルが兵士達に言う。
「アチチ宰相を王宮に連行しろ。アチチ宰相は軍の後ろだてであるが我が師匠を侮辱した。
現在、アチチ宰相宅、及び領地を警備する兵士全てを撤退させる。
これは西方軍司令官としての命令だ!!!
誰であれこの決定に意義を唱える者は軍の決闘を持ってしか変更を許さない。
わかったかぁー!!」
「オオー」
500の兵士が声を上げ、剣を天に突き刺す。
アチチ宰相の護衛と文官が振るえてしまい固まってしまう。
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