第190話 貴族学校 Fクラス
夏、気温も上がり少し動くとすぐに汗ばむ日が続くなか、ロシナンテ国王より緊急の呼び出しを受ける。
この日メルシーとマリアンノはピーチ王妃に呼ばれ子供達を遊ばせる約束をしていた。
という訳で家族で一台の馬車にのり王宮に向かう。
馬車の揺れのためか、途中で2人の子供は完全に熟睡してしまった。王宮の入り口で家族と別れ国王の執務室に向かう。
「お、来たか。アールとの話をすぐに終わらせてメルシーと孫に会わんとな」
「孫の話になると完全に国王の威厳が無くなるな」
思わず呟いてしまった。
ジロ! ロシナンテ国王に睨まれる。
「ふん、まあ良い。わしは心の広い男だ。今回は許してやろう。
ガウディとライダーは元気にしておるか?
あの2人は王位継承の権利を与えておる。無事に育てるのだぞ」
「はい」 静かに答える。
「実はな、貴族学校を担当しているアチチ宰相より、要望があってな。
貴族学校高等科のクラスをお前に指導してもらいたいと話しがあった。
毎年、貴族学校高等科では行軍演習を行う。今年は公爵、侯爵の子息令嬢達も参加する。
その行軍を行う、準男爵や騎士伯の子息令嬢を任せたいと言ってきた」
何で俺だ。
「理由を聞いても?」
ロシナンテ国王がうなずく。
「アーマイルだ。あいつは今、領地の改革に取り組みかなりの成果をあげておる。
また、騎士団や西方軍の一部だが、自領管轄の軍がめきめきと頭角を表している。
お前が手掛けた者達は少なからず皆、成長し、各々成果をだす。
流石にアチチ宰相もお前を認めないといけないようになった。
そこで今回の話がでた。そう言う事だ。
ヒューズを覚えているか? あのわがまま娘が人に暴言をはかず、きちんと指導官としての職務を行うようになった。お前はどんな魔法を使った。
ヒューズのことは、正直にわしも驚いている。お前達とアルッシュに向かってから、人が変わったぞ」
「成る程、では何故ガリアは呼ばれないのでしょう?」
「ガリアは平民だ。
アール。貴様は公爵家の当主だ。
お前なら回りは何もしないだろう。
一般の貴族連中は準男爵や騎士伯を貴族だと思ってもいない。そんなところに平民のガリアを入れる訳にはいかない」
「了解しました。それで俺達が受け持つのは?」
「Fクラス 騎士伯、準男爵のクラス。男女合わせたクラスだ」
「謹んでお受け致します」
「うむ、明日にでも貴族学校を訪れて指導してやってくれ。迎えをやる。
それと行軍中は軍が警護をする」
翌日、ロシナンテ国王の命令通りに屋敷に迎えが来た。
「おはようございます。師匠。お久しぶりです」
そこにいたのは西の辺境伯 アーマイルだ。
「アーマイル? 何故?」
どういう状況か理解出来ず、アーマイルに説明を求めた。
「軍で警備を担当するって聞いてませんか?
毎回、持ち回りで担当するです。今回は私が担当です」
「そ、そうか。それでアーマイルがわざわざ迎えに来てくれたのか?」
「はい、皆様のお顔を見たかったですし」
あまりに元気な返事に少し戸惑ってしまう。取りあえずアーマイルを中に入れ客間に通す。
メイドに抱かれたガウディとライダーが来た。
「あー、こんな大きくなられて。もーお姉さん感激」
アーマイルが子供達を見ると嬉しそうに声をかける。普段お世話をするメイドに抱かれているためか2人は笑顔を見せる等緊張する事も無く過ごしていた。
子供達と別れてアーマイルの馬車に乗る。
アーマイルの案内で初めて貴族学校に来た。貴族学校はあまりに立派な建物で驚いてしまう程だ。
冒険者学校って結構しょぼく無いか?
そう思わされた。
「さあ、師匠。付きました、先ずは学校長に挨拶に行きましょう」
そう言って連れていかれたのがルストールの部屋だ。
「おはようございます。ルストール学校長。
今回、警備担当を拝命しました、アーマイル サンジ ヘットです。よろしくお願いします」
「おはよう アーマイル。良く来てくれたね。
それとアール。今回の依頼、良く受けてくれた。感謝する」
「ルストール、今回の内容について、何も話を聞いていない。
教えてもらえると助かる」
「そうか、したかないの。相変わらずロシナンテは面倒臭がりだ。
おい、説明してあげろ」
若い教官らしき男が前に出る
「ハイ、この行軍訓練は各クラスの成績優秀者を集めて行ます。アール様に担当してもらうクラスはFクラス。 騎士伯、準男爵家等が入るクラスです。
行軍によって距離が決められFクラスは最長距離を行軍します。その間、原則護衛等は付きません。軍による行軍の護衛はA~Cクラスまで、D~Eクラスはそのおこぼれで保護してもらいながら移動します。
後は実家の騎士達が個別に護衛に入ります。
Fクラスについてはそう言った護衛は無く、またかなりの距離を歩く事から嫌がらせやモンスターとの遭遇、盗賊達に狙われる等被害が毎年おきております」
ルストールが立ち上がる。
「アールには、護衛ではなく彼らが戦える強さを身に付けるように導いてもらいたい。
家柄で全てが決まると学生は考えしまいがちだ。
だか、学校を卒業するとそこは実実力主義。現在多くの平民出が軍やロイヤルナイトの幹部を勤めている。彼らに希望を与えて欲しい。
これは私の願いでだ」
ルストールの願いは良くわかった。だが現実はそう甘くないそれはルストールも知ってるはずだ。
「距離はどのくらいになる?」
「はい、A~Cクラスまでが15km、D~Eクラス25km、Fクラスが40kmとなっています。
持ち込むのは水、食料。武器、等です」
「結構な差だな。40kmも歩くか、通常の行軍と変わらないな。それを体の出来ていない者にやらせるのか?」
ルストールがしなだれる。
「そこは私の力が足りない為だ。行軍を行うより、実戦訓練をさせるように強く要望しているが、一向に改善される予定も無い。皆、将来の国の幹部に今からゴマをするのに大忙しだ」
「教員たちは同行するのか?」
若い教官が教えてくれる。
「Fクラスは同行しません。教員ですら歩ける距離出はないです」
呆れて来た。貴族学校って何なんだ。
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