第189話 親離れと子離れ

「やっぱり、レモンドだった。

私はこんな子に育てた覚えは有りません」


メフィスが俺を見てそう言ってプンプンしている。


「当然だ、俺はあんたに育てられたことはない。今さらながらにくだらない文句を言うな。


悪いが俺はあんたを親だと思ってはいない。記憶も無しな。今さら来て親です、なんて押し売りはいらない」


「そ、そうだよね」メフィスが落ち込む。


「唯一感謝していることはカトレーゼとモルジップがいた事だ。

毎日、ぶん殴られて、悔しければ強くなれ。そう言われて育だった。それに戦いの基礎を子供の頃から教わったのが良かったよ。

俺は早熟じゃなかった。そのお陰で今まで生き延びてきた。


そこは感謝している」


メフィスがさらに落ち込む。

「預ける人間違った。やっぱりアイリー達に任せれば良かった。私の人生の汚点だわ。

あの脳筋に任せたのが悪かった」


「ところでだレモンド。お前は私をどうするつもりでいるんだ?」

俺とメフィスの前にデリデットが立つ。


「どうもこうも無い。お前は俺がここにくるまでお留守番だ。

女神 アテロスからもここを出て良いって言われてないだろう。何年後か知らないがまたくるまでお留守番だ」


「嫌だ、嫌だ-。出る、ここを出たい」

デリデットが泣き出した。


「許可は俺はじゃなくアテロスに聞いてくれ。

昔、勝手にドレスト ハートに取り憑いて隠れて出ようとしてばれたんだろう。

急がば回れだ。信頼第一だ。デリデット!」


そう言われ考え込んでいる間に部屋を出て、ドレスト ハートと書かれた剣を地面に差し込み封印する。


メフィスが俺を見て嘆く。

「レモンド、あんたやけに女なれしてない。あんた何人女がいるの?」


何か面倒なのが増えた。はよ出てってお願いだから。

「いい加減にしてくれ。余り訳のわからん事を言い続けていると、とっととこの国から追い出すぞ」


メフィスが文句を言われプンプンとしながら黙ってしまう。

「アイリー、捕えた者は全て離せ。


それと一度ベルクド ダンジョンギルドによってから戻る」


「ハッ」

てきぱきと指示を出し、馬車に乗り込むアイリーを連れてギルドにくる。


アイリーとメフィスを連れて防音効果をつけた会議室に入る。

その後受け付けに行き女の子に声をかける。

「お茶を会議室に、それとメルシーとマリアンノに声をかけて欲しい。ガウディとライダーもいるなら一緒に連れてきて問題無い」


「かしこまりました」


部屋で待っているとカミュが来た。

「お茶をお持ちしました。お子様用のおやつは準備しましょうか?」


「頼む」


その後、メルシーとマリアンノが子供達を抱いて来た。


「は~い、お父様ですよ」メルシーの声にガウディが俺に抱っこの合図をしてくる。


「抱っこですねぇ」俺もニコニコとしながらガウディを抱っこすると、ライダーと抱っこをせがんできた。左手にガウディを抱いて右手にライダーを抱っこする。

ガウディとライダーをアイリーとメフィスがマジマジと見ている。


「メルシー、マリアンノ。紹介する。

こちらはメフィス ハート。俺の親だ。確認が取れた」


メルシーとマリアンノがスッと立ち上がり挨拶をする。

「初めてお目にかかります。メルシー ラルド フォン モルモットと申します。

現 モルモット共和国、筆頭公爵をしております、レモンド様と結婚させて頂いております」


「初めてまして、マリアンノ ルッツ フォン モルモットと申します。メルシー様と同様にレモンド様と結婚させて頂いております」


「初めてお目にかかります。メフィス ハートと申します。私はレモンドを2年半しか育てる事が出来ませんでした。

今さら親として認めて欲しいとは思いません。


ですがたまに、レモンドと孫の顔を見に来る許可がいただけれはと思います」


「メフィス、抱いて見るか? 女の子がガウディ。メルシーとの間の子供だ。男の子はライダー、マリアンノとの子供だ」


そう言ってガウディを抱っこさせる。少しメフィスに抱かれたがすぐにぐずりメルシーが抱き抱える。

その後ライダーを抱っこさせる。


ライダーは人見知りしないのかニコニコしながら抱っこされている。その後、しばらくメフィスが抱っこしていたがマリアンノに戻す。


メフィスが頭を下げる。

「ありがとうございます。何か夢がかないました。レモンドの子供を抱っこしたい。レモンドの奥さんと普段の生活がしてみたい。


それが私の夢でした。その1つがかないました、本当にありがとうございます。


私はこれでおいとまします。余り長くここにいすわる事も出来ませんので。

メルシーにマリアンノね。レモンド凄くわがままに育ってしまったみたいでごめんね」


そう言ってギルドを後にした。


ドアをノックしてから外にいるカミュに声をかける。

「カミュ、気を使わせて悪かった。これで落ち着く」


「了解」

カミュがドア越しに聞こえる程度の声で話す。


「メルシー、マリアンノ悪かったね。心配かけて」


「我々よりもレモンド様は大丈夫なのですか?

あんなに恐ろしい方と四六時中一緒にいらして?

流石に緊張がとけませんでした」

マリアンノが聞いてきた。


「心配無い、護衛達もメフィスも一度捕まえてきっちり脅しておいた。それから行動している」


「あの、メフィス ハート様は今は何をされているのでしょう?」

メルシーに聞かれる。


「現在 獣帝のリーダーでありながら、ベルート共和国の王妃の護衛担当者をしている。


獣帝の本部はベルート共和国、獣人狼族 サトミル エール王妃の私邸の地下にある。


らしい。それ以上のことは知らない」


「そうすると外の気配はベルート共和国の兵士達でしょうか?」


「そこまではわからない。でもこうも簡単に国境を越えられるとちょっと厄介だね」


その日のうちに王宮に来てロシナンテ国王に会う。

「アール、早いな」


「お陰さまで、面倒事を頂いて、暇が有りません」


「で、帰ったか?」


「ハイ。間違いなく本物でした」


「そうか」


「所で、国境を勝手に越えられた。なんてオチは無いよな?」


「レモンド、不謹慎だぞ。まるで、我々が警備をあからさまに疎かにしていたと、お前は言うつもりか?」


「やっぱり、わざと入れたな。理由はなんだ?」


「ガス抜きだ。ベルート共和国の兵士達は訓練はしているが実戦がない。だからウサギ狩りをして力をつけたいがっている、それだけだ」


「どうりでな。

まあ、良いや。悪いが俺はこれで帰る、近いうち、子供達とまた来る」

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