第10話 魔力欠乏症
ゴブリンジェネラルに対する恐怖に打ち勝った。
フフ、やっぱり俺は最強の冒険者だ。ダンジョンの通路で思わずボディービルダーのような決めポーズを取る。
「何か、変な奴がいるぞ」「おい、辞めとけ目を合わせるなよ」「変態かも、最近この辺で出るらしいよ」等々…
スミマシェ~ン 恥ずかしさの余り脱兎の如く逃げる。常宿の鷹の宿まで走って来た。宿の入口で呼吸を整える。
宿の食堂に入る。
「リアル、エールちょうだい」カウンターで作業していたリアルに声をかける。
「レモンド? あんな何様のつもり? 昼からお酒って。何か、お父さんみたいで嫌なんだけど(怒)」
「リアル、聞いてくれ。やっとゴブリンジェネラルを1人で倒せた。頑張ったよ」
リアルがキョトンとした顔でこっちを見ている。
「ゴブリン? オークじゃなくて?」
「おお、ゴブリンジェネラルだ!」俺は自信満々に言う。
コン。空のグラスが置かれた。
「リアル、エール入って無いよ?」
「レモンド、あんたにゃ空のグラスがお似合いだよ。せめてオークロード倒せるようになったら言って来なさい」リアル…反応冷たい。
「ゥゥゥ、分かったよ。もういい」
うつ向いて食堂を出る。リアルの声が聞こえたが無視してしまった。
「ちょっと、折角エールついだのに」「いらないなら私が飲むわよ」そう言ってエールを一気に飲みほすリアル。
俺は悔しくて泣きながらギルドまで来た。だってゴブリンジェネラルだよ。Dランクのボッチが倒せるモンスターじゃないよ!
ギルドもDランク3人は必要って、言ってるモンスターだよ。
それをボッチで倒したのに…クソ!
図書館に入りモンスター図鑑をみながら涙をこらえる。
「ちょっとくらい、いたわってくれても良くないか? 俺にしてかなりの成長だぞ…」
「自分は強いからって、馬鹿にしすぎなんだよ…」
「ちょっともてるからっていい気になって…」
1人ブツブツと文句を言いつつ。オークを調べる。オークはゴブリンジェネラルの2倍強い。
オークが底辺。ついでオークアーチャー、オークメイジ、オークソード、オークジェネラル、オークロード、オークエンペラーの順に強くなる。
オークジェネラル、オークロードはBランクモンスター。
オークエンペラーにいたってはAランクモンスターと表記がある。
さらにイラつきを覚える。リアルの奴、俺にオークロードを倒せって、Bランク相当だよ。
ぼっちの俺がオークロードを倒すのにはAランク相当の実力が必要だよ・・・・・。
いや、幼馴染みだけど… 俺、リアルに惚れてるけど…。
そっか、リアルは俺の事、何とも想ってなかったんだ。
そらそうだよな。自分よりレベルも引くくて、実力の劣る奴何て……やっぱ、嫌だよな。
養ってやるとか、部屋においでとか、からかわれていたんだよなぁ。
今日は厄日だ。もう部屋に戻って寝よう。
そう、俺の必殺技さ!!! 寝れば嫌な事は忘れる作戦だ。
だが、その前に腹が減っては戦ができぬ。先ず飯を食おう。
ギルドの食堂でエールを頼み、つまみをもらい飲み始める。何か、どれだけ飲んでも酔わない。心がチクチクと痛む。飲むのが嫌になり、こっそりと部屋に戻りベットに入る。
翌朝目が覚めたが頭が痛い。二日酔いだ。でも俺そんな飲んだっけ。キルドでエールを五杯程、飲んだだけなのに。
動くのが億劫になりそのまま二度寝する。
ふと、体に重さを感じて目をします。外は明るい。まわりを見渡すとテイブルに食事が置いてあった。
起きようとした時、足元に重みを感じて見る。リアルがいる、何してんだ? 椅子に座り体をベットに乗せ、俺の足元に頭をよせながら寝ていた。
「リアル、どうした?」
声をかけたが起きる様子がない。まあ、苦じゃ無いし、リアルが起きるまでこのままにしておくか。そして、そのまままた寝てしまう。
「リアルどう?」
「うん、大丈夫だと思う。昨日みたいに汗かいていないから」
「なら、良かった。まさかと思うけど魔力欠乏症じゃ無いよね」
「わかんない。でも、1人でゴブリンジェネラル倒したって言ってたから、その可能性も有ると思う」
「本当に馬鹿な奴だよね、こいつ1人でゴブリンジェネラル倒すって、1人でボス部屋に入ったって言う事でしょう。Dランクがする事じゃ無いのに。
リアル。あんた苦労するよ、こんな無鉄砲な男を好きになると」
「お母さんこそ、あんなゴリラ好きなくせに。私の事ばかり言わないで」
「ちょっと、ゴリラって言ったな! あんなんでも格好良かったんだぞ、昔は」
真横でエスカレートする会話に気付き目が覚めた。
目が覚めるとリアルと目が合う。
「あれ、おはよリアル? 何で部屋にいるの?」
リアルが抱きついて来て泣いてしまった。
呆けているとモルジップさんに声をかけられた。
「レモンド、目を覚ましたか。お前丸々3日も寝てたぞ。テイブルに有る飯を食ったら食堂においで」
「え、丸々3日?」
「そうだ、恐らく魔力欠乏症だと思うが、1度レモンドのステイタスを調べる必要がある」
「リアル、レモンドに飯を食わせたら、貴女も一緒においで」リアルが泣きながら、ウンウンとうなずく。
「それとレモンド、お前も隅に置けないね。
私の娘とは言え、こんなにレモンドの事であたふたして、ずっとお前のそばから離れようしないとなんてな。
レモンド、リアル泣かしたら、死んでも殺しに行くからな。覚えておけよ」
「ひゃい」モルジップさんの脅しにビビリながら返事をした。
モルジップさんが部屋を出ていってからリアルに改めて声をかける。
「リアル。有り難う」「俺、本当に丸々3日も寝ていたのか?」
「レモンド良かった。もう起きないかと思って心配したぞ」泣きながら抱きしめられ、怒られた。
初めてかもしれない、リアルが俺の事をどう想っているか、ようやくわかった。本当に、本当に、俺って、馬鹿だと思った。
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