第8話 ゴブリン、安らかに眠れ!!
「君がレモンド君?」
ヒッ! 突然かけられた声に驚く。
「怖がらなくていいよ。私は受付のマドリード。ギルマスの妻です。よろしくね」
「ギルマス?妻?」完全に思考が止まり何を言ってるか分からなくなった。
「シルフィーユさんの双子のお兄さんがギルマスなの」そう自称ギルマスの妻から話しを聞く。
「え、エエエエエ!!」
見分けつかない。ブラックシルフィーユさんのお兄さんがギルマスでホワイトシルフィーユ?
ギルマスがホワイトシルフィーユさん。ブラックシルフィーユさんのお兄さん? ますます混乱する。
俺は完全に混乱している。先ずは自称ギルマスの妻に聞く。
「良く見分け付きますね。俺、2人が同じ過ぎて夢の中で、ブラックシルフィーユさんとホワイトシルフィーユさんが争ってるって真剣に思ってました」
「プッ なにそれ(笑)」
「でもブラックシルフィーユね。貴方、ネイミングの才能あるわね。シルフィーユさんのあだ名決定ね」
気持ちを落ち着けてマドリードさんに聞く。
「すみません。魔法教室はどうなりますか?」
「大丈夫よ、モルジップさんの教室にいこう。モルジップさんも知ってるから。ちょうど身体強化魔法の講義中だと思うよ」
マドリードさんに付いてモルジップさんの教室に入る。リアルが駆け付けて来て、リアルの隣の席に座らせれる。
ひそひそと悪口がきこえる。
「あいつなんだ?」「あのガキ、何で俺のリアルちゃんの隣なんだ?」「うらやましい」「殺してやる」「ん~。リアルちゃんの椅子になりたい」「イヤ、洋服だ」「やっぱり下着だ」等々。
横目でリアルを見る。リアルも大変なんだろうな。
パンパン!
「落ち着けよお前ら。これから身体強化のやり方について説明する。聞き漏らすなよ」
「身体強化は体の身体能力を強化する魔法だ。だがそれ以外にも、部分強化や強度アップ、速度強化ができる。魔法使いだから必要ないと考えるな」
「お前らの中にもボッチでダンジョン潜っている奴もいるだろう? 他にも前衛が殺られた時、魔法しか使えない奴がどうやって仲間を守る?どうやって逃げる?立場や役割だけで考えるなよ」
「身体強化はそのまま、体内に魔力を感じ「身体強化」と唱えるだけだ。上手く行けばすぐに変化がある。わりと分かりやい魔法だ。全員やってみろ」
俺も魔力を感じながら声にだす。
「身体強化」
体全体に力を感じる。これならゴブリンジェネラルともまともに対戦出来るかも知れない。
モルジップさんが話をまとめる。
「これは、Sランクパーティーの重戦士だった、カトレーゼがもっとも得意とした魔法の1つだ。タンクと言う役割にもかかわらず戦闘においても右にでる者がいない程A~Sランクのモンスターを倒して来た。1つを極めるとそこからすそのが広がる。良く覚えておけ」
最初の講義が全て終わる。俺はリアルに引っ張られるようにギルドをでて、宿に戻る。
リアルは宿の手伝いがあるようで厨房に入って行った。入れ替わりでカトレーゼがでてくる。
「レモンド、夜飯まで少し時間がある。部屋で魔力操作の訓練でもしてろ。後、ダンジョンの戦利品のいらないやつは、何でも屋に売っておけよ」
「了解! 部屋で魔力操作の練習するよ」
部屋に戻り魔力操作を行う。魔力を感じる所から始める。お腹の中心辺りに魔力を集める。
この時に、魔力に圧をかける。圧力が強い程、強力な魔力を放てるらしい。
圧力をかけ、球体をイメージする。魔力が球体になる。圧力を緩めお腹全体に広げる。お腹全体に広がったらまたお腹の中心に集め、さっきより、より強く魔力に圧力をかける。
コンコン。ドアをノックする音が聞こえた。
ドアを開けるとリアルが立っていた。
「ご飯食べよう。何度も呼んだけど聞こえていなかったみたいだから向かえに来たよ」
「え、もうそんな時間?」
どうやら魔力操作の練習を4時間近くやっていたようだ。
次の日の朝、起きてから魔力操作の練習を少し行う。少しずつだが上手く出来ているようだ。しかし成長が遅い。
その後、ダンジョンに向かう。最初は一階の隠し部屋だ。
コボルトが5体湧いていた。誰かしくじったな。
身体強化を唱える。ブンと音が聞こえたように感じて体が軽くなる。
バトルアックスを1本取り出し右手に構える。
身体強化の能力のせいか、コボルト達が遅すぎるのだろうか?
コボルトが止まったように見える。バトルアックスを右から軽く振ると、ブオンと快音を響かせコボルトを真っ二つにした。
自分にも何が起きたか分からなかった。目の前にいた5体のコボルトがたった一撃、それも軽く振っただけの一撃で倒れた。
「ふ~。身体強化恐るべし」
これは勘違いする。間違いなく勘違いするぞ。一気に強くなったつもりでレベル以上のモンスターに挑みたくなる。俺は最強の冒険者になる、それまでは死ねない、要注意だ。
いつものように宝箱をあける。今日はゴールドの宝箱もミスチルの宝箱も赤色にしか光らなかった。
宝箱を開けると、青銅の剣と誰かのパンツが入っていた。まあいい、何でも屋に売ろう。
2階に上がりまだ入った事のない部屋に向かう。地図には2~3の文字があった。ゴブリンが2~3体、ゴブリンに身体強化が使えるか試しだ。
部屋の中に入る。ゴブリン3体がそろっていた。
身体強化と唱える。体がブンと音を立てる。右手にバトルアックスを持って構える。
耐性強化を先ずは試す。ゴブリンが持っていたこん棒を振り回し俺を殴る。
ゴン 良い音がした。痛みは有る。流石に痛みまでは無くならないようだ。
なんかむかつく、自分でわざと殴られたけど何かむかつく。ゴブリンが俺を雑魚認定してからかい始める。こん棒でつつきながら反応しない事を喜んでいる。
「お前ら、いい加減にしろよ」そう言ってバトルアックスで思いっきり殴り倒す。
ゴブリンが頭をグシャリと潰し倒れる。
残り2体。
今度は冷静に飛び込み体当たりをした。壁に挟まれ1体を倒す。
最後の1体を見るとなんと、ゴブリンが自分の持っているこん棒で自分の頭を叩き倒れた。
許してほしんだろうな。分かるぞお前の気持ち。カトレーゼと対戦してるといつも思うよ。特にリアルと喧嘩した日のカトレーゼって最悪だもん。
そんな事を思いながら最後の1体のところに来た。バトルアックスを上まで上げて一気に振り下ろす。
「ゴブリン、安らかに眠れ!!」決めポーズを取る。
ふと、恥ずかしくなり周りに誰もいない事をを確かめた。
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