第7話ブラックとホワイト
モルジップさんの魔法教室の時間が来た。思ったよりも習う人が多く驚いた。初級コースに並ぶ俺。上級コースに並ぶリアル。
リアルはそれこそ子供の頃からモルジップさんに魔法を習い、魔法だけならBランクの上位クラスと変わらない実力がある。俺と一緒に冒険者登録をして既にCランク冒険者になっている腕前だ。
「才能ある奴はいいな」何処からかそんな声が聞こえた。才能だけじゃない努力が必要なんだよ緒兄。
だからこそ俺は最強の冒険者になれるのさ!!
そう思いながら受付を終えて教室に入る。何故かシルフィーユさんが講師としていた。
講義中は凄く真面目で、俺にちょっかいを出すシルフィーユさんではなく、ほっとしながら講義を受ける。
最初は魔力を感じる所から始まる。正直にそれ自体が難しい。何故なら魔力か何か分からない。
上手くいかず悩んでいるとシルフィーユさんから声をかけられた。
「レモンド君、魔力は感じるか?」
「難しいです。何が魔力かよく分からなくて」
「わかった、協力してやる」そういうとシルフィーユさんが頭に手を乗せる。
突然、クラッと来る感覚に襲われた。何か体の中に入って来て、俺の中に有る何かを掴んで動かしている。
突然動いた何かが体の中で回りだす。その動きに酔ってしまい苦しくなる。それでもシルフィーユさんは止める様子がなく。さっきより強く動かし始めた。
体の抵抗感がなくなり少し酔いが軽くなる。
「そのまま回せ!」
シルフィーユさんの声がした。体の中で回っているのを感じつつ、自力で回して見る。
「う、動いた」思わず声が出た。初めて魔力を感じ、自分の力で動かす事が出来た。
「そいつだけずるい」何処からとなくそんな声が聞こえた。
「今、ずるいと行った奴、手を上げろ」シルフィーユさんの鋭い声が響いた。
恐る恐る手を上げた奴がいる。シルフィーユさんが近づくと頭数に手を乗せて魔力を送る。
「お前にも協力してやる。ちゃんと耐えろよ」
そいつも動き出した魔力に酔ったらしく、青ざめた顔をしている。でも言った手前、止める訳には行かないのだろう。根性でたえていた。
シルフィーユさんが手を離したと同時に意識を失い倒れてしまった。体をヒクヒクさせ、痙攣している。
「ム、こいつ根性無いな。さっきより弱くしてやったのに」
「お前はコイツの連れか?」横にいた女に声をかけた。
女がそうだと伝える。
「魔力酔いだ。起きたら水分を軽くとれ、その後、感覚を忘れないように繰り返し練習するように伝えろ。いいな」
「わかった」女が軽くうなずく。
「他にやって欲しい奴はいるか?」シルフィーユさんが回りを見るが誰もいなかった。
「この魔力操作は基本中の基本だ。これが出来ないと魔法はただ垂れ流しの状態だ。下手したらスライムすら倒せない。地味な練習こそが実力を作る。派手な事に夢中になるなよ。
お前達の仕事は生きて帰る事。それが最重要だ。わかったか」
講義を聞きに来た奴らみんなに言う。こういう時のシルフィーユさんはカッコいい。
惚れ直すぜって感じ。
休憩を挟み魔力教室が始まった。どういうわけか最初の時と比べて人の数が異常に少ない。最初、40人はいたはずなのに・・・。
何故か俺1人しかいない。シルフィーユさんいるし、もう逃げれないじゃない。みんな裏切るなよ。
「なんだレモンド君しかいないのか?他の奴は部屋を間違えたのか?
チッ 逃げやがったな」
あの、優しいシルフィーユさんが。黒く恐ろしい悪魔のようなブラックシルフィーユが顔を出す。
シルフィーユさん? チッって舌打ちしてましたよね。ハンターの顔になってますよ。僕獲物じゃないですよ俺。
僕、獲物じゃないですよ………。
え、獲物…じゃ…
「ひー、助けてぇ」
「どうしたの、レモンド君」シルフィーユさんが優しい笑顔で近付いて来る。
「とりあえず、他の人、さ、探しましょう」
そう言いながら後づ去りする。
「あんな連中不要よ!!」「そんなことより、さっきの続きしますよ」シルフィーユさんが大人の色気を纏って迫ってくる。
ドン!! 壁にぶつかる。恐怖の余り立てなくなってしまった。
「シルフィーユさん?マスターが呼んでますよ」受付の女性の声がきこえた。
お姉さんここです。声にならない声をだす。
シルフィーユさんが部屋の外から聞こえた声にしかめっ面になる
「チッ」舌打ちして出入口を睨む。
出た、完全にでた、ブラックシルフィーユ見参!!!!
「あ、いた。シルフィーユさんマスターがお呼びですよ」
「おい、シルフィーユいつまでなにやってる」
初めて見るギルドマスター。俺達みたいな下っぱ冒険者が会うはずの無い人物だ。
白く透き通る肌、銀色に輝く美しい髪、腰の辺りまである長い髪に鋭く尖った耳。そして何より神々しい。あれ、シルフィーユさん?
シルフィーユさんが2人もいる。そ…そんな………。
駄目だ、俺人生つんだ。短いな、お父さん、お母さん先立つ不幸をお許し下さい。
「痛い、ちょっと耳引っ張らないで」
1人のシルフィーユさんがもう1人のシルフィーユさんの耳を引っ張っている。それがおそらくギルマス。「お前なぁ、冒険者潰しも大概にしろよ」
そうホワイトシルフィーユが言う。
「兄ちゃん、止めてよ。私は何も悪いことしていない。あいつらが悪いだよ」
悔しそうにブラックシルフィーユが答える。
「お前、誰のおかげでギルドの職員をしている?」
ホワイト。
「兄ちゃん、それは。それは言わないでよ」
ブラック。
「なら来い」
ホワイト。
ブラックシルフィーユさんがホワイトシルフィーユさんに連れていかれる。悪夢だ俺は悪夢をみている。
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