カーテンコール

勝利だギューちゃん

第1話

「今日も、いい一日になりそうだ」


わしは、部屋の窓を開ける。

日差しが心地いい。


定年退職をしてから、もう数年になるが、どうにかやっている。


妻には先立たれ、子供たちは独立。

たまに孫に会うのが楽しみだ。


子?

どうでもいい。


「さてと、出かけるか」

日課の散歩に出かける。


「あれ?ゆうくんじゃない」

声をかけられる。

1人の老婆がそこにいる。


だれだっけ?

「わたしよ。幸子」

「さっちゃんか。変わらないな」

「わからなかってくせに」


幼馴染のさっちゃん。

小さいころは一緒に遊んでいたが、たしか海外に引っ越したはず。


「余生は、日本で暮らそうとおもって戻ってきたの。またよろしくね」

「こちらこそ」


元気そうだ。


「よう、青木じゃないか」

「・・・だれだっけ?」

「おい。お前の担任だった、斎藤だ」

「斎藤先生ですか・・・まだ生きていたんですね」

もう90近いはずだが・・・


「人生100年、まだくたばらんわ」

「お迎えは来ないんですね」

「んなもん。追い返している」


気が強いことで・・・


「おじいちゃん」

「おう」

孫が駆け寄ってくる。

まだまだ懐いてくれている。


ありがたい。


息子夫婦も、後から来る。

息子の名前は、大輔という。


もうひとり、娘がいるが今は海外だ。


「どうした?急に」

孫を抱き、息子に声をかける。


「こっちまで、来る用事があってな。

元気もじいちゃんに会いたいってな」

「そっか・・・。元気だったか?」

「ああ。親父も元気そうだな」


元気か・・・


「妹の沙織も、明日来るって」

「誰に説明している」

「知らん」


元気は嫁のところへと言った。


「大輔」

「どうした?親父」

「わし、死ぬんじゃないかな」

「何を急に」

「ここのところ、懐かしい顔と再会するんだ」

「だから」

「良く言うだろう。人間は死ぬ前に過去の事を思い出すって」

「考えすぎだよ。親父」

「だといいんじゃが・・・」


『あなた、考えすぎではありませんよ。

そろそろ、こちらへと来てください』

「そうだな、わしもそろそろ、お前に会いたいしな」

『そうですね・・・いつごろ来てくれますか?』

「後、10年」

『私たちの歳だと、あっという間ですね』

「だな」

『お待ちしていますね』


カーテンコール

出演者が最後に観客に挨拶すること。


わしのドラマの出演者は、まだまだ多い。

全員に会うのに、10年では足りないかな。

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カーテンコール 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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